【雑感】2022年J2リーグ 第40節 対いわてグルージャ盛岡~受けて立つ、4連勝~

東京ヴェルディ 2-0 いわてグルージャ盛岡

 季節がひとつ先に行っており身体に堪える寒さのなか行われた一戦。シーズン最終盤で勝敗が昇降格に直結する緊張感漂うなか、岩手の出方を上手く捉えてしたたかに2得点を挙げて勝利した試合を振り返りたい。

スタメン

 前節・仙台に2-0で勝利して3連勝中のヴェルディ。この日は馬場晴也、森田晃樹、梶川の中盤3枚を入れ替える。システムは1442でスタート。
 対する盛岡は前節・山口と2-2の引き分け。残留に向けては残り3試合全勝するくらいの勝点が必要である。シャドー2枚を入れ替える。中野雅臣は念願の古巣との初対戦となった。システムは13421でスタート。

前半

 残留には勝利しなければ絶望的な状況となる岩手。先に失点だけはしないようにと守りを固めて後半勝負のようなメンバー構成である。WBが最終ラインまで下がって5バック化して1541を基本にするくらい後ろに重心を置く。前線のクリスティアーノはターゲットマン、中野はライン間でボールを受ける、奥山はスピード溢れる裏抜けと3人がそれぞれの役割を担う。

 開始早々、右サイドから中へ切れ込む中野が倒されて岩手がFKを獲得。キッカーは名手・中村太亮。左足で鋭いボールを入れると甲斐がヘディングシュートで合わせるもマテウスが掻き出す。早すぎるタイミングだったかもしれないが、岩手は先制点のチャンスを逃す。

 前節とDH2枚をそっくり入れ替えたヴェルディ。主軸に成長している森田晃樹はどうやら体調不良で欠場しただけで戦術的な理由ではなかったようだ。この日はその影響を感じさせない好プレーを魅せて存在感を示す。相棒の馬場晴也。もともとはCBであったがここ最近はDH起用が続き、フィットしてきている。この試合では前線でターゲットになる屈強なクリスティアーノ相手にCBンドカと上手く連携取りながら2人で空中戦を跳ね返しつづけて仕事をさせない。フィジカルコンタクトを厭わない晴也も守備面でしっかりとその役割を果たす。ボールを持つ時間が長く守備機会が少なかったヴェルディであるが、ンドカと谷口栄斗のCBはロングボールの跳ね返し、右SB奈良輪は奥山のケアを上手く見せる。奥山にPAまで運ばれることがあったが、大事なところでのブロックに入った。左SB加藤蓮はさほど守備機会が訪れなかった。

 クリスティアーノ中心に悪質なファールやアフターで行く場面が多く、かなり危険なプレーもあったが主審・佐藤誠和はいずれもノーカード。カードで取り締まらないためそのあとも危険なプレーは続き、審判はゲームコントロールを失ない、ヴェルディベンチからは城福監督中心に激昂することが何度もあった。前節の仙台戦の上村篤史に続き、審判のレベルの低さには呆れてしまうばかりで選手や監督スタッフが気の毒である。

 ボール非保持時に1541で構える岩手。1トップクリスティアーノがプレス緩く、2CBンドカと栄斗が余裕でボールを握る展開になる。右サイドはバスケスバイロンと奈良輪、左は加藤蓮と梶川と森田が大外とハーフスペースを重ならないように入れ替わり立ち位置を取る。5-4でブロックを固める岩手に対して森田と馬場はブロックの外側に立つことが目立ち、対面する和田と小松を誘き寄せて中央にスペースを作る狙いがあった。特に左からは森田、梶川に2トップ河村と染野が絡んで中央を崩しにかかりシュートまで持って行くも3CBの壁をこじ開けるまでには至らなかった。

 右からはバイロンの単独仕掛け、奈良輪との連携からのクロスとサイド仕掛けて行くも精度に欠き決定機には至らない。後方からのパスに染野がWBCB間を上手く抜け出してPA内深い位置まで行くも岩手の集中した守りもあり、得点にならず前半はお互いに決定機少なくスコアレスで折り返す。

後半

 ハーフタイム明け、両チームメンバー交代無しで後半を迎える。勝利が必要な岩手は後半キックオフからギアを上げて、前へ圧をかけて得点を奪いに行く姿勢を見せる。敵陣に入る人数が多くなることでピッチ上で間延びしてしまい、これがヴェルディにとっては好都合になる。

 中盤にスペースが生まれること、最終ラインの背後が空くことで前半よりも森田が高い位置を取ってCBDH間でボールを触り、SB加藤蓮の攻撃参加も増えていく。岩手の守備陣形が乱れてきたことでヴェルディが敵陣に押し込むことが出てきたが、不用意なミスから奥山にボールを奪われてロングカウンターからシュートまで持って行かれる。

 古巣対戦になった中野に代えてブレンネルを投入し奥山が右シャドーへ回る。ヴェルディはバイロンに代えて佐藤凌我を投入して河村を右SHへ。パワーへの対抗として加藤弘堅をDHに入れて森田を左SHへ回す。岩手は和田に代えて前回対戦で活躍を魅せた切り札中村充孝を投入。互いにメンバーとポジションを入れ替える。

 メンバー交代でバランスを崩したのは岩手だった。ここまで締めていた中盤守備であったが、身体を張ったプレーをみせていた和田が下がり交代出場した中村充孝の守備が緩く縦横のライン間が伸びてヴェルディの連動した攻撃を助成することになった。この点はこの試合の解説を務めた闘将・柱谷哲二も指摘していた。

 ゴール付近まで迫り、シュート回数が増えてきたヴェルディ。だんだんと得点の匂いがしてくる。すると、68分、右サイドを崩して佐藤凌我の縦パスに抜け出した奈良輪。ゴールラインギリギリで折り返すと最後は染野が流し込み先制に成功する。染野は2試合連続得点を挙げる。自分たちの形にあるつつあるハーフスペースの攻略がこの日も実り得点となる。

 難しい試合の中で先制したヴェルディが流れを掴む。攻撃のターンが続き、加藤蓮、加藤弘堅が左サイドから切れ込みシュートやクロスを見せて追加点を奪いにかかる。75分、左からのCKの流れでファーから河村が速いクロスを入れると中でフリーのンドカが合わせて2点目を挙げる。岩手の集中力が完全に切れてしまった。

 前回対戦ではここから追いつかれてしまったヴェルディ。フィジカル強い山越、阪野、稲見を立て続けに投入して最後まで高い集中力で2点差を守り切り東北シリーズ3戦全勝で4連勝を飾った。

まとめ

 相手の術中にハマり、苦戦した前半を過ごしたヴェルディ。こういった状況で崩し切ればさらに上のレベルへ行けるだろうがそう簡単なものではない。後半になり相手が前へ出てきたことでスペースが生まれて攻撃時に流動性が増し、流れを掴めた。自分たちの時間帯にハーフスペースの攻略とセットプレーと持ち味が出せたのは良い成功体験だ。ロングボールのターゲット、ライン間でボールを受けること、得点と染野がチームにフィットして日に日に存在感を増している。あと2試合でもその活躍を期待したいところだ。
 残留には勝つしかない岩手は攻撃に出る時間帯が早すぎた印象だ。勝点3が必須であればもう少し守備に徹底してゼロの時間を長くして残り数分にかけても良かっただろう。次節の残留争い直接対決・群馬戦がしびれる一戦になる。
 新潟、岡山と前回対戦では歯が立たなかった相手に勢いを持って臨み、どんな戦いになるか楽しみにしたい。