【雑感】2023年J2リーグ 第5節 対藤枝MYFC~勝負を分けたクロスの質~

東京ヴェルディ 5-0 藤枝MYFC

 開始早々のファーストシュートを見事に決めて、勢い持ってプレー出来てそのあとも立て続けにゴールを重ねて終わってみたら5得点の圧勝。サイドからのクロスボール、敵陣でボール奪取からのショートカウンターで藤枝を圧倒した試合を振り返りたい。

スタメン

 前節・徳島に2-0で勝利したヴェルディ。この日は阪野と前節で途中出場から得点を挙げた梶川の2名を入れ替えて1433で臨む。ベンチには加藤蓮と北島が復帰した。
 一方の藤枝は前節・甲府に1-2で敗れて2連敗中。CB金浦とトップに矢村とこちらも2名を入れ替えて13421で臨む。10番横山にとってはアカデミー時代を過ごした古巣との対戦になる。

前半

 公式戦では初顔合わせとなった対戦カード。プレシーズンでは練習試合が組まれて対戦しており、お互いに相手のサッカーを体感しているようだった。初めての藤枝での試合ということもありヴェルディサポーターも大挙して訪れ、ビジターゴール裏は完売、メインスタンドもほぼ埋まりホームのような雰囲気での試合になった。

 J2へ初昇格し、今季からこのカテゴリーで戦う藤枝はとにかく攻撃サッカーである。ボールを握るとGK上田もPA外へ出て3CBとともにビルドアップを行ない、両WBは高い位置を取る。時折、CBの一角が一列あがりひし形を形成することもあったが、ボール保持時は1325となる。ボール保持して最終ラインで繋ぎ、選手たちを片方のサイドに寄せるとロングフィードでサイドチェンジしてスペースをもらったサイドの選手が仕掛けて行く仕組みだ。

 そんな設計があるが、いきなりポカで出てしまった。ボール非保持時に阪野と齋藤の2トップで1442でブロックからプレスをかけるヴェルディは開始1分、金浦がボールを持ちバックパスをしようとした瞬間に齋藤が上手くボール奪取してそのまま持ち運ぶ。PA内で巧みな切り返しで帰陣した相手選手と上田の体勢を崩すと後方から走り込んできた阪野へプレゼントパス。これを右足で流し込みわずか1分で先制する。

 ファーストシュートで幸先よく先制したヴェルディが精神的な余裕もありこのあとも畳み掛ける。攻撃人数をかけて前がかりな藤枝は2DH新井と水野の前にスペースがあるためそこで林、齋藤、森田晃樹が上手くボールを貰い前進出来た。これまでの試合よりも中盤3枚がボールを散らす、前進すると関与する機会が多く分厚い攻撃になっていた。WB榎本と久保の帰陣も遅く、CBの横のスペースが空きがちになり中央からサイドへ素早く展開する場面がよく見られた。立ち上がりは右のバスケスバイロンを走らせて深さを取らせて早いタイミングでクロスを上げる。最終ラインも空中戦があまり強くなく阪野がポストプレーでボールがよく収まり、クロスの競り合いにも勝っていた。

 ボールを奪うと素早くサイドへ展開してクロスボールという攻撃でリズムを作る。追加点もあっという間だった。13分、セットプレーからの二次攻撃三次攻撃で右で阪野が起点を作るとそのままクロスを入れ、PA内で梶川が頭で合わせてゴールネットを揺らす。3点目もすぐさまだった。ピッチ中央から林が右へ展開するとスプリントしたバイロンが右足でクロスを供給して阪野がタイミングよくヘディングシュートを決める。林は左右に散らし、前方への速いパス、積極的なミドルシュートと試合に出るたびに果敢な姿勢が大きくなっていく。阪野も期待に応える2得点の活躍。大怪我からの復活で大暴れを予感させるパフォーマンスであった。

