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『経営危機がなんだ、江尻さんはよく頑張ってるぜ』20年-21年ヴェルディ選手編成 考察

 年明け1か月が経ち、ようやく今年初めの投稿に。

 我がヴェルディは、コロナ禍の影響を諸に受けて、営業収入大幅減による経営難で『クラブ存続』危機に直面したことが20年12月に発覚。立て直しの方法を巡りフロントと大株主ゼビオスポンサーの間での対立問題が報じられ、激動のシーズンオフを過ごすことになった。
 (この5年に一度のようなお家騒動はそろそろ勘弁してほしい)

 最終的には、羽生社長をはじめフロントが退任して、大株主ゼビオ子会社化となり、経営の安定化を図ることになった。上場企業のゼビオの子会社になることで健全経営の道を進んでいくことは期待できるが、目先の懐事情は苦しいものであることには変わりないだろう。

 こうしたゴタゴタがありながらも現場は21年シーズンに向けて選手編成を進めてきた。江尻強化部長の新体制発表などでのメディアを通じてのコメントでは、新加入選手を追加獲得を狙っているようで完了した訳ではないが、1/31㈰時点での選手編成を考察していこう。

in/out状況

 まず、20年-21年シーズンオフの選手in/outは以下の通り。J2というカテゴリーに居る限り、選手自身も個人昇格を考え、ちょっと目立った活躍ぶりを魅せるだけでJ1から引き抜かれる立場である事は避けられない。
 今回も5年間在籍した23歳井上潮音とプロ1年目で急成長が止まらない藤田譲瑠チマがそれぞれJ1神戸、徳島へ移籍する。一方で、引き抜かれた安在と梶川が復帰することになった。J1はJ1で海外クラブへの移籍もあり、ますますグローバル化が進むサッカー界において『引き抜き』と『放流』は今後も頻繁に起きるだろう。
 上述の苦しい台所の事情の中で、江尻強化部長を中心とする現場は『よく頑張っているなぁ』と考える。

20-21年ヴェルディINOUT

 ではでは、各ポジション毎に細かく見て行こう。

GK

 3人体制で臨んだ20年シーズンから1名増加の4名体制となる。18年19年と守護神として君臨した上福元が去り、注目された新守護神の座。コンディション面もあり、柴崎貴弘が出場する機会も少しばかりあったが、ブラジル加入したマテウスが安定したパフォーマンスを披露して新守護神に君臨する。元々複数年契約だったのか、今季も契約更新され活躍が期待される。第3GKの立ち位置として出番に恵まれなかった長谷川洸は契約満了(のちに山形へ移籍発表)となり、沼津の守護神長沢祐弥と順天堂大からアカデミー卒の佐藤久弥を獲得した。

 助っ人として獲得しているマテウスがあと何年このクラブに居るのか読めず、第2GKでベンチでの立ち振る舞いや緊急出場時の安定感ある柴崎も39歳を迎えるシーズンであり、将来を見越して24歳の長沢と23歳の佐藤という2名の若いGKで次世代のレギュラー争いを期待された構成になっているのだろう。

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DF

 『男の約束』を果たして復帰した高橋祥平であったが羽生社長が去ったことも多少影響あったのだろうか、わずか一年だけのプレーで終わる(磐田からの期限付き移籍が満了となり町田へ完全移籍)。またベテランCBの近藤直也は現役引退をしてCBを2名失う形になる。それでも、水戸でバリバリの主軸CBを張るンドカボニフェイスを完全移籍で獲得、永井監督も愛弟子で相模原のJ2昇格に貢献した富澤清太郎が10年ぶりに復帰と2名の穴を埋める。シーズン終盤には主将を務めたJ2屈指のエアバトラー平智広と契約更新してンドカと平のCBコンビで結果としてプラスアルファ編成になったのではないだろうか。新加入の20年シーズンは怪我に苦しみ、終盤にようやくデビューを果たした馬場晴也はこの牙城を崩せるのか活躍に期待がかかる。ヴェルディユースからトップ昇格を果たした190㎝超の大型レフティCB佐古真礼は出場機会優先の考えから「外の空気吸ってこい」ということで藤枝へ育成型期限付き移籍をした。

