【雑感】2019年J2リーグ第41節 対徳島ヴォルティス~スペースを作るのか、作ってもらうのか~

東京ヴェルディ 1-2 徳島ヴォルティス

相性が良い徳島戦であったが、いまのチーム状態ではそれを持ってきても勝てず。ヴェルディも時折よい場面があるものの、トランジションの速さ、立ち位置の良さ、決定機の演出とすべてにおいて徳島に上回られた。試合のなかから再現性あるプレー切り取って振り返ってみたい。

スタメン

 前節千葉とスコアレスドローに終わり2試合連続無得点のヴェルディは本拠地味の素スタジアムで8月以来のホームゲーム。CB若狭が怪我のため欠場して近藤が復帰。左サイドにはこの日も理仁が入る。出場停止明けのクレビーニョがフロントボランチに入り、リベロには梶川が起用されてお馴染みになった中盤ダイヤモンド型の1442システム。なお李栄直はW杯予選に北朝鮮代表で招集のため古巣との一戦を欠場。対する徳島は前節横浜FCに敗れはしたものの6位につけてPO圏内をキープ。右WBに田向、DHに鈴木徳真が久々に起用。左WBには古巣戦となる杉本竜士が入る。

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良い立ち位置を取るとは

 キックオフからボールを握ったのはヴェルディだった。ボール非保持時に1541になる徳島は渡井と野村がSH化して奈良輪と山本理仁へ、トップの河田は近藤と平へプレスする。中央にぽっかり空いたスペースをリベロ梶川が使う。ここにDH岩尾、鈴木徳真が食い付いてくれば今度は定位置を離れたことで生まれたスペースにレアンドロが下りてボールを貰う。DHを剥がしたり、CBのいずれかを釣り出せるなら空いたスペースにワイドの小池、パライバやフロントボランチの晃樹、クレビーニョが斜めの動きで飛び出しを狙う。梶川やレアンドロが比較的自由にプレー出来たことで中央から崩しにかかる。ダメならばサイドへ展開してまた中へ戻してシュートチャンスを伺う。10分、パスをつなぎクレビーニョから素早い斜めがパライバへ渡り右からのシュートを放つも枠外へ逸れる。12分には奈良輪がミドルシュート放つも枠の右へ外れる。右サイド奈良輪、クレビーニョ、パライバの攻撃が目立つ。

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 対する徳島はボール奪取後、プレースピード落として落ち着かせて攻撃することもあるが前線にフリーの選手やスペースを見つけると迷わずにボールを運ぶ。DH岩尾と鈴木徳真が縦関係になることが多く、13151でWB田向と杉本が大きくサイドに張る。ヴェルディはこの日、ボール非保持時にフロントボランチ森田晃樹が石井、パライバが内田裕斗をマークしてどちらかがレアンドロと並んで2トップのようになり1442システムを敷いていた。しかし徳島はピッチを広く使うように選手を配置してヴェルディのブロック外側から上手く攻めていた。特に田向ら右サイドからのクロスが目立ち左WB杉本竜士はフリーでPA内に居る場面が試合序盤から相次いだ。

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竜士がフリーになるのは何でだろう?

 そのあとも右サイドからクロスが上がりPA内でフリーになる場面やDF背後を取る動きなどで竜士がフリーになることが目立ち、ヴェルディはうまく捕まえきれずシュートチャンスはないもののやられるのは時間の問題のように感じた。試合中のシステムかみ合わせを考えてみた。まず、徳島ボール保持時に前線は5トップのようになりその時点で4バックのヴェルディより人数が多くなる。右サイドから攻めれば、左の大外が必然的に余ることになる。では、中盤が1枚下がってくればと考える。パライバは先述のように内田裕斗をマークする。帰陣して間に合えば最終ラインまで戻り切れる場面があったが、攻撃スピードが速いときは追いつけない。梶川とクレビーニョが下りて埋めることも出来たが基本的には横スライド対応することが約束事のようになっていること、また岩尾や攻撃参加してくる内田裕斗をみることをしないといけずマークが絞り切れない。最大の要因は河田、渡井がハーフスペース~中央にうまく位置しており、奈良輪に竜士を加えた3選手が居て1対3の状況を作り出し守備基準を絞り込ませない徳島の位置的優位性の上手さが際立ったことであった。

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相手を見てプレーする内田裕斗

 もう一人、試合を通じて際立ったパフォーマンスを見せたのが内田裕斗であった。最終ラインでの守備はもちろん、ビルドアップ時には左SB化して隙あれば大胆に中央へ切れ込むドリブルでそのまま持ち上がり前線に参加。(上がったスペースを岩尾が下りてカバーする)カウンター時には全速力で最前線まで駆け上がり縦横無尽にプレーしていた。
 43分の徳島先制ゴール場面を振り返る、内田裕斗が高い位置でボールを受けて奈良輪を翻弄するかのように竜士が身体の向きを入れ替えて振り切り、豪快なミドルシュートをぶち込んだ。この日の良い要素がすべて凝縮したような形であった。

 後半立ち上がり、すぐさま追加点が生まれる。ボールを持ち駆け上がった内田裕斗が右サイドへ展開。野村、田向とつなぎクロスにPA内の左ハーフスペースで待ち構える河田が合わす。

サイド攻撃を仕掛けるものの

 2点ビハインドになったヴェルディは5-4でブロックを敷きかなりコンパクトに守る徳島を崩せずに攻めあぐめる。57分、レアンドロに代えて佐藤優平を投入、左フロントボランチへ入り、晃樹がフリーマンとなる。右サイドから奈良輪、左サイドからは優平と理仁がクロスボールを入れるがヨルディバイス中心に弾き返されることが多かった。サイドで起点を作り、ハーフスペス~大外とパスを回してクロスを上げようとするがテンポが遅くて守備側の体勢と目線を変えることが出来なかったことが大きな原因と考える。ダイレクトや速いタイミングで入れた際に可能性を感じることがあったが数少ない場面だった。
 70分、獲得したCKの二次攻撃、ボールを拾ったキッカーの理仁が素早く上げなおしてファーで構える小池を通る。小池は至近距離であったがコースをよく狙ってネットを揺らしてヴェルディが1点差に迫る。3試合ぶりの得点となった。

 同点、逆転を目指して藤田譲瑠チマを中盤底に入れて活性化を図り、新井を投入する大外から仕掛けるも出足鋭いプレスとリトリートをうまく組み合わせて守る徳島ゴールをこじ開けられずに1-2で敗戦を喫した。

まとめ

 最近の徳島戦のなかでは攻撃的にプレーをすることが出来ていたと考える。しかし、徳島は一枚上手であり、まるで手本を示すかのように状況認知力が早くプレーへ移行されていた。ヴェルディは自分たちが動いてスペースを作る、一方の徳島は野村、渡井、鈴木徳真を中心によい立ち位置が取れていて常にヴェルディよりも位置的優位を確保している。選手たちがをよく見ていると、かなり首を動かして周囲を見渡してどこにスペースあるか探している。相手を見て立ち位置を取ることで相手選手たちを動かして新たなるスペースを作ってもらっている。攻守において常に約束事がはっきりしているがゆえに再現性あるプレーが多く、上位につけるのが納得の内容であった。次節は今季最終戦。このエンブレムをつけてのラストゲームであり、引退する田村直也にとってもラストゲームになり有終の美を飾ってくれることを願っている。