【雑感】2024年J1リーグ 第16節 対ヴィッセル神戸~勝利以上の価値~

東京ヴェルディ 1-0 ヴィッセル神戸


スタメン

 前節町田に0-5で大敗を喫したヴェルディ。ルヴァン杯で退場処分を受けた林が出場停止。稲見と松橋優安がスタメン復帰で前節から2枚入れ替える。
 一方の神戸は前節・鹿島に0-1敗戦。佐々木に代わり広瀬が起用され1枚入れ替えて臨む。古巣対戦となる井出がベンチ入りする。

前半

 試合前のアップで4名が横一列に並んでライン上げ下げしながらヘディング練習しており「こんな練習してたっけ?」と思いながら一番左端に居た松橋優安を見て左SB起用するのかと気づいた。キックオフして右サイド中心に攻め込むヴェルディであるが山川とトゥーレルのブロックを崩せずシュートまでは持って行くことができない。

 一方の神戸は左で起点を作ってから右にスペースを作り武藤や酒井のスピード活かした速い攻撃を仕掛けて行く。神戸の右からのクロスに対して右SH翁長は広瀬をマークして最終ラインまで戻り5バックを形成する。翁長がWB⇔SHの振舞いをして、なかなかわかりにくかったが試合立ち上がりから5バックをしていたヴェルディ。前線は染野と木村の2枚でプレスかけていたことでボール非保持時は1532となる。中盤3枚にしたことがサイド攻撃仕掛ける神戸には嚙み合わせが悪く、横幅3枚でスペース与えてしまうと酒井、山口、武藤に自由を与えすぎて何度も攻撃を許し松橋優安と綱島が苦しい守備対応をさせられる。クロスの質に助けられて決定機には至らないもクリアからCKやファウルで止めてFKとセットプレーも何度も許し、いつ失点してもおかしくない前半となった。

 前節・町田戦の反省があったのかマテウスは低い位置から繋がずに大きなボールを入れて前線の2トップに託す。神戸は攻撃時に2CBになるためSB裏を狙っていくも帰陣も速くコースに立つとバックパスを強いられるヴェルディは満足な攻撃はできなかった。30分すぎ、武藤の悪質な肘打ちを喰らった優安が流血し脳震盪を起こして交代を余儀なくされる。ここで中盤の齋藤を投入して、稲見を左SB(WB)へ下げる。その後、左サイドをやられてばかりだからかクロスを跳ね返すことも考えてか右の宮原と左の綱島悠斗を入れ替えて中盤3枚と薄いため染野を右SHへ落として1541とする。

 配置変えて蓋をすることで神戸の攻撃を徐々に抑えこむヴェルディ。前がかりで攻める神戸に対してゲームチェンジャー齋藤が間、間でボールを貰いカウンターの一役を担い、40分過ぎから盛り返すも0-0スコアレスで折り返す。

後半

 ハーフタイム明けお互いにメンバー交代は無し。ヴェルディは完全に1541の立ち位置を取る。前線が木村1枚になることで山川とトゥーレルに数的優位を作られてボールを持たれてしまうも5バックがシンプルに上下動のプレーに専念出来て跳ね返し、2DHとなる齋藤と森田晃樹がセカンドボール回収と役割を決定したことで守備がはまり始めてリズムが生まれる。

 セカンドボール回収する齋藤と晃樹は巧みな身のこなしでボールを収めてキープするとマイボールの時間を作りヴェルディもボール保持が増えて行く。木村を頂点にシャドー見木と染野で3名が近い距離感でボールを繋ぐ。SH起用が主の見木であるが千葉時代に二桁得点挙げた得点感覚、水曜日のルヴァン杯の2得点を見てもゴールに近い位置でプレーさせた方が脅威になることは明確で果敢にシュートを放ち前半の劣勢から後半は五分五分に持ち込む。

 前半同様に右サイド中心に攻め込む神戸はサイドに流れた大迫のクロスから広瀬が押し込みゴールネットを揺らすもハンドの判定でノーゴール。一瞬ヒヤリとしたが事なきを得た。

 システム変更したヴェルディに対して神戸はマークが曖昧になり時間と自由を与え始めた。すると65分、左サイドでボールを持った染野が右でフリーの翁長へサイドチェンジ。翁長は持ち替えてPA内に走り込む木村へ左足で低いクロスを入れる。戻りながらの守備となった山口がクリアしきれずオウンゴールになりヴェルディが先制する。町田戦の宮原のオウンゴールを見ているかのようだった。

 オウンゴールを誘発した翁長は前半から地肩の強さを活かしたスローイン、最終ラインまで戻っての献身的な守備と要所で存在感を魅せて見事に期待に応えた。

 昨季王者相手に先制したヴェルディ。屈強な千田と悠斗を中心に跳ね返すとこぼれ球を回収する晃樹がここから存在感を示す。腕の使い方と体重移動で相手の寄せを巧み交わしては前進する姿は上手いの一言であった。

 前線で身体を張る木村と染野、連動するように見木、晃樹にWB稲見の最後まで衰えない運動量で神戸を制圧すると山田剛綺、深澤大輝、山見と時間も使いながらフレッシュでスピード溢れる選手たちを投入して危なげなく逃げ切り敵地で勝利を飾った。

まとめ

 前半から複数失点する試合が相次ぎ守備のテコ入れ急務だったチームが選択したのはシステム変更だった。あまりにも衝撃的な前節の大敗から悪い流れをずるずると引きずらないように是が非でも結果が欲しかった状況で一発回答をやってのけた監督の手腕と選手たちの頑張りには脱帽であった。
 優安の負傷交代もあったからか配置をさらに変えたことにもなったが前半の何度も危なかった場面で失点しなかったことでだんだんと慣れてきたようにも見えた。現実的な戦い方ではあるがこれまでと同じようなメンバーで試合中にシステム変更ができるのSB⇔CBの宮原などメンバーの器用さは強みである。これからも使い分けが出て来ることだろう。
 選手層の底上げ、パターンBのシステムの成功と勝点3以上の重みある一戦となった。