 SBは右サイドではレギュラーを掴み、可変システムを大きく支える若狭大志と契約更新。フラメンゴから期限付き移籍をしていたクレビーニョは期間満了、永井塾の門下生として期待されて20年開幕戦ではスタメンを張った澤井直人は契約満了(のちに山口へ移籍が発表)。1名となったところに、こちらもアカデミー卒で中央大から加入した深澤大輝が絡んでくる構図だろう。ただ両者ともにCBもこなせる能力があり、4名しか居ないCBの怪我人事情や後述する人員過多気味の左SBの状況によってはCB起用も考えられる。沼津へ期限付き移籍をしている安在達弥は21年も引き続き期間延長となった。

 左SBは鳥取加入1年目からチームトップの8アシストを記録した福村貴幸、90分間惜しみなくアップダウンを繰り返す仕事人・奈良輪雄太と契約更新。ただ、両者ともに30歳を超える年齢面と昇格に向けてパンチが欲しいこともあり、G大阪U23でフルに活躍していた山口竜弥を完全移籍で獲得。そして、昨季は山口でプレーしていた安在和樹を契約元の鳥栖から期限付き移籍で獲得して4年ぶりの復帰となった。昨季山口へ期限付き移籍を選んだことでヴェルディとは縁が切れたのかと思っておりまさかの加入であった。奈良輪は右SB、安在は右SBや中盤にワイドと複数ポジションが出来るだけに計4名となっているがマルチプレーヤーを揃えた印象で、一番序列が読みにくいポジションである。北九州に期限付き移籍していた永田拓也は移籍先での活躍もあり、完全移籍へ移行した。

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MF

 リベロと呼ばれる中盤底の選手の前にフロントボランチという2枚を敷く逆三角形システムを採用してボールを握って相手を崩すサッカーを志向する上で重要な要素を占める。

 広大なスペースを1名で守り、セカンドボール回収、長短のパスでゲームコントロールと様々な役割が求めらるリベロには藤田譲瑠チマがプロ1年目ながら卓越したポテンシャルとサッカーIQの高さで能力開花をして20年シーズンは不動のレギュラーを獲得する。シーズン中盤以降は得点やアシストと結果も残し、日本サッカー界においても超有望株へと成長を遂げてわずか1年でJ1昇格を果たした徳島へ移籍した。同じ歳でこちらの方が早くから将来嘱望されている山本理仁であったが、プレーの迷いからか調子のムラが激しく、21年は巻き返しを誓うシーズンとなる。藤田も山本も21年シーズン前半はU20日本代表での活動でクラブを離れる時間が長くなることが想定されたため北九州の躍進を支えた加藤弘堅を早い段階から完全移籍で獲得に成功した。結果論であるが、藤田が抜けた穴も補える位の力を持った選手を補強することが出来た。

 フロントボランチでは20年に加入した井出遥也と契約更新、なかなか去就が発表されず心配された佐藤優平(結局発表無し)も残留を果たした。これでなんとか計算は立つだろう。加えて、才能の片鱗を魅せてブレイク間近の森田晃樹は他クラブからのオファーがありながらも残留を選択、若き逸材のレフティ石浦大雅も契約更新と大半の選手を残すことに成功。そこに、永井サッカーの理解者で、中盤ならどこでも出来る梶川諒太を徳島から期限付き移籍で獲得。こちらもわずか1年でヴェルディへ復帰をする。J2屈指のテクニシャンを揃えてその技術力の高さには疑いの余地はなく、今季も安定したボール保持のサッカーを繰り出すことは出来そうだ。ただ、勝ち点3を挙げていくには、上手さでは無くて得点やアシストといった結果が欲しい。上述のSBメンバーの中盤起用も視野に入れると、人員過多気味になる可能性あり、出番に恵まれない選手はシーズン途中での移籍も予想される。

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FW

 両サイドのワイドと中央のフリーマンの3名で3トップ形成する前線。相手を崩すサッカーを志向する以上はこの3トップの得点力が生命線である。良くも悪くもこの3名次第と言ってよいだろう。

