医療費の請求に定められているルールと調査機関について
こんにちは。ホワイトボックス(株)コンサルティング部の阿部です。
医療改革関連法案が成立し、後期高齢者のうち一定以上の所得がある人が医療機関に掛かった際に支払う一部負担金が今までの1割から2割にあがることが決定したことを、先週末の新聞各紙が伝えました。
▽医療費の請求と支払いには定められたルールがある
私たちが支払う医療費は国によって公定価格が決められています。その項目数は1,700以上に及び、一つひとつの診療行為に点数が割り振られています。
私たちは実際に掛かった医療費の1割~3割を窓口で支払い、医療機関は残りの9割~1割を国へ請求しています。この請求には定められたルールがあり、ルールから逸脱した場合は国の審査機関からチェックが入り請求が認められなかったり、定期的に国の審査機関から指導や調査が行われています。
審査機関による指導や調査はそれぞれ段階があるのが通常です。一般的には、指導あるいは適時調査を受け、この段階でルールからの逸脱が大きい場合には、行政措置を前提とした「監査」へと移行しますが、監査へ移行するケースは比較的まれで、多くは指導や調査の段階で保険請求のルールに照らして不適当と思われるケースについては、返還金を収めて終了という運びになります。
※私が編集を担当しているメルマガ「☆キラリと光る☆ 病院マネジメントのヒント」で以前、こうした指導や監査について取り上げたことがありました。以下にリンクを貼っていますので、興味のある方はご覧ください(DLFreeです)。
▽生産性向上には適切な役割分担が必要
医療事務職には、こうした保険請求に定められたルールを正しく行うことが求められています。ただ、事務職だけでこうした保険請求は完結する訳ではありません。正しい保険請求ができているかどうかは、毎月の保険請求に対する、査定や返戻を院内で集計、分析することが重要です。
実施した検査に対する病名の不備、処方した薬剤に対する病名の不備があれば、こうした請求分は認められず査定として扱われることになり、その分医療機関へ支払われる金額が削られることになります。
返戻は保険情報や請求内容に疑義がある場合に行われ、医療機関は保険者からの疑義に回答し正しい請求内容に修正することで、保険請求が認められますが、返戻照会→修正→再提出という作業を通じて、本来の請求月の報酬として支払われるタイミングから早くても2カ月遅れてしまうことになります。収入自体は入るにしても、時間差がでてしまうことは医療機関のキャッシュに影響を与えることは想像に難くありません。
医療機関の現場では、カルテ以外にも、紹介状や御礼の返書、診断書や主治医の意見書をはじめ、様々な書類が日々発生しています。ある医師曰く、文書作成がなくなるだけでも負担は全然違う。文書の作成に追われず医師が治療に専念することで、1人でも2人でも多くの患者さんを診ることが可能になることは確かだと認識しています。
医療機関の大小にかかわらず、現場に発生している業務を棚卸しして、適切な役割分担をしていくことが生産性の向上には欠かせません。こうしたことを確認しようとするとき、マニュアルや業務フロー、職務分掌といったものの整備が威力を発揮します。平時の備えが大切です。
2021.06.07 阿部 勇司
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