【雑感】2021年J2リーグ 第18節 対ジェフ千葉~全員攻撃全員守備で掴んだ勝ち点3~

東京ヴェルディ 1-0 ジェフ千葉

 千葉にとっての記念試合で多くの観衆が見守る中、静寂を生んだのは古巣対戦となった目下得点ランクトップを走る小池だった。人数をかけた千葉の攻撃に落ち着いた守備対応を見せて危なげなく逃げ切った試合を振り返ってみたい。

スタメン

 前節・岡山に1-0で勝利して2連勝中のヴェルディは4名入れ替えて臨む。右SBにはレフティの福村が起用される。中盤には古巣対戦の井出が復帰。前線にジャイルトンパライバと端戸が入り14123でスタート。
 一方の千葉は公式戦7戦負けなしと調子が良い。DH小島が出場停止で小林が入りそれ以外の10名は前節のまま。13421システムでスタート。

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古巣キラーぶりを発揮

 勝ち点24で並ぶ両者の対戦、先に主導権を握ったのはヴェルディだった。自分たちのペースにすべく短いボールを繋ぎ、ボールタッチを増やすことでリズムを作り出していく。対する千葉は両WBが最終ラインに下がり5バック化して1541で守る。ヴェルディは左SB山口が高い位置を取り3バックへ可変。これに千葉はサウダーニャ、見木、船山がプレスをかけていくが強度が高く無いためプレスをかけた裏で佐藤優平、井出がボールを受けようとする。加藤はサウダーニャの裏に構える。

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 前節の岡山戦に比べると、早い時間から多くの人数が敵陣に侵入していくと、左ハーフスペースで前を向き、右ハーフスペースへ斜めのボールを入れる場面が何度か見られた。7分、流動的にポジションを移した優平がこの位置でボールを貰い、最終ラインの裏へ抜けようとする小池を狙う。その後の左ワイドのパライバが大外ではなくて、この位置でパスを受けてカットインしながらシュートとパスの選択肢を持ったまま仕掛けていった。

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 19分、左サイドで井出と山口のパス交換のこぼれ球からパライバがボールを受けるカットインしながら切れ込むと、ファーサイドから斜めの動きで小田の背後を取った小池へ正確なボールが渡ると身体を上手く投げ出しながらヘディングシュートを決めてヴェルディが先制する。
 ここのところ得点が見事に決まっているファーを狙うクロスがこの日も上手く機能して古巣キラーの異名をとる小池がリーグトップの11点目を挙げた。

機能した前線からの守備 

 自分たちの時間帯の中で先制点を挙げたヴェルディがその後もテンポよくボールを回して攻撃のチャンスを伺う展開が続く。ボールを奪われ、千葉がロングボールで最前線のサウダーニャへ放り込んできても両CB若狭とンドカが上手く連携しながら空中戦に競り勝ち跳ね返すことが目立った。得点源のサウダーニャはサイズありポストプレイヤーかと思いきやスペースへの裏抜けなど地上戦を好む選手のようだ。

 ボール保持した千葉は時折、DH小林や田口が下りてきて変化をつけるが、基本的には1343でスタート。ヴェルディは井出が1列上がり端戸と2トップになり1442で守る。DHへのパスコースを切りながら、「外へ外へ」誘導するようにして最終ラインへ猛烈な勢いでプレッシャーをかけていくことでブロックの内側へボールを入れさせない守り方をする。

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 ヴェルディがコンパクトな守備ブロックで中央を固めることで必然的にサイドが手薄になり、千葉はその通りにサイドへ展開して攻撃をしていく。左右WBが絡みゴール前までボールを運び船山などがPA内でシュートを放つも枠を捉えられず得点を許さない。
 千葉に攻め込まれる時間帯が出てきたヴェルディであったがボールを持つと小池、パライバ、山口が安田、小田とのマッチアップや裏を取る動きからWBを徹底して狙いサイド攻撃をみせていくもこちらも追加点を奪えず1-0でヴェルディリードで折り返す。

流れが変わったスローイン

 お互いにメンバー交代なしで後半を迎える。GKも使ったビルドアップから中盤へボールが渡り激しいプレスで潰し、マイボールにする流れが互いにありなかなか落ち着かない立ち上がり。次第にリズムを掴んだのは1点ビハインドの千葉だった。前半に比べて、プレスをかけるときに3枚+WBも加わり厚みのある守備をすることでヴェルディの技術的なミスを誘発していきボール回収して攻撃に転じる。

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二次攻撃でもCB岡野と鈴木も積極的にこぼれ球回収してプレーを繋げることでそのままの流れでシュートまで持ち運んでいく。サウダーニャ、見木にPA内でシュートを放たれるも枠を捉えることは出来ない。事なきを得たもののヴェルディは前節岡山戦に続き、またも10分間近く攻撃を受け続ける展開を招き、課題になっている。

57分、佐藤凌我が交代のためタッチラインで準備。千葉は良い位置で獲得したスローインから素早いリスタートをしようとしたが主審が交代を認めたため、ここで試合が中断した。ここが分岐点になったと言えるくらい千葉の攻撃の勢いが収まってしまった。

 相手の攻撃を受ける状況は変わらないヴェルディであるがセカンドボールを拾い、繋ぐことが出来始めた。小池、パライバが持ち前のスピードを活かした仕掛けをすることで千葉守備陣を背走させるとゴール付近まで持ち込むことが出てきて陣地挽回に成功した。

 この日、右SBに起用されたレフティの福村。前半は最終ライン形成している時間が長かったが後半の中盤を過ぎてようやく存在感を出してきた。タッチラインに背を向けたようにして立ち、繋がってきたパスに対して持ち味の左足のキックでインスイングのボールをハーフスペースに入れる役割を果たして攻撃を組み立てていた。(古くは藤本寛也の右WB化のイメージ)
 ここまで起用されていた深澤大輝をコンディション面での理由と永井監督はコメントしており苦肉の策であったのかもしれないが、最低限の役目はこなしていた。

 試合の方は千葉が人数をかけて攻撃をして、ロングスロー、セットプレー、ロングボールでダイナミックな展開でゴールへ迫る。ヴェルディはボールを奪うとカウンターからチャンスで追加点の決定機を作るも決めきれないという展開が続く。ヴェルディ守備陣は最後まで集中したプレーをみせて完封シャットアウトで今季初の3連勝を飾った。

まとめ

 アウェイ3連戦の2戦目も勝利してこれで3連勝。4名替えて臨んだ試合であったが前節までの良い流れを失わず結果を残すことが出来た。この試合ではビルドアップが比較的スムーズにできて自分たちの時間帯で先制点を奪えたことで試合運びも楽になった。加藤をリベロに起用したことで中盤の守備力が増し、攻守のバランスも整い、慌てる場面も減り安定感が出てきた。攻勢に出る千葉の攻撃を受けるも粘り強い守備で決定機を多く作らせず、交代出場した佐藤凌我、山下、梶川は縦への推進力を活かしてカウンターから好機を作り、決して守りに重きを置いた戦いぶりではなかった。
 誰か特筆した活躍というよりも組織として全員が頑張り、身体を張ったまさに「全員攻撃全員守備」のサッカーで掴み取った勝ち点3だった。2試合連続の完封勝利を称えたい。