【雑感】2020年J2リーグ 第6節 対ジェフ千葉~過密日程が勢いと自信をつける~

東京ヴェルディ 2-1 ジェフ千葉

過密日程の今季、初めて中2日で迎えたこの日。選手たちも苦しいコンディションであったが、90分間最後までよく走りぬき、粘り強く戦い勝ち取った勝利。自分たちのサッカー、再現性の高さがピッチ上で披露出来る回数も増えてきた。試合を振り返りながらその形を考えていきたい。

スタメン

 前節・甲府戦で今季初勝利を挙げたヴェルディ。過密日程での連戦となったが、メンバー変更は試合中に負傷した佐藤優平に代わって藤本寛也が入ったのみでその他の10名は変わらずに臨む。負傷離脱していた山本理仁がベンチ入りを果たす。14141のシステムでスタートして攻守において変化する形はこれまで同様。若狭、井出、小池にとっては古巣との対戦となった。
 対する千葉は2-0で勝利した前節・金沢戦からGK新井を除く10名を入れ替えるという大胆な選手起用をしてきた。新井にとってはプロ入りを果たした古巣ヴェルディとの一戦になる。システムは継続して1442でスタートする。

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再現性が高くなる攻撃

 試合立ち上がりから千葉の攻撃狙いは明確であった。長身の2トップ川又と山下へボールを預け、そこからサイド攻撃を仕掛けるというものであった。ヴェルディは端戸と寛也を縦関係での2トップ化にしてプレッシングをかけ、中盤を4枚、最終ラインを4枚の1442でボール非保持時は構えた。最終ラインの祥平と平が空中戦をほぼ制して試合の大半はヴェルディがボールを握ることになる。

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 ビルドアップ時、奈良輪が左大外に高い位置を取ることと千葉が2トップであることにより数的優位を作るため最終ラインは3枚になる。1列前にジョエルと井出が横並びで、3-2を形成する場面が多かった。寛也と潮音が千葉のDHSH間にしっかりと立っており、縦パスがスムーズに入り簡単にゾーン3の手前まではボールを運び中央突破が出来ていた。

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奈良輪が上がるタイミングが遅くなる時は最終ライン4枚で潮音が左大外に張るため井出がDHSHの間に入る。人もローテーションで斜めに動きながらボールを前進させる。

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 試合序盤から比較的スムーズにボールを運ぶことが出来たヴェルディは中央から仕掛けとサイド攻撃を上手く組み合わせようと試みた。サイド攻撃時はハーフレーンから反対サイドへ展開ということが多く、平、井出⇒小池や小池、端戸⇒奈良輪という対角へ展開する場面が見られた。

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 3分、右ワイド小池が深い位置まで進入してファールを得たFKから若狭がニアに飛び込みヘディングシュートを放つも惜しくも枠を外す。12分にはゴール正面でのFKから井出がフェイントを入れて、寛也が壁の下を転がすコントロールシュートを放つが惜しくもポストに当たり得点を奪えない。デザインされたかのようなセットプレーを披露してバリエーションを見せてきた。

アンカー・ジョエルの立ち位置

 メンバーを大幅に入れ替えている千葉であったが、プレースピードがなかなか上がってこないように見えた前半、先制点を奪おうとヴェルディの攻撃は続く。
 アンカーに入る18歳ジョエルが次第にアクションを仕掛ける。立ち上がりはビルドアップ時に井出と横並びになることが多かったが、試合の経過に連れて、千葉2トップの間や2トップと2列目の間といった縦と横のライン間に立ちボールを貰うようになる。相手選手の間でボールを受けることでプレッシャー少なく簡単に前を向いて前進することで次の選手を引き付けることが出来て、ヴェルディの選手をフリーにさせることが出来た。

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 人数をかけた攻撃をするヴェルディは予想外のことで先制点を挙げることに成功した。31分、CKからの流れでの二次攻撃、クロスにヘディングを競ろうとした祥平、平らが密集した場所で千葉の選手に平が倒されてPKを獲得。このPKを端戸がしっかりと蹴り込み先制する。前線からのプレッシング、攻撃時のターゲットマンとして身体を張るチームプレーを見せていた端戸にとって、結果がつく事は心理的にもだいぶ楽になりそうだ。
千葉が運動量全然無いからメンバーみると前節と総入れ替えしてるのか。これは体力面で仕上がっていないのか、プレスの合図など戦術的に仕込めていないのか、もしくは理解出来ていないのか。選手たちが千葉の選手の間でボール貰えてるからスムーズに行くようになってる。
 前半の千葉の攻撃は42分、川又がボールを落とし、右SH米倉が持ち上がりクロスを上げて、反対サイドの左SH船山がフリーでシュートを放つも平にブロックされた場面くらいで内容に大きく差があった。

