【雑感】2024年J1リーグ第24節 対アビスパ福岡~十八番のゲームプラン~

東京ヴェルディ 1-0 アビスパ福岡


スタメン

 前節・町田との東京クラシックに0-1で敗戦したヴェルディ。宮原、見木、木村の3名を入れ替えて臨む。山田楓喜は出場停止の2試合目となる。
 対する福岡も前節は広島に0-1で敗戦。出場停止明けの田代が復帰し1名を入れ替える。グローリー、ウェリントンなど離脱者が居る。佐藤、ベンチに入る北島にとっては古巣との一戦となる。

前半

 7月に入り天皇杯含めて公式戦で勝ち無しと不調の両者。ヴェルディの前線3枚山見、木村、染野に対して福岡は亀川、田代、宮がマンツーマン対応をする。前半は、山見に対して亀川は持ち場を離れて喰いつき過ぎにも見えた。開始早々、その亀川の背後を取った木村が抜け出して左サイドで溜めると山見へ折り返しシュートもコースが甘く村上に防がれる。

 従来のように試合の入りはアバウトなロングボールを使い攻めるヴェルディに対して福岡は得意のロングボール主体というより前節と同じく足元で繋いで行く。結果的にはボール支配率が途中までは60%超えの展開となる。ボール保持時1343の福岡に対してヴェルディは1541で構えて木村が田代へプレス、SH化する山見と染野が対面の亀川と宮へ縦スライドの構図で噛み合わせ上、オールコートマンツーマンになる。前線の佐藤や紺野が張り付くよりも下がってボールを貰いに来る動きに林と谷口栄斗もひたすら喰いつくかとパスの出し入れを見るとそうではなかった。また、2DH見木と齋藤が前と松岡に喰いつくわけではないため前と松岡がボールを持てることが多く、ここで起点を作られてヴェルディ陣地へ侵入する。そうすることでヴェルディは5-4のブロックが下がり福岡は亀川と宮が隙あればと攻撃参加してクロスボールを供給。古巣対戦となった佐藤に宮がクロスを入れて挨拶代わりのヘディングシュートを演出した。

 屈強なフィジカルを活かしたサッカーが目立つ福岡で異彩を放つ小柄なレフティの紺野。卓越したテクニックを活かしたキックやボールキープ、ドリブルはこの試合でも目立ち、始めの立ち位置は右シャドーであるがボールを貰いに下がったりタッチライン際へ開いたりと自由に動き回ることでヴェルディのマークを曖昧にさせた。対面する栄斗がマークについていても下がることで小田が追い抜く動きをすればそちらに釣られるよう翁長と栄斗の目線が行くのその瞬間にフリーとなり右サイドからPA内へ鋭い縦パスを入れ、あわやの場面を作る。

 シュートはお互いに少ないものの福岡が主導権を握り飲水タイムを迎えた。ここで流れが止まったのか、ヴェルディが修正したのかわからないが飲水タイム明けからヴェルディのパス回しが活き活きとした。

 前節町田戦の後半同様に2DHが縦関係になり、この試合では見木と齋藤が縦関係になって後方からのパスを相手DHの前で貰うとシャドーの山見と染野がサイドに張るのではなく中央に構えて見木と3枚で近い距離を取ることで後方からの縦パスにスピードを殺さずにダイレクトプレーを用いて前進することが冴えていた。3CBの右、悠斗が少し高い位置取って林と栄斗の2枚残する可変することがある13151の配置となる。福岡は齋藤へのプレッシャーが甘く、かなり時間とスペースを与えてしまってこれでヴェルディの攻撃のリズムが生まれる。

24分、ビルドアップから翁長の縦パスに勇大が見木との連携で抜け出してシュートも村上に防がれる。後方から良い崩しが出来ていた。

そのあとも攻撃時の2DH見木と齋藤の縦関係によってお互いの個性が活きて機能して主導権を握ると、37分ヴェルディが先制する。ロングボールのクリアを拾った染野が見木へ繋ぐ。見木はシュートを打つかと見せかけて左の山見へパス。村上の間合いに持ち込ませないように飛び出しをよく見ながら左足でニアへシュートを流し込む。山見はこれで4点目として調子を上げている。

