【雑感】2021年J2リーグ 第41節 対ブラウブリッツ秋田~冬の秋田決戦、シーズンダブル達成~

東京ヴェルディ 4-1 ブラウブリッツ秋田

 季節が進み冬の匂いがする東北の地・秋田での一戦。ヴェルディにとっては初めて戦う会場であり、初物を苦手とするだけに若干の不安はあったものの早い時間に先制し追加点、ダメ押しと終わってみたら快勝で秋田にシーズンダブル。相手の特徴を上手くとらえた前半の攻撃と後半に停滞気味になった理由を試合を通して考えていきたい。

スタメン

 前節・琉球に何とか追いついて1-1で引き分けたヴェルディ。全試合出場していた若狭が負傷の影響もあり外れて、馬場晴也を起用。中盤には山本理仁、前線には小池が復帰。システムは中盤トライアングルの14123でスタート。
 対する秋田。前節・甲府に0-2で敗戦。右SB藤山、DH江口に入れ替えて臨む。システムはお馴染みの1442で臨む。

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前半

 ボールが行ったり来たりして、空中を飛び交う。開始3分間で何回ヘディングする場面が見られたんだというくらいに蹴ってはヘディングで返してそれをまたヘディングしてという展開で試合が始まる。長い芝、凸凹で劣悪なピッチコンデションのグラウンドを活かすように秋田はロングボール多用するサッカーを厭わない。この特徴的なサッカーを1年間続けていることもありシーズン最終盤に対戦したヴェルディは対応に関しては織り込み済みであり、最前線の佐藤凌我が最終ラインのみならずGK新井にまでプレッシャーをかけていきコースをパスコースを限定させる。中盤の選手たちは連動してプレスよりもその場を離れずにロングボールのクリアや頭を通り越してCBンドカと晴也がクリアした際にはセカンドボールの回収役に徹していた。序盤、梶川が何度もヘディングクリアする珍しい光景も見られた。

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 この日のヴェルディは秋田のサッカーの反動活かして攻撃に転じていたように感じ取れた。秋田はロングボールを蹴りこむことに加えてボールサイドに人数をかけて狭い範囲でボールを進めて行きクロスから仕留める傾向が強い。特に右サイドからの攻撃が多く、ヴェルディが攻撃に転じた際は自陣左に人数が集まっていたから素早くスペースが空いている右へ送る。深澤大輝や森田晃樹、小池がボールを受けて前へ仕掛けていく。しかし、人数が揃い切れていないこととピッチコンディションからボールコントロールに苦しみ、カウンターがいまいち発揮出来ていなかった。

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 速いテンポで試合を進めたい秋田に対してお付き合いするのではなくてGKマテウスも絡めてパスを回していくことで試合を落ち着かせて徐々にヴェルディがペースを握ることに成功した。狭い範囲に人を集めて1人あたりのスペースを限定することで攻守を支配したい秋田に対して前半戦の戦い同様にピッチを広く使うことで秋田の選手たちの距離感を広げさせた。最終ラインは4枚のままもしくはボールと反対のSBのみ片側上げでビルドアップ対応。この時も偽SBの動きで中へ絞ると相手を密集させることになるから基本的には縦方向に動く。
 また、ワイドの選手が大きく張ることで中盤と最終ラインを広げて梶川や晃樹がライン間でボールを受けてキープしたり散らす事でリズムを作る。または凌我が空いたスペースに下りてポストプレーをして溜めを作る。マイボールになって自陣から速い攻撃をするよりも一旦、テンポを落とした方がヴェルディにとっては攻撃のリズムがつかめていた。

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 すると、14分左サイドからのヴェルディのCK。キッカー梶川はサインプレーでPA外の晃樹へパスを入れるとダイレクトシュート。こぼれ球を晴也がシュート、GK新井が弾いたところを凌我が再びシュートを放ちこれがポストに当たりながらネットを揺らしてヴェルディが先制する。自分たちの時間帯に幸先よく先制することが出来た。

 直後にアクシデントに見舞われる。秋田の攻撃でPA内で強烈なシュートをマテウスが顔面に受ける。ここで大事を取ってマテウスは交代し、長沢が41節にしてついにヴェルディデビューを飾る。

 その後、1点リードしたヴェルディが優位に試合を進めていくが秋田もシンプルな戦いを継続。加えて球際も厳しくなり、ヴェルディの選手たちのユニフォームも土がたくさんついてきてその激しさを物語っていた。

 小池と新井、梶川と晃樹が流動的に左右を入れ替えるなどして相手の守備基準を絞らせないようにして追加点を目指していくと35分、右サイドに回った新井が相手選手に一度はボールを奪われるも再び奪い返して持ち運んでいく。PA内に侵入して横パスに最後は小池が詰めて追加点を挙げる。

 このままのリードで進むと思われた40分、秋田が左サイドからのFK。キッカーの江口が入れたボールはニアサイドからそのまま吸い込まれて1点を返す。急遽、出場した長沢は失点こそ喫したもののそれ以外では落ち着いたプレーを披露して及第点と言った出来だろうか。

後半

 1点差になったことで秋田が再びエネルギーをつけて前線からプレスをかけていく。これに対してヴェルディは4バック+理仁の5枚が上手く連携して剥がしていく。人数をかけてくる秋田のプレスを回避することで前線ではフリーの選手も多くなる。右サイドからは小池が左からは新井がクロスを入れるも中の枚数が揃わずにはじき返される。晃樹、理仁が前を向いてフリーでボールを持て、そこに攻撃参加する左SB福村も絡む。梶川は何度もハーフスペースを駆け上がり裏抜けでボールを呼ぶ。秋田陣地へ多くの選手が入っていくも逆に多く入り過ぎてボールよりも前に敵味方と選手が多すぎてスペースを失いシュートまで持って行くことが出来ず時計の針ばかりが進む。前節琉球戦でもこのような状況に陥る時間帯があり、強弱のつけ方が課題になっているのかもしれない。

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 停滞するなか、次々にメンバー交代を行なう秋田。一方のヴェルディはスピードが持ち味の山下を新井に変えて投入。再び勢いをつける狙いがあっただろう。スコア動かず試合も終わりかけた88分、PA内へ攻め込んだヴェルディ、ルーズボールから秋田のクリアミスがそのままゴールインして3点目。退屈さが出てきた1点差から2点差になりこれで勝負あり。〆は敵陣高い位置で秋田のミスからボールカットして山下がドリブル仕掛けて個人技からシュートを決めて4点目。終わってみたら4-1と快勝で締めくくった。

まとめ

 GKマテウスのアクシデントがあったもののその後も追加点を奪い、常にリードする展開での試合運びが出来たことがとてもよかった。狭いスペースを好む秋田の土俵に乗らずに広さを作ってから狭い局面を作ることがヴェルディの対応がよく前半は何度もゴールへ迫ることが出来た。後半は前がかりすぎて自らスペースに蓋をしてしまったようにも感じ、遠い位置からのシュートなど思い切ったプレーで変化をつけても面白かった。
 スタメン出場した馬場晴也、守備でだいぶ落ち着いてプレー出来ているようにも見え、攻撃時には決定機もありせっかくのプロ初ゴールは次回にお預けだ。前線では先制点を挙げた佐藤凌我の攻守での活躍ぶりが光る。シュートチャンスを確実にモノにして今季12点目。守備時にはGKまで何度もプレスをかけに行き、90分間走り回り底知らぬ運動量を魅せた。評価はうなぎ上りだろう。次節はいよいよ今季最終戦だ。どんなメンバーが出場するのかいろいろな意味を持った試合になることだろう。