沈思黙読会⑦で読んだ本!

回を重ねること7回目。今回の沈思黙読会に皆さんが持参されたのは、こんな本でした。

斎藤真理子さんの「くたびれたときの1冊」

「門」夏目漱石(岩波書店)

実家に父の持っていた漱石全集があって、帰省したときにはいつも「三四郎」を読むんですが、先日帰ったときになぜか「門」を読みたくなってしまった。漱石の前期三部作の中でも「三四郎」や「それから」には青春の華やぎといったものが多少あるけれど、「門」は、もう完全に地味な生活にシフトしてしまった夫婦の話なんですよね。自分自身が年をとってきたせいでもあるでしょうし、ちょっと疲れていて、地味な生活にシフトしていく人たちの独白を聞きたい、という気分になって選んだ一冊です。今日は、100ページぐらいしか読めていないので、次もこれの続きを読もうかなと思っています。


Aさんの「韓国文学3冊」

「別れを告げない」ハン・ガン:著/斎藤真理子:訳(白水社)
「ハルビン」キム・フン:著/蓮池薫:訳(新潮社)
「ギリシャ語の時間」ハン・ガン:著/斎藤真理子:訳(晶文社)

今回で6回目の参加なのですが、私もそんなに読むのが早くないので、会場では読み切れず、家に帰ってから読み終わるというパターンを繰り返しています。「別れを告げない」は前回そのパターンだったんですが、その後、出版社主催のハン・ガンさんインタビューを配信で聞いて、もう一回読まなきゃなと思い、今日も持ってきました。「ギリシャ語の時間」もそのインタビューで少しだけ触れられていたので、今日はこちらも途中まで。それと前回、自分のお行儀が悪いからだと思うんですが、なんだかとても疲れてしまって。なので今日は小さい書見台を持ってきたんです。高さが変えられて、両手もフリーで読めるので、とても楽でした。買って正解でした。


Bさんの「つながりを感じる2冊」

「別れを告げない」ハン・ガン:著/斎藤真理子:訳(白水社)
「母を失うこと 大西洋奴隷航路をたどる旅」サイディヤ・ハートマン:著/榎本空:訳(晶文社)

「別れを告げない」は発売当日に買って、その日のうちに第2部の1章あたりまでバーッと読んじゃったんですけど、その後は1ページも読み進めなくなって……。それから1ヶ月くらい開いては閉じ、開いては閉じて読めないままだったので、ちょっと突破口が欲しくて今回、参加してみたんですが、最後まで読めて嬉しかったです。「母を失うこと」は榎本空さんが好きなので読み始めようと思って、まだ序章あたりまでしか読んでいないのですが、どこかこの2冊は繋がっているな、という気がしています。この場で読んでいると、途中、ちょっと集中が途切れちゃったりしても、皆さんが本を読んでいる姿が目に入ると、また自分の読書に戻りやすい気がしました。


Cさんの「読みどきを探していた2冊」

「人類の深奥に秘められた記憶」モアメド・ムブガル・サール:著/野崎歓:訳(集英社)
「布団の中から蜂起せよ」高島鈴:著(人文書院)

「人類の深奥に秘められた記憶」は、ずいぶん前に買ったものの、読み切れるかなという心配があって、いつ開こうか悩んでいたんです。それが前回、沈思黙読会に参加したときに、ここで読むのに最適じゃないか! と思って、今日は半分くらい読めました。もう一冊の「布団の中から蜂起せよ」も、ちょうど図書館で予約していたのがこのタイミングで届いたので持ってきました。まだ少ししか読めていませんが、どちらも「書くこと」についての本で、読むことと書くことは対だと思うので、ちょっと面白いです。
私は自分でも読書会を主宰しているんですが、人が集まって本を読む場には読書の気配みたいなものが漂っていて、それが伝わっていくような気がします。そして、安全にしつらえられた場所では、人は放っておかれるのが一番、心地いいんじゃないかな、と思ったりもしています。


Dさんの「イメージをフル回転させて読んだ1冊」

「最終目的地」ピーター・キャメロン:著/岩本正恵:訳(新潮社)

