【雑感】2023年J2リーグ 第36節 対藤枝MYFC~アップデートされたのは?~

東京ヴェルディ 2-2 藤枝MYFC

 2度のリードもミス絡みで追いつかれての引き分け。技術的なミス、ベンチワークはもはや自滅であった。大差がついた前回対戦からのお互いの手の内を考察しながら試合を振り返りたい。


スタメン

 前節・甲府と1-1で引き分けたヴェルディ。出場停止明けの平が復帰。それ以外の10名は同じ。ベンチには長沢と林が久しぶりに名を連ねる。
 一方の藤枝は前節は首位・町田と0-0の引き分け。2戦連続無失点と守備が上手く機能している。岩渕に代えてアンデルソンがスタメン復帰とこちらも1名を入れ替えて臨む。


前半

 ボール保持を大事にする両者、前回対戦では立ち上がりの藤枝のミスを立て続けに突いて5-0と大勝したヴェルディであったが、この日は藤枝がハイプレスで試合に入っていく。ボール非保持時1523で構える藤枝は前線からアンデルソン、矢村、横山が積極的にプレスをかける。中盤が2枚と薄くなるがWBが縦スライド対応で1列2列と上がっていく。面を喰らったかのようにヴェルディの選手たちは押し込まれて窮屈で危なっかしいパス回しを強いられて、繋ぐというよりもクリアのように蹴ったボールを藤枝に回収される。

 マイボールになった藤枝はGK北村から丁寧に繋いで行くのかと思いきや、左右にボールを回しヴェルディの選手たちを誘き寄せてパスコースが空くと見るやミドル、ロングパスを入れて一気にヴェルディの1列目2列目を飛ばして陣地を押し上げる。矢村、横山がボールを収めて後方の選手も追い越すように攻め上がり手数をかけずに攻撃を仕掛ける。夏の移籍で久保、渡邉と主力がJ1へ引き抜かれてシーズン序盤からメンバーが代わったこともあるが攻守でアップデートされた印象がある。

 苦しい立ち上がりになったヴェルディであるが森田晃樹、齋藤、長谷川と卓越した技術を持つ選手たちが下がってボールを触るようになり徐々にリズムを生んでいくと、藤枝もリトリートし、ヴェルディが敵陣へ押し込む時間帯を作る。右は中原と宮原、左は長谷川と加藤蓮、稲見・晃樹・齋藤のトライアングルは流動的に回りスペースを作ったりフォローしたりして攻撃に一役を担う。10名が敵陣へ入り込んでハーフコートになる状況、GKマテウスも持ち場から大きく前へ出て平と谷口栄斗とパス交換に顔を出し組み立てをしていく。ただ、今季、気になっているのがマテウスのビルドアップへの参加だ。昨季の新潟との試合後に相手GK小島がビルドアップに積極的に関与することについて、ヴェルディは攻守で敵陣にてプレーする時間を長くすることを重視するとしてGKのビルドアップには否定的であった。しかし、今季はマテウスが関わる場面がよく見られており、後ろからの組み立てを志向しているのだろうか?永井、堀体制のようなしょうもないミスは少ないもののわざわざリスクあることをやる必要があるのか疑問に思っていた。

 左サイドで組み立てると長谷川や加藤蓮からGKとDFの間に落とすような鋭いクロスボール、右からは中原が突破して深い位置まで侵入と自分たちのやりたいプレーが出来始めてくる。すると、17分、左サイドから中へ侵入していくと中原から齋藤。齋藤がワンタッチでPA内へ入れると後方から走り込んだ晃樹がキレイに流し込みヴェルディが先制する。まるで攻撃練習を見ているかのように見事に崩した完璧な得点だ。拘りを魅せるニアゾーンを攻略した形だった。

 自分たちのペースから先制し、余韻に浸るなか、直後のビルドアップで持ち場を大きく離れたマテウスが藤枝の前線からのプレスに窮屈になりクリアし損ないアンデルソンがボール奪取。無人のゴールに流し込みあっという間に藤枝が同点に追いつく。シーズンを占うあまりにも勿体無い失点であった。

