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読書譚5 「ルワンダ中央銀行総裁日記」

ルワンダ中央銀行総裁日記

【ルワンダ中央銀行総裁日記】

1972年6月25日初版

著者:服部正也

発行所:中央公論新社


▽読書譚5

こんにちは。ホワイトボックス(株)コンサルティング部の阿部です。

皆さんは本を選ぶとき、どのように選択していますか?

ジャケ買い? 本屋での出会い? ランキング? それとも誰かのオススメ?

かくいう私は以前は本屋での出会いパターンが多かったように思いますが、最近は週末に新聞に掲載される書評を参考にすることも増えてきました。このルワンダ中央銀行総裁日記もそんな1冊でした。

書店


▽まず仕事をする姿勢ということの参考になる

本書は、日本銀行やIMF(国際通貨基金)に勤めた経験ももつ著者が、アフリカのルワンダに中央銀行の総裁として派遣され、ルワンダの財政を立て直すべく改革に取り組んだ記録が、著者自身の手で書かれれている1冊です。

著者が赴任したのは1965年なので、私が生まれる以前の話しであるし、ルワンダは映画「ホテル・ルワンダ」でも描かれたように、1994年に大統領が暗殺されるとともに、その後およそ100日間に及び一方的な民族紛争と大虐殺が起こり、国連もジェノサイドと認定される不幸な事件があった国であるのは承知の通りです。

私が読んだのは増補版で、著者がこの事件についても巻末で意見を述べているものなのですが、自分が深く関わった国で起きた騒乱に忸怩たる思いがあるであろうなか、淡々と客観的事実と自らが経験したことに基づく分析をしているのは、ただただ感服しかありませんでした。


▽示唆に富むというのはこのことか…

「最近の傾向は人間的という美名で甘えと甘やかしが横行し、人間生活に必要な規律と義務が軽視され、そのために社会が乱れている。組織における人の和は必要な規律ができていて、それが厳格に守られることによって確保される」

「先進国による技術援助は、途上国の人の問題の一時的解決に寄与することは疑いない。(中略)まず本質的に方針のない技術は不毛である」

「戦に勝つのは兵の強さであり、戦に負けるのは将の弱さ」

等々、うーんと唸るという表現がしっくりくる言葉が随所に登場してくるので、例え経済のことに疎くても読む価値が十分にあるように思います。

コインと本


▽我が身に置き換えて

著者はいずれ自分は当地を離れることになるのだから、現地の人とは一線を画すことは忘れなかったと書いています。一線を画しながら、かつ相手の懐に飛び込んでいき結果を残す、というのはどれだけ難しいことでしょう。

どのような場面においても、自分を律するということができていないといけないように思います。仕事を共にしていても、食事を共にしていても、楽しい時間を共にしていたとしても、目的を見失わずそこに自分を埋没させない。。。

…ここまで書いていて、自分に対する虚しさを感じずにはいられません(笑)


▽正直であること、勤勉であること

勤勉に勤めるということを、昔ある人から教えられたことがあります。親がお金持ちでもなければ、なんのコネもない。学歴だってない。それでも夢だけは持っていた10代。夢に近づいたと思ったら、あっという間に敗北と挫折にくじけた20代。

いわゆる「くさる」という表現がピッタリしていた自分に、その人は諭すように繰り返し教えてくれました。いまになってそれがようやく分かるのですが、教える対象が日本人であっても外国人であっても、本質は同じなのかもしれません。

正直に仕事をするということ。勤勉に勤めるということ。

例え思いが成就しなかったとしても、そこまでの道程でこの2つが守られていれば、またどこかへ道は繋がる。

この本を読んで、そんな思いを新たにしました。

2021.10.24 阿部 勇司

お地蔵様




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