【雑感】2023年J2リーグ 第31節 対いわきFC~悔しいドロー決着~

東京ヴェルディ 0-0 いわきFC

 終わってみたら前回対戦同様にいわきのパワー、フィジカル、スピードを上回れなかった。むしろ押し込まれる時間帯の方が多かった。勝ちが必要だっただけに悔やまれる引き分けに終わった試合を振り返りたい。


スタメン

 前節・秋田に劇的な勝利を挙げて上位戦線に踏みとどまったヴェルディ。この日は左SHに北島がスタメン復帰し、それ以外は同じ10名。ベンチには特別指定の新井、今週に横浜FCからの加入が発表された長谷川が入った。
 一方のいわきは前節・甲府と1-1の引き分け。GK高木和はヴェルディからのレンタルのため契約上、出場不可で代わりに田中がJ2デビュー。主力CB家泉と遠藤が復帰し、左WBには河村が入る。

前半

 初顔合わせとなった前回対戦では0-0スコアレスドロー。屈強なフィジカルを武器に前へ前へガツガツくるいわきにヴェルディは押され、PKストップもありなんとか引き分けた試合であった。あれからのリターンマッチとなったがお互いの志向するサッカーは変わらず、変わったのはいわきのシステムとヴェルディが移籍によりメンバーを大幅に入れ替わったことだろうか。

 クラブ内でコロナ感染が再び起きていると報道もあったいわきだが、蓋を開けてみたらほぼベストメンバーであった。ここのところシステムを3バックや4バックを併用しているがこの日は3バックを採用し、13142を敷いた。

 ヴェルディのパスやクリアのキックモーションに対して躊躇なく頭から飛び込むいわき。これで獲得するFKに人数をかけて前線へ上がって遠い位置からでもゴールを奪いに行く。町田と秋田を足して2で割ったようなチームスタイルだろう。

 ボール非保持時1532からヴェルディへマンツーマン気味に果敢にプレスをかけるいわき。ホームの声援と、劣悪なピッチコンディションにも苦労し押されるヴェルディ。いわきが敵陣でプレーする時間が立ち上がりは続く。いわきのプレスをどう回避するという組み立ては無く、マテウスも使って最終ラインから大きなボールを入れることで陣地回復し敵陣でボールを収めてだんだんと盛り返し始めたヴェルディ。右は中原と宮原。左は北島、奈良輪、稲見の連携でサイド攻撃という場面が何度か続く。右の宮原は後ろからペナ角を突く縦パスを入れることでいわきの守備ラインを1列2列と割りチャンスを作る。ただ、中原は試合通じてなかなか仕掛けでの迫力や脅威を出せず縦への推進力を生むことが出来なかった。どうしても仙台戦の鮮烈なデビューが印象に残るだけに彼への期待は大きいが、セレッソであまり出場していなかったことなのか試合勘やコンディション面で不安を感じてしまう。

 左から北島が仕掛けるも周囲のフォローが遅く孤立したかのように数的不利になり思ったような攻撃とはならない。サイドを起点に攻め込む狙いは仕掛けだけでは無くて、ダイアゴナルに走る染野と齋藤を活かすような縦パスを数本入れる場面もあり、PA内へ侵入する工夫は前節からの改良であり最後の精度に欠けて決定機には至らなかったが良い動きは出来ていた。

 自分たちの時間帯に得点を奪えないと再び流れはいわきへ傾く。いわきが守備ラインを高く上げて盛り返すと、ヴェルディに大きなボールを蹴らせボール回収することに成功する。立ち上がりは手数をかけずにボール奪取した勢いそのままで攻めていたがここでは左CB宮本やアンカー・下田がボールを落ち着かせ一旦、マイボールとして陣形を整える。右WB谷村が大外に構えてフリーになりがちでここにロングボールが入り起点を作ることで全員が前を向いて走り再びヴェルディゴールへ迫る。有馬がポストになり、岩渕が裏へ抜ける縦関係の2トップが躍動しはじめると34分、ヴェルディのクリアミスから最後は有馬が渾身のシュートを放つもクロスバー直撃、そこを詰めるも枠外へ。前半の両チーム通じて最大の決定機だった。

 その直後、自陣でボール奪取した森田晃樹がスペースがあるやいなやそのまま持ち上がり相手をひきつけながらPA前まで運び、右サイドへ展開。しかしそのあとが上手く出来ず決定機にはならなかった。ここは晃樹が単独でシュートまで持って行ってもらいたいと強く思う場面であった。チームの主軸として臨む今季、守備、組み立て、中盤でのボールキープで貢献しているもののここまで未だ無得点。昇格を成し遂げるにはやはり彼の得点やアシストと数字が残り試合では必要不可欠だ。

 終盤はフィジカルコンタクトで笛が鳴り、荒れる場面が何度か見られたがお互いにスコアレスで前半を折り返す。

後半

 交代なしのヴェルディに対して、いわきは岩渕に代えて近藤を投入。7月の月間MVP岩渕であるが途中出場では得点量産もスタートからは苦労している状況だ。ギアを上げてきたいわきが前線からアグレッシブにプレスをかけ、主導権を握る。

 この状態にヴェルディは60分、齋藤と北島に代えて新井と長谷川を投入。そのまま新井は左SHに入り、注目の長谷川はトップに入った。新井はひと月ぶりのヴェルディでの活動であったが先月の輝きそのままに仕掛け、抜いてクロス供給、シュートと途中出場ながら誰よりもゴールへの意識が高いと感じさせるプレーを披露する。

 そのあと、加藤蓮が中原に代わって投入。右SHへ入る。町田戦のように左の新井からのクロスに飛び込むことを想定した配置だっただろうか。対するいわきも右WB谷村に代わって投入された加瀬が披露が見える奈良輪を翻弄しチャンスを作り追い込んでいくと、ヴェルディは加藤蓮を左SBへ回して綱島悠斗をDHに投入し稲見を加藤が居た右SHに回す。前線には前節ヒーローの佐川を投入して残り10分に賭ける。

 この日は終始、スローインやセットプレーとマイボールでのリスタートの雑さが目立つ。膠着状態のなかせっかくのチャンスでチグハグし相手にボールを渡し一気にピンチを招くことが何度もありゴール前でなんとかクリアというとても危なっかしいことが続いた。染野、加藤蓮が辛うじてのクリア、SB宮原が中へ絞って千田のフォローをする場面が何度も見られ個人戦術の高さを示した。
 後半終盤のCKもその精度に欠き、モノには出来ずにこのままタイムアップ。途中出場の長谷川は凸凹と滑りやすいこのピッチ状態でも卓越したボールテクニックを見せて存在感を示すもセットプレーのキッカーとしては最後まで北島を残しておくべきだったのだろうと悔やむばかりである。

まとめ

 状況を考えると絶対に勝たないといけない試合であった。組み立て、シュートへのアプローチは前節よりは良くなったようにも見えたが推進力、思いっきりの良さに欠け、終わってみたら枠内シュートはゼロ。得点を奪うにはシュートが必要であり、相手GKは初出場でもあり思いっきりのシュートをどんどん打って脅かすという頭はなかったのだろうか?
 夏の移籍期間でメンバーを入れ替えてJ1経験者を増やした。ピッチに立てる人数が変わる訳ではないからどう組み合わせるか監督の腕の見せ所である。2位3位の磐田と清水が勝利したことで勝点差が離され、勝ちつづけなけなければいけない状態になった。攻撃陣の奮起がすべてだ。