【雑感】2022年J2リーグ 第21節 対いわてグルージャ盛岡~高すぎる授業料~

東京ヴェルディ 2-2 岩手グルージャ盛岡

 待ちに待った声出し応援解禁の日、どうしても勝たなければいけない試合だった。残り5分で2点差、わずか5分を逃げ切れずに引き分け。試合後に退任した堀監督で最後になった一戦を振り返ってみたい。

スタメン

 ヴェルディは前節・横浜FC戦と1-1の引き分け。この日は同じ11名で臨む。マテウスが今季初めてベンチ入りを果たす。引き続き馬場と山本はU23日本代表、アルハンはインドネシア代表招集のため不在。
 一方の岩手は前節・甲府に勝利してホーム初白星を挙げる。そこから5名入れ替えてフレッシュなメンバーを多く居れた。今季ここまでターンオーバーを使うことが目立っている。味スタ凱旋が期待されたアカデミー卒の中野は残念ながらベンチ外になった。

前半

 立ち上がり、ヴェルディの細かなパスワークと個の力に岩手が手こずるような試合の入りになる。1541で守る岩手であるが中盤底に入る加藤弘堅へ誰がマークにつくのかが曖昧になり自由にボールの出し入れを許してしまったこと、右SH化したオタボーのプレス、プレスバックの緩さがこの状況を生んでしまっただろう。ヴェルディは最終ラインから組み立てて上手くスペースを作ると、左サイドで奈良輪・井出・杉本竜士の3枚が連携を見せて崩しにかかる。左で時間を作り、右の小池と深澤大輝が攻め込む形が出来ていた。

 開始10分くらいを過ぎる、岩手はボールを失っても帰陣早くブロック形成して、その位置もかなり低い位置で固める。最終ライン5バックの岩手に5トップのように数的同数になるヴェルディであったが中央3CBを崩せずに縦パスを入れて相手の出方を伺っていくと右CB蓮川が井出に喰いつく動きを見せて持ち場を離れることが増えて、ここを狙うように右WB宮市も誘き寄せて左からの崩しがより顕著になる。竜士の緩急付けたドリブルには手を焼く場面が目立った。

 主導権を握ったヴェルディが先制点を挙げる。左サイドからの杉本竜士のクロス。端戸の落としから梶川のシュートがDFに当たり空中に上がったボールを深澤が競り勝ち中へ入れると蓮川に当たってオウンゴールの形になった。声出し応援が解禁されたヴェルディサポーターの歓声が味の素スタジアムに戻ってきた。
 その直後にも左からの竜士の仕掛けに最後は井出がPA内で強烈なシュートを放つも松山に防がれる。

 一方の岩手の攻撃は、ボール保持時に高い位置を取るWB宮市が対面する奈良輪とのフィジカルの差を活かしたプレーからチャンスがあった。左からのクロスに思いっきりよくヘディングシュートを放つも長沢がセーブ。

 前半30分くらいまではヴェルディの小刻みなパスワークが見事に決まり圧倒的にボールを握る展開になる。
 しかし、1点ビハインドになった岩手が再びプレスを強くし始めて全体的に押し上げる。端戸などへの縦パスに対しての強い当たりでボールを奪い、奪った後もシンプルにオダボー、モレラトらが前線に運び陣地を押し込んで行く。WB宮市、南、さらにはCB蓮川と後方の選手たちもどんどん攻め上がり人数をかけた厚みのある攻撃でPA内へ入る回数が増えて行く。熊本や甲府戦同様に3バックのCBの攻撃参加を捕まえ切れない守備が続く。ただ、岩手のフィニッシュの精度に欠けたこともあり前半はヴェルディが1点リードで折り返す。

後半

 ハーフタイムに岩手は守備で難があるプレーから狙われていたオタボーに代えて奥山を投入する。対するヴェルディは端戸、杉本竜士に代えて佐藤凌我、新井を投入する。前半の出来は得点こそ取れなかったが良い動きをしていたようにも見えただけあって交代が少し早いような気がした。

 岩手はボール非保持時に1トップ2SHに最終ラインのWBも連動してプレスをかけ前がかりな守備をして同点、逆転を目指す意気込みが感じられるプレーが立ち上がりから見られた。