 同点になったことでエネルギーが出たのは藤枝だ。再びプレス強度が上がると前線+WBが果敢に襲い掛かり、ヴェルディは最終ラインが逃げの横パスばかりになってしまう。出口となることが多いSB宮原であったが右足を警戒されるようにプレスをかけられることで左足でのプレーを余儀なくされる。宮原をはじめ失点した事でチームが動揺しているように見えてミスを乱発して自陣でボールロストし、ショートカウンターを許す場面が続く。

 齋藤や中原、長谷川と個の力で敵陣へ入って行きシュートまで持って行く機会もあったが、ゴールは奪えずに1-1で前半を終える。

後半

 お互いにメンバー交代無しで迎える。いきなり試合が動く。後方から鋭い縦パスが入ると抜け出したのは齋藤。ニアゾーンを上手く取り、深い位置まで抉って折り返すと染野が合わせてヴェルディが勝ち越しに成功する。ゴールに近い位置でプレーすることが明確になった齋藤は2アシストと好調だ。ここまで見事にニアを崩すのはお見事である。かなり精度が上がってきているのだろう。

 重苦しい空気で終えた45分からすぐさま勝ち越したことで今度こそはペースを握れたと思った。長谷川、中原のサイド攻撃に齋藤と染野がニアを突く動きと多彩な攻撃で追加点を目指す。対する藤枝は横山を中心にしっかりと中央で起点を作ってそのまま縦へ突破したりサイドへ散らしてクロスからと攻撃の姿勢は崩さない。浅倉を投入し、横山をDHへ下げて攻撃をさらに厚くする藤枝に対してヴェルディは加藤蓮と長谷川の左サイド2名を下げて林と新井を投入。稲見が左SBへ下がる。アカデミー時代までを過ごした古巣との試合に燃える横山が逞しく執念深く持ち運び仕掛けることで中盤には機動力が生まれている状況にもかかわらずボールハンター稲見をその舞台から下ろし負傷明けの林を入れるこの交代。前回の山口戦で守備を狙われていたSH新井にもかかわらずSBを本職の選手から変えた交代とこの采配は理解に苦しむものであった。機動力に劣る林は守りはするもののまったく存在感は無く、試合勘も鈍く、投入されたのが酷にも感じた。

 左サイドから攻められるとクロスのクリア処理で宮原はCKへ逃げる。横山のインスイングのCKはサインプレーとなり、最後は鈴木が合わせて藤枝が再び同点に追いつく。

 このCKのきっかけになった宮原。クリアもスローインを選択出来たのでは?とも思えたし、それ以降もキックミスが目立ち、今日は彼の日では無かった。これ以上失点をしないためにもベンチに下げた方がよかったが、この日のベンチにはSBの控えが誰もおらず下げることが出来なかった。その代わり、終盤に左SBに回った稲見が下がり、栄斗がSBに回ると言うよく判らない采配が続いた。SB稲見はフィジカルコンタクトの機会も減り良さが何も無くなりまったく効果が無いにも関わらずお気に入りの采配になっているのが今シーズンの心配材料である。

 左サイドに投入された新井。試合数を重ねるに連れて相手からも研究されマークも厳しくなりだんだんと迫力に欠ける。守備負担を考えると強度が高い北島が良いだろうと痛感させられるばかりだ。

 同点になってから、変に選手配置を動かしたヴェルディはあたふたしているように見え、藤枝の方がシンプルにゴールへ矢印が向いており脅威を感じた。取っては取られの試合はこのまま2-2でタイムアップ。ヴェルディにとっては勝負弱さを露呈することになった。

まとめ

 清水、磐田の結果を知ったうえで迎え差を縮めるチャンスだっただけにとても悔やまれる勝点1だ。マテウスの致命的なミス、ベンチワークの謎采配はさすがに擁護出来ないものであった。
 大差がついた前回対戦からの課題、反省も踏まえて藤枝はシーズン終盤にかけてJ2で戦っていくためのBプランとも言えるようなしっかりとしたチーム作りが落とし込まれた印象を受けた。初挑戦ながらJ2残留は近づいている。
 残り6試合。順位変わらず4位のヴェルディは清水、磐田を待つように6戦全勝をするしかないだろう。ニアゾーンを突く攻撃が機能しているのは見事であるが、前線からの守備、身体を張ったシュートブロック、1足分の球際の寄せと執念、泥臭いプレーを思い出してもらいたい。