【雑感】2021年J2リーグ 第39節 対ツエーゲン金沢~サイド制圧、雪辱を晴らす大勝劇~

東京ヴェルディ 4-0 ツエーゲン金沢

 前回対戦時に2-4で大敗した相手に勝利したい一戦で上出来すぎる4-0の大勝となった。両サイドでの質的優位が遺憾なく発揮された裏にあった設計を紐解きながら試合を振り返ってみたい。

スタメン

 前節・長崎に0-3で大敗したヴェルディは山本理仁が出場停止。DHには加藤弘堅が復帰。前線は新井が今季初スタメン、山下も復帰する。怪我で長期離脱していた奈良輪が5月以来のベンチ入りを果たす。
 対する金沢は前節・琉球に1-2で敗戦。J2残留を早めに決定したく勝ち点3が欲しい状況である。GKに後藤、右SHに嶋田が復帰。システムはお馴染みの1442で臨む。

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前半

 金沢はボール非保持時に4-4のブロックを作り、2トップ丹羽と大谷が縦関係になってCBへのプレスとDH加藤のケアを行なう。ボール奪取するとショートパスを使うというよりも従来のロングボールを多用するサッカーをこの日も選択。丹羽やスピードある大谷が裏を取ることが多く、最終ラインの背後や攻撃参加して選手の空いたスペースへ走りこむ。立ち上がりから躊躇なく、ロングボールを蹴るとPA内まで攻め込む場面が何度があった。10分には飛び出した丹羽がマテウスとの1対1を迎えたが決めることが出来なかった。19分にはショートカウンターから左を攻略してクロスに大谷が合わすも枠を捉えることが出来なかった。

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 対するヴェルディは両翼の山下と新井がタッチラインぎりぎりまで目一杯開き、幅を取ることで深さを出していく。左サイドに張った新井がボールを収めると、3人ほど引き付けるとフリーの梶川へ折り返し、梶川が勢いよくミドルシュートを打っていき、こちらも開始早々から狙いが出てくる。金沢の守備ラインが深い位置まで下げられると、中盤の選手たちも吸収されてしまうためバイタルエリアががら空きになってしまっていた。

 梶川と森田晃樹に対して金沢2DH藤村と大橋がマークにつき、2人が開くとくっつくように開いていく様子から人につく守備をすることから佐藤凌我が間に下りてきて組み立てに参加し始める。ボールサイドで敢えて密集を作ることで金沢の選手たちも引き寄せる。右サイドで起点を作ると左サイドでフリーになっている新井へ展開。左サイドでは低い位置で福村とンドカがマークと目線を集めて、右の山下へ大きく展開する。この日は右の山下も左の新井も対面する渡邊と松田とのマッチアップに勝つことが多くこれが最終的に結果に直結することになった。

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 サイドで1対1の状況を多く作り出すことでヴェルディが試合を優位に進めていく。すると、20分、ンドカから右の山下へロングフィード。山下の仕掛けからクロスはファーの新井へ。2人を喰いつかせて攻めあがった福村に繋ぐとクロス、このクロスのこぼれ球を最後はフリーの梶川がミドルシュートを決めてヴェルディが先制する。立ち上がりから発揮されていた要素が上手く融合して先制点を挙げた。

 金沢は立ち上がりのようにロングボールを蹴りこむことも減ってきた。先制点を奪ったことでの精神的な余裕もありヴェルディがボールを持ち始める。トップの凌我が中盤へ下りてくることを少なくして、逆に加藤が最終ラインに吸収されることなく立ち位置を前に取ることで重心を高く保ち主導権を握り続ける。

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 32分、ヴェルディのCKからマイボールにした金沢。自陣での持ち運ぼうとしたところに凌我が猛烈にプレスバックして横パスを選択させる。ボールを持った松田がコントロールミスしたところを新井がカットするとそのまま左サイドを持ち上がり、クロスに凌我が合わせて2点目を挙げる。

 梶川、晃樹、加藤の中盤が自由にボールを持てることでその後の攻勢をしたまま2点リードで前半を折り返す。

後半

 ハーフタイムを挟んでも依然として主導権はヴェルディだった。後半になっても金沢はサイドの守備対策が無く、左サイドの新井はドリブルで金沢守備陣を翻弄して2人3人と交わしていきゴールへ迫っていく。
 53分、ピッチ中央でフリーでボールを持った加藤が左サイドでドフリーの新井へ鋭いパス。新井がPA内へ入っていくと駆け上がった福村の中へクロス、このこぼれ球をまたしても梶川が決めて3点目。

 3点リードと言うこともあり前半に相手選手の強烈なシュートを顔面に受けた若狭が大事を取って交代。馬場晴也がそのまま右CBへ入る。金沢は杉浦、長峰、大石の3枚替えに出るが、流れを変えることは出来ずヴェルディが圧倒的にボールを握る。63分、自陣でボールを繋ぐと深澤大輝が攻撃参加して大外レーンを上がっていくと、インナーラップした山下へパス。抜け出した山下がPA内へ侵入していくと最後は凌我が合わせて4点目。

 大差がついたことでヴェルディも相手選手と交錯した加藤弘堅、お役御免の佐藤凌我、新井とこの日活躍したメンバーを変えて試合をクローズに持って行き、その後はスコア動かずにこのまま終了。

まとめ

 勝機はあると踏んでいたが予想以上の複数得点にクリーンシートとかなり驚きがある。その最大の要因は今季初スタメンを果たした新井の活躍ぶりだった。堀体制になってから途中出場で短い時間ながらも存在感を示す好調ぶりを維持しており満を持しての起用であった。監督の期待に応えるように開始早々から持ち味を存分に発揮してMOM級の働きを見せた。J3富山から移籍して2年が経つが、J2の強度にも慣れてきてようやく自分の色が出るようになってきた。右サイドで久しぶりにスタメン起用された山下も新井の陰に隠れてしまったが十分に存在感があった。そして、佐藤凌我もこの日2ゴールで大卒ルーキーながら二桁得点に乗せた。
 この前線の3人を支えたのが梶川と加藤であった。梶川はタイミングよく攻撃参加して2得点。PA付近まで攻めあがっていくことに大きな意味があった。また、加藤はビルドアップ時の立ち位置が絶妙であった。ボールホルダーに近づず相手選手から離れた場所に構えることで自由にボールを扱えて「これぞ加藤弘堅」という立ち振る舞いを久しぶりに観れた。
 戦い方を変えた甲府戦以降、安定した戦いが続いている。ここのところホームで未勝利が続いているだけに次節・琉球戦には期待したい。