 攻撃の形を作れている時間帯にしっかりと得点できたヴェルディはリズムを掴み主導権を握る。そのあとも仕掛ける機会が多く試合を進めて1点リードで前半を折り返す。

後半

 ハーフタイム明けに福岡は重見に代えてザヘディを投入し、佐藤が左シャドーへ下りる。最前線にパワーを加えて強引さを出そうとする。しかし流れはヴェルディのまま中央突破からのシュート、CKからの流れでシュートと追加点を奪うべく積極的に行く。序盤は福岡が60%超えていたボール支配率も気づけば五分五分近くまで回復していた。福岡にセットされた守備をさせずトランジションを利用してシュートまで持って行ける機会が多く2点3点と取りに行きたかったヴェルディであるが、本来の得意とするロングボールをザヘディ目掛けて有効活用することで福岡が敵陣でのプレー時間が増える。ヴェルディは佐藤を倒してイエローカードの提示を受けた綱島悠斗に代えて松橋優安を投入。右WB宮原を中に入れてCBへ回して優安を右WBとした。福岡は前に代えて平塚を入れそのままDHへ。

 ザヘディをターゲットにボールを集めるがヴェルディの守備陣は身体をしっかりと当てて決定的な仕事を許さず2戦通じてシャットアウトできた。

 福岡は飲水タイム明けから亀川を左SB、小田を右SBとして4バックへ変更し1442とした。ロングボールでパワープレーのようになり押し込む展開にヴェルディは前線から走り回っていた木村と山見に代えて森田晃樹と山田剛綺を投入。久しぶりのスタメン起用となった木村は決定機は決めたかったが前線で攻撃の核を担い、守備でもプレスからのボール奪取とファーストディフェンダーの役目を果たして攻守においてサイズの大きさを活かした”らしさ”溢れるプレーを披露した。山見共々、良い形でバトンを受け渡したと言えるだろう。

 中盤に晃樹が入り落ち着きを図ったヴェルディはようやく福岡の押し込みを沈静化させて守備ラインを押し上げた。その後、稲見と千田を投入して最終ラインに厚みを出してパワープレーを跳ね返すヴェルディ。後半ATに脳震盪の疑いで交代を余儀なくされた染野に代わりチアゴが投入。上手くファウルを貰い時計の針を進めて行く。途中出場した北島が左サイドからFKと昨季ヴェルディ時代に何度も見たシチュエーションに再現性が脳裏をよぎったなんとか防ぐ。
 試合終了間際には、チアゴが抜け出してPA内に侵入すると対峙する相手をフェイントを入れながら崩して渾身のシュートを放つも村上の好守に阻まれて2点目は奪えなかったが、タイムアップ。1-0のクリーンシートで3試合ぶりの勝利を飾った。

まとめ

 敗戦の次の試合を負けずしっかりと勝ち切った。連敗しないリバウンドメンタリティはお見事である。ロースコアに持ち込んで虎の子の1点を守り切るのがこのクラブには合っている。
 中断期間前の最後の試合に勝てたことは勝点3以上の価値があるだろう。勝って休みに入るのと負けて休みに入るのではメンタル面でも大きな違いがあるはずだ。第24節は下位クラブも軒並み勝利したことで差を広げるには至らなかったが残り試合を考えると残留できる勝点へのゴールに近づいているからまずはそこを目指してひたむきに進む。
 立ち上がり、ボールを持たれる展開に苦労したが時間経過ともに修正し、前節町田戦の後半のように堂々とした立ち位置を取っての崩しが見られて、きちんと得点を挙げたことは今後に向けても好材料だ。メンバーと配置を入れ替えながら過ごした7月の3試合で勝点4を得た。交代選手たちによるプレー強度も維持ができており選手層の押し上げにも指揮官は手応えを感じているのではないだろうか。移籍期間も始まり各クラブの補強も有る。シーズン成績に直結する大事な戦いに向けて総合力アップを期待したい。