【雑感】2022年J2リーグ 第7節 対FC琉球~大逆転を生んだ強気な姿勢~

東京ヴェルディ 5-2 FC琉球

 3連戦の2戦目。またも2点ビハインドという苦しい状況であったが、粘り強く戦い5得点の逆転勝ちはお見事。大逆転劇を振り返っていきたい。

スタメン

 前節・山形に2点ビハインドから引き分けに追いついたヴェルディ。中3日で迎えるこの日は中盤底に梶川を起用し、森田晃樹と阿野真拓をIHに配置。前線は新井、佐藤凌我、杉本竜士の3枚。小池は帯同メンバーからも外れた。
 対する琉球は前節・大分戦から中6日。リヨンジ、福村、富所にとっては古巣との一戦になる。


前半

 平日開催となったこの試合。どうしても目が行ったのが中3日で山形から沖縄へ移動して戦うヴェルディと中6日で迎えるホーム琉球のコンディションの差であった。

 立ち上がりの動きを見ているとヴェルディの選手たちが身体が重そうだったのは明らかであった。アグレッシブにプレーする琉球は1442で守り2トップ横並びでSHが縦スライドをして3枚でヴェルディ4バックへプレスをかけていく。これに対してヴェルディは縦スライドしたSHの裏をビルドアップの出口に設定するオーソドックスな形を見せる。ここに森田晃樹や杉本竜士が構えてボールを貰い、前進させていく。この試合でも左サイドからボールを運ぶことが良く見られ、それを意識したからかドリブル得意な新井のスタート位置を右であった。

 ただ、時間が経過していくと、次第に新井が中央、そして左へ流れてきて最終的には最も得意とする左大外に落ち着いた。前線の新井、佐藤凌我、杉本竜士は流動的にポジションを変えながらプレーをしていくが、ゴールへの筋道があっての旋回ではなく即興での対応になっている感が強かった。左サイドに選手が集まることで自然と右サイドが空き、この位置にはIHだったレフティ阿野真拓が張り、カットインしながらもしくはSB山越との連携で攻撃を組み立てる。両サイドからのクロスが何度か見られたが、クロス精度に欠いたこととPA内での動き出しが鈍かったこともありシュートには至らず、だんだんと琉球守備陣にリズムを与えてしまった。

 これまでの試合に比べると明らかに疲れが見えてプレス強度も落ちているヴェルディに対してボールを握った琉球は右SH中野がヴェルディ左SB加藤蓮をピン留めすると大外にフリーで右SB大本を配置。反対サイドは清武がサイドに張り、得意のサイド攻撃の絵を描く。

 サイドから抉ってシンプルにクロスを上げてPA内で勝負もしくはヴェルディの4-4ラインを下げさせることで生まれたバイタルエリアにDH富所、上里が3列目からの攻撃参加でミドルシュートを放つことが多かった。

 立ち上がりから、身体の重さが感じられたヴェルディがあっさりと先制点を喫する。クリアボールを琉球に拾われて攻め込まれると、PA内で草野にループ気味にシュートを決められる。

 そのあとも大本、清武の両翼中心に攻め込んでいくと、36分、清武の左からのクロスをPA内で草野が胸トラップで落とすと野田が叩きつけながらハーフボレーを決めて差が2点に広がる。完璧に崩されたゴールであった。前節の山形戦同様にPA内でシュートを許す場面が増えていることが気になる。GKとDFの選手たちがこれまでと違うことが原因か、試合重ねるごとに全体的に疲れが出てきたことでプレス強度が落ちて、中盤を支配されて崩されたことが原因か失点が増えてきていることは早急に改善していく必要があるだろう。

 前節に続き、2点ビハインドになったヴェルディ。40分ごろからようやく琉球最終ラインの背後を取るような動きが出てきて奥行きが生まれ始める。そうすることで攻撃にも迫力が出てきてリズムが出ると、終了間際の45分、右からのCK。梶川がアウトスイングで蹴ったボールを山越が打点高いヘディングシュート決めて1点返す。山越は移籍後初ゴールとなった。

後半

 1-2で折り返したヴェルディ。カウンターから真拓がシュートチャンスに持って行き、琉球ゴールを脅かすと、ビルドアップ時に変化を見せる。初めは4バック、そのつぎに加藤連を偽SBとした3バックにしていたが後半からは両SBが高い位置を取りCB2枚+梶川の3枚が三角形を作るようになった。負けていることで得点を奪いに行くこともありSBが高く張ることで対面する琉球SHがプレスに出にくくなり、守備ラインはずるずると下がりリトリートするようになる。ヴェルディが敵陣へ押し込み、琉球は中を固めてサイドへ誘導する守り方をする。

 存在感が出てきたのが10番新井だった。前半はSB大本に攻撃参加を許し決定機を作られていたが、後半は盛り返すように大外から何度も仕掛け、大本に守りの時間を長くすることで攻撃力を消し、ヴェルディペースへ持って行った。すると、思いもよらぬ形で同点へ追いつく。68分、左サイドから仕掛けた新井が右足でDFとGKの間にシュート性のクロスを入れると竜士が相手CBと重なるようにつぶれ、GK田口がボールに触れず、そのままゴールイン。2戦連続で2点ビハインドから追いついて見せた。

 自分たちの時間帯で得点を積み重ねて主導権を手に入れたヴェルディ。2-2のタイミングで石浦大雅とバスケスバイロンを投入して右サイドを入れ替えて勝ち越しを目指す。

 対する琉球もカウンターから勝ち越し点を奪いに行くもお互いに得点を挙げられず時間だけが過ぎて行く状況。残り5分を切り引き分けムードも漂い始めた時、試合が再び動く。右ペナ角でボールキープしたバスケスバイロンが富所に倒されてPKを獲得。この大事な場面でキッカーは新井。しっかりと決めきりとうとうヴェルディが勝ち越した。

 リードを奪い、さらにパワーを増したヴェルディ。前線からのプレス強度もギアが上がり琉球ビルドアップにも果敢にボール奪取を挑むとGK田口へ猛烈なプレスを佐藤凌我がかける。田口がボールコントロールを誤りゴールラインを割り4点目。ATの貴重なダメ押し点で試合が決まった。

 さらに攻撃するヴェルディは佐藤凌我のシュートがリヨンジのハンドを誘い再びPKを獲得。自ら得たPKを凌我が冷静に決めて5-2と3点リードでタイムアップ。怒涛の5得点で鮮やかな逆転勝利を飾った。

まとめ

 過密日程での長距離移動試合という難しい条件のなか、選手たちの疲労もさすがに隠せなかった。相手への寄せにいつも激しさがなく、いつもなら届く部分に届かずという風に見えた場面が前半はいくつも見られた。後半に改善されたのは、フィジカル面の回復ではなく気持ちの部分がかなり大きかったのでは思える。そういう意気込みの中で逆転勝ちを収めたことは選手たちにとって手応えと自信を得ることだろう。
 得点こそ取れなかった時間帯であるが個の力が爆発的に上がっている新井を右サイド配置したことは左右のバランスを取る意味で面白かった。ただ、本人は左大外からの景色が気に入っているようだ。得点を重ねているうちは良いが、次の手も考えておく必要はありそうだと7試合を見て少し気になっている。
 守備陣は離脱者も多く、ここのところメンバー構成が変わっているがスタメンで初めて勝利を手にすることが出来た長沢は何よりも嬉しいことだろう。これを弾みに飛躍することを期待したい。次は3連戦3戦目の大分戦。良い形で締めくくって貰いたい。