 右ワイドのポジションで19年に16得点と30歳を超えてその才能爆発した小池純輝、20年は相手のマークもきつくなり、過密日程で途中交代で出場時間もあったが7得点6アシストと前年の活躍には及ばなかったが成果は残した。21年も契約更新をして期待がかかる。反対の左サイドではヴェルディのアイドルとして君臨する中盤の井上潮音をコンバート。小池のように個の仕掛けよりもボールキープで時間を作る役割やプレスバックしての守備を求められ、それでも自己最多の4得点5アシストを記録。尊敬するイニエスタが所属する神戸へと個人昇格を果たした。20年の新体制発表後にテスト生からプロ契約を勝ち取った日体大卒の山下諒也は圧倒的なスピードを武器に左右両サイドをこなし、チーム最多8得点を記録。去就が注目されたが、今季もヴェルディでプレーすることになり二桁得点の活躍が期待される。2つのポジションをこの3名が中心となっており、新井瑞希松橋優安と4番手5番手の位置づけの選手たちと力の差がだいぶあったことは否めない。明治大から獲得した左利きのドリブラー持井響太を含めて3名の底上げは得点力アップには欠かせない。高校生Jリーガー阿野真拓はトップデビューは果たしたもののプロとの強度にはまだ慣れていないようで、今季もユースとの掛け持ちが予想される。未完の大器で才能開花が待たれる中野雅臣は20年シーズンもヴェルディでの活躍が難しく、途中で岩手へ期限付き移籍。新天地でようやく花が開きつつありプロ初得点を挙げるなど出番を掴み、完全移籍へ移行。
  (これからが本当のサッカー人生だ、頑張れ)
 19年に8年ぶりにヴェルディに復帰した河野広貴はこの2年間は怪我との戦いでなかなか出場機会が無く、自由契約に。未だに去就の発表がとても気になるところだ。

 中盤へ下りて組み立てに参加してフィニッシャーの役割も求められるフリーマン。怪我がちであることが不安であるが、相手CBを背負ってもフィジカルもあり足元の技術にも長けている端戸仁が主戦となる。活躍が期待されたレアンドロは度重なる怪我もあり現役引退、また群馬へ期限付き移籍した林陵平も引退。鳴り物入りで入団した大久保嘉人はトップフォームからは程遠く0得点と期待を裏切る低迷でC大阪へ移籍(事実上は契約満了)。端戸が居ると居ないではまるで違ったサッカーになり、代役で森田が務めることもあったが本職のFWではないためPA内での動き出し、DFとの駆け引きでは劣る部分もありチーム全体の得点力低下。2番手の存在として明治大から佐藤凌我を獲得。ストライカーとしての活躍に期待がかかる。背番号発表されたが10番が空きになっており、江尻強化部長からは「獲得を目指して動いている」との趣旨の発言もあり、クラブ側も補強ポイントであることは認識しているようだ。

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まとめ

 志向するサッカーが明確であるから、獲得する選手もターゲット絞り易い。現時点での各ポジションの構成をみると、苦しい経営状況の中でクラブ側は現状維持が出来る戦力を揃えることは出来たと評するのが適切だろうか。DFとMFにはJ2で実績ある選手たちが居て、ある程度安定したサッカーを披露するだろうと考える。
 コロナ禍の変則シーズンを受ける今季は降格枠4ある。昨季の勝ち点55(12位)は、降格圏19位町田とは勝ち点差がたった5点しか開きが無い。連勝連敗でひっくり返される怖い位置におり、残留争いは過去最大の熱戦になることが予想される。勝ち点を積み上げていくには、リーグ2位の15引き分けをいかに勝ちへ変えるかがカギになり、リーグ12位の48得点の向上が明確な課題だ。選手たちの伸び代に期待をかけたい気持ちもあるが明治大コンビやヴェルディアカデミー卒の若い選手たちにそれを背負わせるのは博打に近いだろう。
 今回の選手編成は永井色がそこまで色濃くなっていないような気がする。強化部が現状を分析して不足するピース、強化したいピースを獲得しているように感じられる。空き番の10番も組み立てが得意な選手では無くてフィニッシャーの獲得を目指しているのではないだろうか。ヴェルディの未来のため、新しく生まれ変わったクラブの本気度に期待したい。

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