【雑感】2020年J2リーグ 第37節 対FC琉球~高い授業料を払ってしまった~

東京ヴェルディ 0-4 FC琉球

 連戦を考慮しての休養と思われるスタメン変更で臨んだことが完全に裏目に出てしまった。出場した選手たちに同じ役割を求めるかと言えばそうじゃないように見えて、スコア以上の惨敗になった試合を振り返ってみたい。

スタメン

 前節福岡に引き分けて連勝が3で止まったヴェルディ。この日は近藤、奈良輪、森田晃樹、山本理仁、井上潮音と5枚スタメンを入れ替えて臨む。主軸である佐藤優平、井出、小池はベンチスタート。高橋祥平はベンチ外となた。
 対する琉球は前節磐田に0-3で完敗。かつてヴェルディに所属した李栄直がCBでスタメン、福井と阿部はベンチ外となった。システムは14231で臨む。この日は青色の特別ユニフォームを着用。

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一体誰が仕掛けるの??

 立ち上がりからアグレッシブに攻め込んだのはホーム琉球だった。これまでのように右SB田中、左SB沼田の形に戻し2CB+2DHでゲームを組み立ててサイドへ展開。オーバーラップしたSBが高い位置まで入ってきてクロス供給という得意な形を見せると開始早々に沼田が速いクロスを入れる。このボールにヴェルディ最終ラインは誰も触れず、ファーへ流れて風間が思い切りよいシュートを放ち、いきなりチャンスを作る。

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 一方のヴェルディは、ボール非保持時はフロントボランチが1枚前へ出て1442で守るのはこれまでと変わらないが、ボール保持時のシステム・配置がここ最近とは異なるように見えた。左SB福村が高い位置を取り右SB若狭がCB化で3バックになるが、この日は若狭不在もあり福村が残り右SB奈良輪が高い位置を取る形を採用した。ここまでは左右を入れ替えただけであるが中盤以前の配置とその役割が変わっていた。

 左ワイドに入る潮音がタッチライン際まで大きく幅を取りWB化。右ワイドの山下はサイドに張ることよりもどちらかと言えば中へ入り端戸と2トップになる。理仁と晃樹はそれぞれインサイドハーフのような立ち位置を取って、13142に見える配置になっていた。

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 サイドから個で仕掛けていくタイプの選手が不在のため、崩しがあまり機能せずに、早いタイミングでの縦パスやこぼれ球から晃樹や端戸が思いっきり良くシュートを放っていくがGK田口に防がれる。積極果敢にシュートを打っていくもGK正面を突き先制点を奪えないでいると、琉球の綺麗な崩しから先制点が生まれる。敵陣PA付近まで押し込むと上里の浮き球パスに右SB田中が抜け出してクロス、これをファーで小泉が合わせて先制する。立ち上がりから見せていたサイド攻撃でしっかりと得点を挙げる。

 永井監督が修正を入れる。フロントボランチの理仁をジョエルと横並びのようにして2DH化、晃樹がトップ下のような場面が出てくる。ビルドアップ時に理仁が最終ラインまで下がることで福村をサイドへ押し上げる。左サイドで張っていた潮音が内側へ入り、右サイドの奈良輪がWB化から最終ラインに下りることもあり、山下が右大外へ張ることが増えて行く。バランスが整い、次第にボールを握り敵陣でプレーする時間が続く。

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 同点へ追いつくために攻め込むと、必然的に守備ラインが高くなりボール奪取した琉球はラフなボールを前線に入れて一気に陣地を挽回してフィニッシュへ持ち込む展開を作る。ボール支配の時間はヴェルディが圧倒するもフィニッシュ回数は同等な印象だった。

 40分過ぎ、マテウスからのゴールキックを琉球がクリアしてそのまま前線の小泉へ。PA内でボールを受けた小泉は巧みな身体切り返しから左足を振りぬきサイドネットを揺らし2点差と広げる。

 前半終了間際に琉球ゴールへ迫り人数をかけた攻撃からPA内で崩して最後はジョエルがシュートを放つもクロスバーに嫌われて決定機をモノに出来ず前半終了する。

いつも通りにしてみるも

 まさかの2点ビハインドとなったヴェルディは後半開始から佐藤優平、井出とフロントボランチ2枚を総取り換えして、山下を左へ、潮音を右に置きいつもの形を作り出す。

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 優平が積極的にボールに絡み、山下は幅を取りドリブルで仕掛けて井出との連携からチャンスを作り出す。ただ、琉球は4-4のブロック形成してPA内では李栄直と鈴木の2CBがフィジカルの強さを活かしてボールを跳ね返すことが多くて決定機まで生み出せない。

 すると、62分、琉球は獲得したCKからのこぼれ球をPA内での混戦から沼田が豪快に蹴り込みリードを3点と広げる。

 ヴェルディはクレビーニョと小池を投入して右サイドにも推進力を生み出そうとする。潮音が中盤へ回ることになる。特にクレビーニョはSBの位置からドリブルで運んだりワンツーから積極的に攻撃参加を見せてゴールを目指すプレーを披露するもクロスボールが上手く合わず。

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 試合終了間際の85分には自陣でボールロストすると、琉球が素早く繋ぎ、最後は河合が思いっきりよいミドルシュートを叩き込み4点目。力なくして完敗、これでJ1昇格の可能性も完全に消滅した。

まとめ

 先月の山形戦の大敗に続き、レギュラーと控え組の力の差の大きさが表れてしまった内容と結果になってしまった。ここ4試合負け無しの期間、中盤メンバーを変えてこなかった理由がこういったところにあったのかもしれない。理仁、晃樹は昨年よりも球際の強さ、フィジカル面での逞しさが増して成長していることは間違いないが、周りの選手たちも同様に成長をしているのでまだまだ発展途上であることを再認識させられる現実である。彼らが爆発的に飛躍すればチームの底上げにもつながり、昇格の目標が見えてくることになるだろう。 
 スタメンの選手それぞれのその役割と実際の選手各自のキャラクターがミスマッチだったゆえに強引な仕掛けなどに迫力を欠いてしまった。後半の山下、クレビーニョのプレーを見せられると、ボールを大事にしていくこのサッカーをするにはドリブルで勝負する人がいないと成り立たないことが証明されてしまったように考える。
 主軸を同時に休ませて地力が一気に落ちたことを露呈してしまったし、サイドアタッカー不在だと放り込んでこぼれ球をシュートと偶発性の部分でしか可能性が無かったことは来季編成において重要項目になっただろう。