今日は初めての参加でしたが、意外とスマホを使えないことは気にならなくて、とても集中できました。私はアシュタンガヨガというのをやっているんですが、これはポーズの順番が全て決まっているんです。だからスタジオに行くと、入った人から順番にポーズを取っていて、そのペースもそれぞれバラバラなので、同じ場所にいる皆が違うポーズを取っている。だけど、やっぱりそこに行くと皆の集中力がすごいから、自分の練習もすごくはかどるんですね。この読書会と、雰囲気がすごく似てるなと思いました。
読書に関しては、私は100%脳内音読派で、さらに書かれている情景を頭の中でイメージしながら読むタイプです。今日はピーター・キャメロンの「最終目的地」という小説を読んだんですが、舞台がウルグアイで、ドイツ人がウルグアイの田舎に移住してきて建てた館の中でのお話。ウルグアイへは行ったことがないので、その館の様子を必死に想像しながら読みました。


Eさんの「中学の図書館から繋がった1冊」

「神と愛と戦争 あるキリスト者の戦中日記」森下二郎:記/西尾実:編(太平出版社)

最近、仕事の関係で中学校の図書館に潜入する機会があって、中学校の図書館って全然知らない古い本がいっぱい置いてあるんですよね。子どもが好きじゃなさそうな本がほこりまみれで置いてある。そこで見つけたのが、今日は持ってないんですけど、「無名兵士の詩集」―下級兵士の陣中詩」っていう本。これは絶対面白いぞと思って、早速Amazonで買ってみたら、「シリーズ・戦争の証言」という全20巻のシリーズものの一冊だったんです。今日、持ってきたこれはそのシリーズの一冊で、長野に住んでいた森下二郎さんというキリスト教信者の方の戦中日記です。時代の匂いというか、どこか湧き立つような感じがあって面白いですね。たまたま中学校の図書館で見つけた本からたどり着いたという経緯もあって、私が引き受けて読まなきゃ、みたいな気持ち。自分が選んだんではなく、流れ弾に当たったようなもので、だからこそ私がこの文字列に目を通さねば、というような気持ちで読んでいます。


Fさんの「読みたいものを読む! 3冊」

「ある協会」ヴァージニア・ウルフ:著/斎藤真理子:訳(エトセトラブックス)
「君が異端だった頃」島田雅彦:著(社)
「散歩哲学」島田雅彦:著(社)

私は若い頃は本を読むのがとても早かったし、それがひとつの自慢だったんです。ところが、子育てが忙しくてなかなか本が読めないとか、いろいろあって少し本から離れた時期がありました。その後、久しぶりに本を読んでみたら、自分が読みたくて買った本なのに、今までのスピード感で読めないし、読んでも頭に入ってこなかったんです。こんなことってあるのかなってすごく不思議だったんですね。読んでもなかなか一回では頭に入らないので反復するんですが、その反復を何回も何回も繰り返しているうちに、「本ってこういう風に読んでもいいんだな」と気づいたんです。別に早く読む必要なんかなくて、自分が理解できるまで繰り返し読んでいいし、自分があまり読みたくない本とかがあった時には、この本は今読まないでおこうとか、そういう選択もできるようになって、買った以上は読まなければならないとか、そういった気持ちがなくなってきたことが、とても気が楽になったというか、逆に本にまた本を読もうという気持ちになりました。とにかく今は自分が読みやすい本を読むということが一番だなと思って読んでいます。


今回、Bさんが持参された「母を失うこと 大西洋奴隷航路をたどる旅」サイディヤ・ハートマン:著/榎本空:訳(晶文社)は、この沈思黙読会の数日後に発表された日本翻訳文学賞の大賞を受賞しました。
次回も参加者の皆さんがどんな本を持っていらっしゃるのか、楽しみです。

ちなみに今回、会場に並べた本のテーマは「子どもたち」でした。

次回の沈思黙読会(第8回)は、6月8日(土)、詳細はこちら。基本的に月1で、第3土曜日に神保町EXPRESSIONで行われます。(斎藤さんのご都合で第三土曜日でない月もあります)学割(U30)有。オンライン配信はありません。


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