 負けじとヴェルディは左サイドに起用された新井が持ち前の仕掛けからチャンスを作り獲得したCKの流れで佐藤凌我が強烈なシュートを放つが松山がセーブ。55分には自陣からのカウンターを井出が持ち運び右サイドを上がってきた梶川に展開。梶川のクロスを小池がダイレクトシュートもこれまた松山が立ちはだかる。

 岩手はシャドーの奥山と色摩はヴェルディのSBをピン留めすることで大外を空けて、後半から左右入れ替えた宮市と南の両WB、CB田平や蓮川も絡んだサイド攻撃から崩すことが増えてきてゴールの匂いが漂い始める。この流れのなかでビスマルク、中村、和田を投入。ヴェルディは石浦大雅を投入して梶川が中盤底に落ちる。ゲームコントロールに長けて、中盤でのフィジカルと存在感ある加藤弘堅を下げて小柄な石浦大雅を入れたことは守備を捨てて追加点を取りに行くという意思表示だったのだろうか。

 60分には右サイドのCKからの流れで奥山のヘディングシュートがポスト直撃。一方のヴェルディは左からの新井のパスを石浦大雅が華麗な身のこなしから思いっきりシュートを打つもまたも松山がセーブ。GKが当たり始め、次第に重苦しい雰囲気になる味の素スタジアムであったが、次の1点は再びホームチームが手にすることになる。

 自陣からのカウンター、梶川が運ぶと新井に展開。新井は右サイドを上がってきた深澤大輝へ繋ぐ。大輝は思いっきりよく右足を振りぬき追加点を挙げる。

 押される時間が長くなっていたヴェルディにとっては願っても無い追加点だ。石浦大雅投入で2点目が取れ、ここまでは結果オーライのヴェルディ。

 しかし、そのあとも岩手の反撃を受けるとまたもCKから牟田のシュートはポスト直撃。加藤弘堅が下がり高さも無くなったことで空中戦で競り負けることが続き先行き不安になる。

 2点ビハインドの岩手だが継続してサイド攻撃とセットプレーで襲い掛かる。高さを補うようにSB奈良輪に代えて谷口栄斗が投入。栄斗は左SBCBのような立ち位置を取り、深澤が少し高い位置を取ったことで横幅を曖昧な形で守ってしまったことが岩手に有利に働く。中村、和田らがンドカと深澤のスペースを突くことが増えてきた。1列前にいる新井や小池の帰陣も遅れ、かなり苦しい状態になった。

 すると、85分、自陣で深澤のパスミスを拾った中村から走り抜けた和田へ縦パス。和田が上手くシュートを決めて1点返す。これで分からなくなる。ヒーローになるはずの深澤大輝は失点に絡む致命的なミスを犯す。これを糧に次節から巻き返せるかは本人次第になってくるだろう。

 勢いは完全に岩手にあった。右からのクロスがファーへ流れ、フリーになっていた中村が豪快にシュートを叩き込みあっという間に同点に追いつく。

 ヴェルディは懸念された空中戦で見事なまでに負けて2点リードを守り切ることが出来なかった。逆転されてもおかしくない雰囲気、なんとか耐え凌ぎ2-2でタイムアップ。終了の笛と同時にスタンドからはブーイングが鳴り響いた。

まとめ

 残り5分でも守り切れないのかともはや力も抜けてしまうほどに呆れてしまった。自陣でのミスからの失点、クロスからの失点とここまでのヴェルディの失点を象徴するような場面の連続になった。シーズンも折り返しに差し掛かるのに何度同じことを繰り返したら気が済むのか、選手たちは日頃から何をしているんだというくらいレベルの低いプレーばかりだ。降格の足音がハッキリと聞こえてきた。
 一方の岩手は見ていてもちょっと気の毒に思えるくらい判定に泣くこともあるなかでビハインドでもしっかりとプラン遂行して勝点を持ち帰れたことはお見事であった。J3からの昇格で実績の浅い選手ばかりであるがこの試合でのプレーぶりを見るとポテンシャル溢れる将来が楽しみな逸材が多いように思えた。
 この日は2020年開幕戦以来の声出し応援だったがに声援がやはりスポーツ観戦の醍醐味であることを改めて感じさせるものであった。それだけに勝利のラインダンスをしたかった。
 試合翌日に7戦未勝利の堀監督は退任され、城福新監督の就任が発表された。次節より新体制で臨むことになる。