【雑感】2024年J1リーグ 第9節 対川崎フロンターレ~底上げ感じるクリーンシート~

東京ヴェルディ 0-0 川崎フロンターレ


スタメン

 前節・FC東京との東京ダービーで悔しい引き分けに終わったヴェルディ。負傷交代した谷口は欠場、右SB宮原もコンディション不良で欠場となった。またパリ五輪予選U23日本代表の山田楓喜も不在となり、右SBに翁長、CBにはようやく出番が回ってきた千田がJ1デビューを果たす。ベンチにはルーキー山田裕翔と山本丈偉が初のメンバー入りとなった。
 一方の川崎Fは前節・C大阪に0-1敗戦。3試合無得点と攻撃力が影を潜めている。こちらも高井がU23日本代表のため不在。ファンウェルメスケルケン、ゼヒカルド、山田と前節から3枚入れ替えて臨む。

前半

 この試合でまず驚いたのは、ヴェルディは右SB宮原もまさかの欠場となったこととビジターでは珍しく1stユニフォーム着用したこと。川崎Fはお馴染みの中盤3枚+3トップではなくて山田とエリソンの2トップで1442システムとしたことであった。
 システム変更で臨んだ川崎Fに対して序盤から主導権を握ったのはヴェルディだった。立ち上がり、いつものように木村と染野の2トップへロングボールを当てたり、背後へ走らせたりと2枚のフィジカルを活かして陣地を押し込む展開を見せる。5分、敵陣に人数かけてボール奪取から2トップのコンビネーションからの最後は木村がシュート。

 ロングボールで陣地を押し込み速い攻撃は主に左サイドで起点を作るとここに見木や深澤大輝が絡む。前節・FC東京戦などでもみせたポケットを取る狙いがあった。右SBとしては初めてスタメン起用された翁長の左足でのロングフィードから木村が抜け出しシュート、最前線へ上がった左SB深澤へのフィードするとヘディングの折り返しゴール前を横切りファーサイドの染野へ。GKとの1対1も決めきれず絶好の得点機会を逃す。染野はGKとの至近距離での1対1が苦手なのだろうか。

 左右両足で器用に蹴ることができる翁長が低い位置から左足で巻くようなボールを早いタイミングで入れるアイデアは面白かった。宮原の欠場によっての起用であることは間違いないが、縦へ仕掛ける純粋な右SB宮原とはまた違ったキャラクターでありカットインするボールを入れるのも1つの戦法としてオプションにもなりそうだ。

 攻撃に加えて前線からの守備も嵌り、川崎Fの危なっかしいボール回しにハイプレスをかけるとチョンのところでボールカットを仕掛けミスからゴールへ迫る場面が前半だけで3回もあった。このいずれかが得点に繋がっていればと悔やまれる。

 一方の川崎F、山田とエリソンの2トップのプレスとマークの受け渡しにはぎこちなさもありヴェルディがボールを握り押し込み、中盤4枚(齋藤、稲見、森田晃樹、見木)のハイプレスとプレスバックや初出場エアバトラー千田の打点の高いヘディングでの跳ね返しなどして敵陣で再びボール回収してチャンスの展開が続くもシュート精度に助けられる。ヴェルディペースと思いきやミスからボールを握ると左サイドからのスローインから崩し、脇坂が巧みなコントロールシュートを放つもマテウスが左手一本でコースを変えてポストへ。マテウスは吠える。J1昇格後、この姿を見たのはあまり無かったなと。天皇杯で川崎Fに勝利時も大活躍があり等々力には相性が良いのかもしれない。

 このシュートで息を吹き返した川崎Fが少しずつボールを握り敵陣へ侵入しはじめる。すると43分、ここまで抑え込まれてなかなか満足なプレーが出来ていなかなったエリソンがペナルティアーク右でボールを貰うと反転してから思い切り良く左足を振り抜くもサイドネットをかすめる。フッキ2世と評されるのもよくわかる上手さとパワフルさを兼ね備えたFWだ。

 ヴェルディが攻め込み決定機を作り川崎Fも隙あればと狙い澄ましたシュートあったがスコアレスで折り返す。

後半

 お互いにメンバー交代無しで後半を迎える。立ち上がり左サイドやや遠い位置からのヴェルディのFKを川崎Fがクリアするとそのボールに反応した翁長と齋藤が重なりマルシーニョが上手く抜け出して独走ドリブルでマテウスと1対1となるも枠を外してしまう。これも超決定機であり今度はヴェルディはマルシーニョのシュート精度に助けられた。

 前半からのハイプレスにだんだんと体力消耗してきたヴェルディは選手の距離感が開いていき低い位置からゼヒカルドに持ち運べることやバイタル付近で縦パスを入れられることが増えて川崎Fに押し込まれて行く。
 右に左にと振られてはクロス、CKを何度も献上し踏ん張りどころを迎えた。川崎Fペースになってきて等々力の雰囲気からも4戦ぶりの得点かと匂い始めたところでエリソンとマルシーニョが下がり小林と遠野が入る。ブラジル人2名の個人技が時間が経つにつれて発揮されていたのでここでピッチを去ったのは内心ホッとした。走らされて体力消耗し、強度が下がってきたところでプレースピードに緩急をつける、むしろスローになるこの状況での家長の登場は相手からしたら助かった。

 ヴェルディは齋藤に代えて山形から加入したチアゴアウベスがリーグ戦初出場。左SHに入って見木が右SHへ回る。チアゴは個人技を生かして早速左サイドからチャンスメイク。後半の疲れてきてチーム全体のプレー強度が下がってくる時間帯で単騎突破が出来る存在はとても心強い。木村に代えて山見を投入して染野と2トップを担い左サイドに流れながら仕掛けを試みるも相手ラインが見えてないのか簡単にオフサイドに2回も引っかかる勿体無い場面があった。

 スコアレスのまま試合終了間際、カウンターから左サイドを駆け上がった深澤大輝のクロスから染野が決定機も左SBに下がった橘田がクリア。右サイドからのCKをファーでフリーの千田がヘディングシュートも防がれて終盤の怒涛も攻撃も実らずスコアレスドローで終えた。

まとめ

 お互いに順位を表すかのようにミスからのピンチやチャンスを決めきれずといった内容であった。ヴェルディは開幕から続いていた連続得点記録も失点記録も8で止まった。今季初のクリーンシートに一番喜んでいるのはGKマテウスだろう。川崎Fのチャンスに立ちはだかりセーブを魅せて昨季の完封王が復調してきた。ここから調子を上げて行ってくれることに期待したい。移籍後初の右SBでのスタメン起用になった翁長はスピードと球際に強さを見せてマルシーニョを封じ、キック精度でもチャンスメイクを担った。今季初出場&J1デビューとなった29歳千田は強靭なフィジカルを武器にエリソンに競り負けない強さで完封に貢献した。気迫をとても感じたファイターだ。メンバー違えどルヴァン杯と併せて2戦連続完封は選手層が徐々に厚くなっている証だろう。
 攻撃陣は前線からの守備、ロングボールへ身体張ったポストプレーや裏抜けと様々なタスクをこなしチャンスを作れた。あとは得点出来たら完璧だった。途中出場のチアゴアウベスもルヴァン杯から中2日であったがドリブル、仕掛け、クロスで持ち味は出せて及第点であっただろう。コンディションを上げて長い時間のプレーが見てみたい。これから始まるGW連戦は福岡、鳥栖、磐田と順位が近いクラブばかりとの対戦だ。プレー強度にも慣れてきた選手たちの奮闘に期待したい。