【雑感】2021年J2リーグ 第42節 対SC相模原~新たな時代の予感漂う~

東京ヴェルディ 3-0 SC相模原

 相模原の残留がかかった大一番であったが、ここ数試合の良い流れを継続出来たヴェルディが終わってみれば快勝した。試合中に相模原が何度か戦い方を変えて変化をつけてくるも上手くいなして掴み取った勝利を振り返りたい。

スタメン

 前節・秋田に4-1で快勝したヴェルディ。契約満了が発表された柴崎と福村がスタメン起用され、ベンチには同じく富澤が入った。基本メンバーは前節同様で14123で臨む。
 対する相模原は前節・松本に痛恨の引き分けでJ2残留にはこの試合に勝利が絶対条件になる。攻撃を牽引する松橋優安がヴェルディからのレンタル移籍のため契約上出場不可。

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前半

 勝利が絶対条件の相模原の出方が気になる立ち上がりであったが、慎重な入りを見せてヴェルディがボールを握る時間帯が長くなる。基本的には4バック+山本理仁でビルドアップするヴェルディに対して相模原は1541で構え、1トップ平松の横にDH川上が縦スライドで横並びになり2CBに数的同数でプレスをかける。2SBに対しては2SHが対応するも中盤4枚の位置が下がり過ぎているような気もしてそのプレスかけに行く距離が長くなっていた。これがヴェルディにとっては好都合で、2SBは余裕をもってボールを受けてサイド攻撃を構築することは勿論、DH川上の縦スライドで空いたスペースで森田晃樹がフリーでボールを貰い攻撃のタクトを振るう。その影には小池と新井が対面するWBをピン留めしていたことも大きかった。

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 この嚙み合わせによって立ち上がりからヴェルディがボールを握る時間帯が圧倒的に多く、相模原ゴールを脅かす場面が続きいつ得点が入ってもおかしくない展開であった。しかし、シュート精度に欠いたこととバイタルエリアではボールを持てたものの相模原がバスを並べたかのようにゴール前に守備陣を固めたことで最後の部分で踏ん張りを見せる。

 ただ、それも時間の問題だった。右サイドからのCKの二次攻撃からセカンドボール回収した大輝がピッチ中央で新井に横パス。新井は縦に仕掛けながら右足を思いっきり振りぬき強烈なシュートを叩き込みヴェルディが先制する。今季初得点を挙げた新井であるが、古巣対戦と言うこともありゴールセレブレーションは無く、自身の得点を静かに受け入れた。

 そのあともヴェルディの攻勢が続く。対する相模原はボールを握ると2DH川上と成岡が縦関係になり、片方が3バックと並び4-1を作り、高い位置を取る2WBを絡めたサイド攻撃をする。それでも攻撃回数は少なく、残留に向けて苦しい状況が続く。

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 前半の飲水タイム明けから相模原が変化をつける。ここまではヴェルディがボール保持すると、相模原は5バックをリトリートさせていたが、2SHの片割れが1トップの横並びになりWBが対面するヴェルディSBまで縦スライドでプレスをかけるなどハイプレスを仕掛けていく。これによりヴェルディのパス回しが乱れ始めて相模原がだんだんとリズムを作り主導権を握る。

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 DHが最終ラインに下がり過ぎず藤本を含めて中盤トライアングル形成して1334システムへ可変する相模原。中央で一旦、時間を作りサイドに展開して人数をかけた分厚い攻撃を仕掛けていく。

 41分には藤本が左の夛田へ展開。再び中央の藤本へパスが繋がりフリーでシュートを放つも枠外へ。44分にはセットプレーから二次攻撃から鎌田がゴールネットを揺らすもオフサイドの判定でノーゴール。立ち上がりの自分たちの時間に得点を挙げたヴェルディが1点リードで前半を折り返す。

後半

 J2残留には勝利が必要な相模原は藤本と中山に変えて児玉駿斗と安藤を投入してシャドーを入れ替える。1トップ平松の背後でプレーする2人は前半の藤本と中山に比べてライン間でボールを貰うことに優れ、自らも仕掛けて行くタイプである。すると、いきなり相模原にチャンスが訪れる。左サイドを崩してクロスに右WB石田がPA内でシュート、DFに当たって浮き球になったところを平松が押し込むもその前にオフサイド判定でまたしてもノーゴールに。ただ、前半途中からの良い流れを持続して後半に入った相模原であった。劣勢になるヴェルディは低い位置を強いられることで全体が重くなり、選手たちもリズムを作り出そうと足元で受けたがる場面が増えて、これが逆効果になり、前節に続きボールの前に選手が多く居る状況になり守備者である相模原の選手たちの目線は楽になってきた。

 この状況を変えるべく、ヴェルディは先制点を挙げた新井に変えて山下を投入する。山下はそのまま左サイドに入ると持ち前のスピードを活かして相模原の最終ラインの背後を取る動きを見せてロングボールを入れる変化が出てきた。

 途中出場してからわずか5分経ったくらいの60分すぎ、福村からのロングボールに山下と佐藤凌我が走り出す。凌我が頭で合わせて山下がすぐさま折り返すと凌我が流れるように右足を振りぬきゴールネットを揺らして待望の追加点を挙げる。

 2点差になったことでヴェルディが完全にエネルギーを取り戻した。特に中盤の晃樹のプレーぶりが秀逸で相手の寄せをさらりとかわすトラップ、視野の広いゲームメイクでボールを前進させる大きな役割を担った。

 飲水タイム明け、相模原は鎌田に変えて梅井を投入。最終ラインを4バックにして前線を2トップにした。対するヴェルディは小池に変えて杉本竜士、馬場晴也に変えて今季限りで契約満了が発表された富澤清太郎を投入。流れは依然としてヴェルディに。晃樹と梶川を中心にボールを左右に前後に揺さぶり相模原ゴールへ迫ると77分に追加点が生まれる。PA内に侵入して連続シュートのこぼれ球を最後は攻撃参加していた深澤大輝が流し込みプロ初ゴールでリードを3点差に広げる。

 これで完全に勝負あった。その後、追加点を挙げることはなくスコア動かず3-0の快勝でヴェルディが最終戦を勝利で飾った。ヴェルディでの最終戦になった柴崎は見事に完封勝利に貢献。良い試合もしながらもわずかな技術的なミスが重なりじわりじわりと点差が開いた試合になり、相模原はこの1時間後に終わったJ3の結果を受けて、J2昇格からわずか1年でJ3へ降格となった。

まとめ

 契約上出場不可になっていた松橋優安の不在を感じさせる相模原の出来になってしまったように思えた試合であった。ただ、これははじめから判っていたことであってその前の試合までの積み重ねが最終的な結果に繋がったのだろう。
  対してヴェルディは前節の大勝した良い勢いを継続してこの日も大量得点を挙げることが出来た。柴崎、富澤と栄光も苦しい時代も知るベテランが去り、新しい時代への突入を感じさせる編成を思わせる。シーズン終盤戦に活躍を魅せた緑の若武者たちに夢を託して新シーズンが幕開けすることを願いたい。