【雑感】2019年J2リーグ 第26節 対京都サンガ~学ぶことが多い敗戦~

京都サンガ 4-0 東京ヴェルディ

前半戦のリベンジマッチと期待していた一戦。今度こそは戦術的なチームとして挑んだつもりが、まるでVTRを見ているかのように再びコテンパンにやられてしまった。ヴェルディと京都の攻守の違いを切り取って、試合を振り返ってみたい。

スタメン

 中3日の連戦の最終戦となった試合。ヴェルディは前節栃木戦では出場停止だったリヨンジが復帰。最終ラインには右SBに奈良輪、左SBには中央が本職の山本理仁を起用。中盤は井上潮音、佐藤優平が復帰。前線にはレアンドロをフリーマンとして右にここまで攻撃を牽引する小池をスタートから高い位置で起用。中盤ダイアモンド形の1442システム。対する京都はCB本多が出場停止のため下畠が今季初先発。福岡を右SB起用して宮吉がIHに入る。トップにはエース一美が復帰して、負傷中の仙頭に替わって右WGにジュニーニョが入りお馴染みの1433システム。

京都攻略は疑似カウンター!?

 ボールを丁寧に繋ぐサッカーを志向する両チーム。試合は攻守交代がはっきりとする展開でスタートした。序盤、チャンスを作ったのはヴェルディだった。攻撃的な姿勢を表すように右WGに起用された小池がいきなり見せ場を作る。4分、低い位置でボールを繋ぎ、フリーマンのレアンドロがピッチ中央でパスを受けてドリブルで運び、右サイドをかけ上がる小池へ素早くスルーパス。黒木を追い抜いてそのままPA内へ進入してGKと1対1に近い状況を作るが後ろから走ってきた潮音へパス。このパスが合わず決定機を逃す。続いて8分、ここはゴールキックから始まる。ルール改正されたことでPA内でボールを受けることが可能になり、上福元から平へ横パス、それを戻して上福元が前線へ蹴りだし、優平が頭で反らす。ボールを受けた左の梶川が中へドリブルしながら、京都守備陣を完全に崩す形で右サイド小池へスルーパス。小池からあとは合わすだけの絶好のクロスに対してレアンドロが上手く決めきれずシュートは枠外へ。超決定的な場面であった。得点は奪えなかったが、ゴールキックからフィニッシュまでデザインされた見事な攻撃であった。

 強度の高い組織的なプレーを披露する京都の弱点として、敢えて挙げるならば、個人守備力になると考えられる。14141から1トップとIHが積極的にプレッシングする。IHが上がったところにはアンカーが一列上げてしっかりと穴埋めをして前進する守備を採用しており、全体的に守備ラインが高いことが多く、背後や横などに広大なスペースが出来る。よって低い位置からのビルドアップで前線のプレスを引き付けて、そこをうまく交わすことで守備ラインを突破して大きく前進させて、1人あたりの守備範囲を広くする。組織から個の戦いへ持っていく云わば『疑似カウンター』が有効な攻撃の1つになるかもしれない。

計算された立ち位置

 決定的な場面を逃したヴェルディに対して京都も対抗する。ヴェルディは14411で守り、優平が最終ラインのボールホルダーとパス供給源の庄司をマークする役割を担う。しかし、京都には司令塔の庄司以外にも最終ラインの安藤などパスの出し手が複数居る。よって、優平が2枚を見ることが出来ずに京都は余裕を持ってボールが持ってた。たまらず、潮音が1列上がりプレスをかけるようならば、皓太の周囲にスペースが自然と生まれてそこを宮吉と重廣に使われる芋づる式な仕組みがあった。試合序盤から京都が一枚上手の立ち位置が取れていた。

 前線へのパスに対してヨンジのヘッドがクリアミスに近い形でジュニーニョに渡り、すかさず一美へ展開して強引にシュートへ持ち込み、16分京都が先制。その直後のリスタート、低い位置までボールを戻すヴェルディに京都はしっかりとプレスをかけて対応。ヨンジから上福元とつなぐが、上福元がまさかのパスミスでPA内でジュニーニョにカットされそのままシュートを放たれて2失点目を喫する。

裏目に出たシステム変更

 2点目を取られたヴェルディはこのタイミング1361へシステム変更する。理仁を3バック中央に配置して、自由に縦パスを入れる狙いがあったのだと考える。しかしこのシステム変更が完全に裏目に出る。3バックに対してIH宮吉と重廣のプレスが強くなり、うまく交わすことが出来ずにこの2人だけフィニッシュまで持っていく場面やここまで戦術兵器のように優平がマークしていた庄司や最終ラインへのプレスが緩くなり、長短のパスを自由に操られて守備ラインを簡単に越されてしまう。3失点目もフリーの庄司からのロングパスに抜け出した一美に冷静に流し込まれてネットを揺らした。

 理仁を3バック右、ヨンジを中央に変更するものの京都の前線からの守備に押されてしまう。WB小池と奈良輪も吸収されて5バック気味になり、対面する福岡にも高い位置を取られて京都が6トップ、7トップとなり完全に負かしてしまう。

流れを変えることが出来ずに

 後半から負傷した平とプレーに精彩を欠くヨンジに替えて内田と澤井直人を投入してシステム再び1442へ戻す。守備時は梶川がトップ下に入り、前半の優平のような役割をこなす。しかし、パスの出し手が豊富な京都には敵わず、フリーの安藤からの縦パスに抜け出した宮吉がらくらくシュートを決めて後半開始早々に追加点を上げて4-0となる。ヴェルディは潮音が最終ラインに下りて、右SBに回った小池を高い位置へ押し上げる形で、攻撃に出る。サイドから可能性を感じるクロスを上げるものの結局、シュートが撃てず。

 後半も終始、京都が主導権を握る。前半同様の守り方をするヴェルディに対して最終ライン+庄司が楽にボールを持ててWG小屋松などサイドの選手が大外に張ることでヴェルディSHを引っ張り出し必然的に横スライドすることで空いたハーフスペースにIH宮吉が立ち、攻撃を仕掛ける。追加点は奪えなかったものの内容、スコア完勝の4-0で勝利を挙げた。ヴェルディ永井監督は初黒星となった。

まとめ

 立ち上がりのチャンスをモノに出来ていたら、個人の技術的なミスによる失点と勿体無いなぁと思ってしまう面と試合を通して冷静に見ると京都が勝つべきして勝ったと納得する面があった。立ち上がり、2度の決定機はしっかりと京都守備を崩してフィニッシュまで設計されていたと考える。しかしながら、そのあとは京都の前線からの守備に押されて上手く形が作れず、ボールを持つ時間が次第に短くなっていき押し込めなかった。京都は攻守において組織的な動きが出来ていることが多く、完成度の高さが窺い知れた。シーズン半分を過ぎても上位争いしている理由がよく分かる強さであった。類似するシステムであり、攻撃のオプションの豊富さは今後の参考になるくらい引き出しが多く、大敗から学ぶことも多い一戦になった。