起用に応えた福村の活躍

 追加点を奪い試合を決めたいヴェルディは後半開始から選手交代を行ない、配置を替えてきた。奈良輪に代わり福村がそのまま左SBへ、右ワイド小池に代えて佐藤優平が入りフロントボランチに寛也が右ワイドへ移動する。試合後の永井監督のコメントにあったように『ボール支配率を上げてゲームをコントロールしたい』狙いがあった。 
 後半キックオフと同時に千葉のプレッシング強度が上がり、前半とは見違えるような動きを見せ、GKマテウスにまでプレスをかけてきた。そのギャップから千葉に流れが傾くかと思われたが、落ち着いたパス回しからヴェルディが試合をコントロールすることに成功した。
 福村は奈良輪ほど思いっきりの良いオーバーラップでアップダウンする選手ではないが、しっかりとボールを握れる選手で左足から放たれるキック精度の良さ、ポジショニングの良さに特徴がある。右ワイド寛也が幅を取りクロス、カットインからの攻撃が目立つ後半のヴェルディ。

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 49分、小刻みなパス交換から井出が落として最後は中へ絞っていた福村がミドルシュートを放つ。50分には優平、井出と繋ぎ右ワイドの寛也へ展開。クロスはファーサイドで待つ潮音に繋がり、最後はまたしても福村がシュート。52分、左サイドからのFKを優平が直接狙うもファーのポスト直撃でゴールならず。54分、ジョエル⇒優平⇒端戸と中央突破から決定機と立て続けの攻撃で千葉ゴールを脅かす。
 ここで両チーム選手交代を行なう。千葉は川又、高橋に代えて為田、見木を入れて船山がトップへ。ヴェルディは潮音に代えて森田晃樹、続けて井出に代えて山下を投入する。 
 連戦の疲れからか選手の距離感が間延びしていきトランジションの応酬となってきた。そんななか、劣勢だった千葉がひとつのチャンスをものにする。前半から目立っていた増嶋のロングスローをニアでフリックして船山がボレーシュート、マテウスがセービングしたものの山下が押し込み72分に同点に追いつく。ここまで完璧に近い守備を見せていたヴェルディにとっては痛い失点であった。
 それでもいまのヴェルディには勢いと自信があった。75分、千葉CKからのカウンターで山下が長い距離をドリブルで運び、最後は寛也がカットインしてシュートもGK新井の正面。さらに攻撃を仕掛けるヴェルディ、後半もジョエルがフリーでボールを持てる展開が続き、攻撃のタクトを振るっていた。そして77分、決勝点が生まれる。中央でボールを受けたジョエル。トップの端戸が下りてきてフォローして再びジョエルがボールを持って左の福村へ。最終ラインへ戻り、駆け引きをする端戸の動き出しに福村が早いタイミングで持ち前の精度の高い正確なクロスを入れて端戸がこの日2点目となる勝ち越しゴールを決めてヴェルディが突き放す。中央~サイドの連携が実った場面であった。

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 その後、千葉は櫻川のフィジカルを活かしたパワープレーでヴェルディゴールへ迫るが、最後は怪我から復帰した山本理仁が寛也に代わり投入されて中盤の底へ入れてしっかりと守備を固めて1点差を守りぬき、2連勝となった。

まとめ

 良い流れの時の過密日程が功を奏したとも言えるだろう。中2日という厳しい条件ではあったが、自分たちのスタイルに近い形で崩して大量得点を挙げた前節の勝利が選手たちの自信になっているように見受けられた。積極的な攻撃で先制することによって自分たちが主導権を握り試合を進めることが出来た。ここまで献身的なプレーでチームを支えていた端戸が2得点を挙げたことはさらに精神的な余裕を生み好循環へ繋がる期待が持てる。途中出場でまたしてもアシストを記録した福村もますます信頼を勝ち取っていくだろう。
 中盤の選手たちはライン間で上手くボールを貰い、中央突破、サイド攻撃へ転じていた。特にアンカー・ジョエルの動きは際立っていた。千葉の選手たちの間でボールを貰い最終ラインと2列目の選手たちとの繋ぎ役になった。自らも仕掛けることで千葉守備陣を乱すことにも成功して、決勝点のきっかけになる素晴らしいプレーを魅せた。
 守備では前線の選手たちも試合終了までピッチをよく走りプレッシングをかけていた。最終ラインの若狭、祥平、平はハイボールへの対応良く、ほとんどのボールを跳ね返していた。失点場面以外、危ない場面も少なく集中したプレーであった。
 短期間のうちに試合をたくさんこなして自分たちのサッカーの精度が上がり、結果がついてくることでより自信を深めるという良い形で連戦を締めくくった。