【雑感】2020年J2リーグ 第9節 対V・ファーレン長崎~設計図の進捗具合は?~

東京ヴェルディ 0-0 V・ファーレン長崎

 3連戦の最後となったこの一戦、首位長崎相手に持ち味を出しつつも決め手に欠き、スコアレスドロー。過酷なピッチコンディションのなか、選手たちはよく走り、よく走らされたような試合であった。攻撃の狙いと『なぜ走らされたのか』を試合経過とともに考えてみたい。

スタメン

 前節・新潟に試合終了間際に追いつかれて引き分けたヴェルディ。連戦の疲労を考慮してか、この日はメンバーを4枚入れ替えて臨む。左SBに福村、フロントボランチには今季初スタメンの森田晃樹、ワイドには小池と山下が入る。スタートシステムはいつも通り14141になる。
 対する長崎はここまで7勝1分0敗(勝ち点22)と絶好調で首位を独走する。フレイレ、亀川、秋野、大竹、富樫と前節から5枚入れ替えて臨む。スタートシステムは富樫が1トップ気味の14231となる。

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富樫中心に攻撃を仕掛ける長崎

 首位をひた走る長崎は多くの選手たちが得点を挙げていること、だれが出ても結果を出していることが要因の一つでもある。この日もスタメンで出た選手たちが積極的に得点を目指す。基本的にはボールは持たせても良いという考えがあるようで、ヴェルディがボール保持時には1442(14411)で2トップを縦関係になりリベロの位置に入る藤田譲瑠チマを名倉がマークする形を取る。

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 ボール保持時には、DH秋野が下りて2CBフレイレと二見と最終ライン形成して、両SBを高く押し上げ13151システムのようになる。トップに入る富樫と2列目の大竹、名倉、澤田が連動したプレーからシュートチャンスを作る。ヴェルディは井出がカイオセザール、潮音が秋野をみながら2CBへプレスかける。

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 10分、左サイドで亀川が秋野へボールを渡し、やや遠いところから最終ラインの裏を取る富樫へクロスを入れる。右へ流れるような動きから富樫がファーを狙うヘディングシュートを見せるも枠を捉えることが出来なかった。
  17分、ヴェルディのCKからの流れでボール奪取すると富樫がドリブルで運び右サイドを駆け上がる澤田へ。折り返しのクロスから最後は名倉がシュートを放つもマテウスの好セーブで得点を奪えない。
 ボール保持するも、手数をかけない攻撃で効果的にゴールを目指す場面が目立つ。

設計されたヴェルディのサイドからの崩し

 両ワイドに山下、小池とスピードある選手を起用したヴェルディは、この2枚を活かそうと左右からのサイド攻撃の狙いが目立った。ボールを繋ぎ、崩して得点を奪いたいヴェルディは基本的には最終ラインからの組み立てを図る。
 右SB若狭は最終ラインに残り、左SB福村が高い位置を取る。トップに入る井上潮音は長崎最終ラインに背を向けてポストになるわけでもなく、フリーマンとして下がってくることが目立ち、13142(13160)というようなシステムになる。

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 上述のようにジョエルに対しては名倉がマークにつく(受け渡して富樫の場合もある)ことが多く、3枚の最終ラインから若狭が1列上がり、パスコースを確保。長崎の中盤4枚に対してヴェルディは最大で6枚居る時があり数的優位が必然的に生まれる。長崎SHDH間に晃樹、潮音、井出が立ち、福村は対面する右SH大竹の外で余る。小池と山下はSBの外に居ることが多く、そうすると、福村、山下、井出の左サイドは3対2を作ることに成功する。若狭や高橋祥平から左へ展開して、ここからクロスを上げてる場面がいくつか見られた。
 右サイドでは大外に張る小池へ、若狭や祥平からの速いパスが入り、晃樹とのワンツーで崩してクロスという場面が見られた。

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 26分、最大のチャンスがやってきた。若狭から小池へ繋ぐと。そこからはワンタッチと連動したランニングで小池、潮音、晃樹と繋ぎPA内の井出へマイナスのクロス。しかし井出が決めきることが出来ずに枠外へ外す。
 両チームの狙いが出ていた前半であったがスコアレスで折り返す。

フィニッシュまでが少ないゆえの被カウンター

 ハーフタイム、ヴェルディは端戸と佐藤優平を入れて配置を替えた。中央でフリーマンになる潮音であったが、最終ラインとの駆け引きが少なかったことから裏抜けも出来て、深みを作れる端戸を投入したと考えられる。

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 後半立ち上がり、途中出場した端戸と優平が積極的にボールに関与しながらリズムを作ると48分獲得したCKからの混戦から最後は潮音がシュートを放つも徳重がしっかりとキャッチ。53分、55分と立て続けに優平がシュートを放ち積極性を見せる。
 長崎は氣田と加藤、その後にはルアン、畑を入れ、対するヴェルディも藤本寛也、新井と両者フレッシュな選手を投入して攻撃陣を入れ替える。

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 ビルドアップからのサイドの崩しでゴールに迫るヴェルディは優平や寛也も左サイドへ流れることが多く、83分、左サイドから新井、潮音、寛也と絡み走り込んだ端戸へのクロスも最後は二見にクリアされ決定機を作れない。フレイレを引っ張り出したいのかこちらのサイドから崩そうとする場面が極端に目立った。しかし、長崎の堅い守備をなかなか崩せないと、ボールを失い、澤田らがボールを運び一気にピンチを招くことがあった。それでも祥平と平が踏ん張りゴールを割らせない。長崎守備陣を崩そうと何度もチャレンジするもののフィニッシュまで持ち込めないとボールを失い、長い距離を走らされる展開になったが最後まで集中した守備陣の踏ん張りもあり、ここまで毎試合得点中だった長崎を完封してスコアレスドローに終わった。

まとめ

 再開後はじめての遠方アウェイで高温多湿の悪条件のなか、首位長崎を完封して勝ち点1を上げた選手たちの頑張りを称えたい。サイドや中央からの崩す場面も増えてきて得点のにおいを感じさせつつあるが、ここは身体を張って守る長崎守備陣の懸命なプレーが一枚上手だった。ただ、継続していくことで精度が上がってきたことも確かであり、ここ数試合、同じような図を私自身も描いているような気がするのも攻撃の設計図がまとまりつつあるということなのだろうか。
 あとは決めるだけというようにも思える。シュートを放つ=フィニッシュで終わらせることで相手GKからのターンになるためカウンターを喰らうことが減ることにもつながるから貪欲にシュート、得点を目指していってもらいたい。
 この試合、後半途中からバテて足が止まっていたジョエルを交代させなかったことが気になった。替えが利かないくらいの存在になりつつあることは間違いないが、長期離脱につながりかねない怪我のリスクもある。次節・琉球戦から始まる5連戦。勝ち負けもあるが、42試合の長期視点で見れば前半折り返しにもならないところ。まだまだ長いシーズン、選手のやり繰りで上手く乗り越えて欲しいと願うばかりである。