 出鼻をくじかれたどころか会場の雰囲気にも飲み込まれてまさかの3失点を喫した藤枝。古巣との試合になった横山が前節の徳島・西谷のように左ハーフスペース~大外でボールを貰いドリブル、カットインシュートと見せ場を作るも得点には至らず。WBの攻め上がりを使うもヴェルディのようにクロスを高いボールを入れるのではなくて深く抉ってグラウンダーの折り返しのパターンが多く中を固めるヴェルディ守備陣を前に崩し切るまでは出来ず大差で45分を終える。あまり高さが無いため守っている方は楽だったかもしれない。

後半

 3点ビハインドの藤枝は山原、岩渕、渡邉を投入して3枚替え。そのままのポジションに入る。一方のヴェルディも森田晃樹、バスケスバイロンに代えて加藤蓮と河村を入れて梶川がボランチに回り蓮が左サイドになる。

 攻めるしかない藤枝はボール保持時に右CB小笠原が1列上がるように右サイドに張りWB久保を押し上げる。最終ラインは2CB化。DH岩渕もワンタッチでボールを叩くシンプルなプレーでリズムを作ると久保の仕掛けが目立ち始める。対面する深澤大輝とのマッチアップから深く入りPA内へ侵入して味方選手たちも多く入り込む「らしさ」のある攻撃を魅せる。

 後半開始から10分15分は藤枝が主導権を握る反撃をし続ける。右から久保が抉ると最後は杉田がシュートを放つもマテウスの好守という場面もあり1点入るとそのまま行くのでは?ともうっすらと漂い始めた矢先またも藤枝にミスが出る。自陣でボールを繋ごうとするとパスが中途半端になり、何度もボールカットをしていた”決意の丸坊主”齋藤が再びボールカットするとそのまま持ち上がり今度は自らがしっかりと沈めて4点目を挙げる。移籍後初ゴールとなった。

 主導権握った時に勿体なくミスでまたも自滅してしまった藤枝。やりたこことはわかるが技量と守備設計がついてきていない感じがする。このサッカーをシーズン通して続けるとなればかなりの覚悟が必要だろう。

 4点目を決めたヴェルディのプレッシングの圧が盛り返していく。これで完全に流れを掴むと藤枝へプレス、プレスバックでボール奪取してショートカウンター。前がかりの藤枝の広大に空いた背後へ縦パスを入れて走らせてシュートとやりたい放題になる。

 74分、途中出場の北島がサイド攻撃からのこぼれ球を林から丁寧に繋がれ、鮮やかなループシュートを決めて5点目を挙げる。こちらも移籍後初得点であり、J初得点でもあった。

 渡邉が山越と平の背後を取って裏抜けする場面もあったがカバーリングを徹底されてた。80分すぎからはSB宮原をCBに回して深澤大輝と加藤蓮をWBの5バック化で藤枝と枚数を合わせて対応。終わってみればこの日も完封シャットアウト。5-0圧勝で初対戦の藤枝を下し2連勝。一方の藤枝は3連敗となった。

まとめ

 城福体制で最多となる5得点。アウェイ2連戦を7得点0失点2連勝という最高の形で締めくくった。初物に苦戦することの多いヴェルディであったが藤枝をよく分析して、出足鋭いプレス、ショートカウンター、高さを活かしたクロスが機能した。早々に先制点を奪えたことでだいぶ優位になったのだろう。齋藤と阪野、途中出場の河村ら前線からの守備が嵌り得点を積み重ねたあたりは前節・徳島戦の後半同様に良い守備から良いリズムを作り攻撃にも好効果をもたらしているのは間違いない。
 大差になっても交代出場の河村、加藤蓮、佐川、綱島、北島は最後まで全力でプレスをしてショートカウンター時にもスプリントする姿からスタメン争いのアピールが続きチーム全体にも良い雰囲気を感じ取った。開幕してひと月が経ち、次々に結果を出す新戦力の台頭が戦力にさらに厚みを増して行く。次は昨季ダブルを喰らった熊本戦だけに良い流れで雪辱を晴らしたい。