【雑感】2022年J2リーグ 第19節 対大宮アルディージャ~選手を変えても好転せず~

東京ヴェルディ 1-1 大宮アルディージャ

 大幅なメンバー入れ替えで臨み、なんとか勝点1を手に入れた。先制しただけに勝たなければいけない試合であったが時間の経過ともにミスや慢性的な課題がこの日も出て苦しい展開になった。相馬大宮の初陣の内容ともに試合を振り返りたい。

スタメン

前節・金沢に1-3で敗戦を喫したヴェルディ。ここ4試合12失点と守備大崩壊の状態の中、GK長沢、CBンドカ、平、中盤底に加藤弘堅を起用。IHには石浦大雅、今季初スタメンのCF端戸と6名を入れ替えた。昨季開幕戦でデビュー以来50試合以上連続出場していた佐藤凌我はベンチ外になり、連続出場はストップ。
 対する大宮は前節・琉球に1-0勝利したものの監督交代に踏み切った。相馬直樹を新監督に迎えて初陣。山田、河田、奥抜の3名を入れ替えて臨む。

前半

 注目を集めた相馬アルディージャに対して半分以上のメンバーを入れ替えたヴェルディがどう立ち向かうか、試合の入りを見守った。

 まず、大宮はこれまで前線起用されていた小島を本職のDHに戻したことがトピックスだろう。システムは1442で町田時代をうっすら彷彿とさせるようにボールサイドに人数を集めて守る傾向を感じ取った。狭いエリアでボールを奪い、仕留める狙いは相馬サッカーの色であり、今後もこのやり方を採用していく可能性があるだろう。

 立ち上がりのヴェルディは、キックオフ時こそ左SB深澤大輝が加藤弘堅の横に入り3-2の形を作ったがビルドアップ時はほとんど4-1で回すことが多かった。上述のように大宮が人数をかけてボールを奪いに来るときはGK長沢も使ってボールを動かして横幅を使ってプレス回避させて落ち着かせると、IH梶川と石浦大雅も高い位置を取り、大宮の4バックに対して5トップのようになり1415で数的優位を作る。梶川は落ちてきてビルドアップの出口になり中盤で起点になることもあり、大外に張るワイドの小池と杉本竜士へ梶川や最終ライン、加藤弘堅からの縦パス、斜めのボールを入れて大きくボールを動かす場面が何度も見られた。

 サイドへ展開すると、右は小池が抜け出しから単独でシュートへ持ち込む動きやダイレクトで叩き追い抜いてくるSB宮本を使う狙いがあった。左では杉本竜士が時間を作りクロスボールを供給することがあった。最前線の端戸はくさびのパスにポストプレーでボールを収めたり前線からの守備と及第点のプレーぶりであった。

 守備面ではスタメン起用されたCBンドカ、平は屈強のフィジカルを活かしたディフェンス、空中戦の強さを見せてJ2で数年にわたりレギュラーを張っているだけはある実力を示してくれた。ビルドアップ時にンドカには相手プレスが襲い掛かるも試合前のインタビューで石浦大雅にイジられるように紹介された「バレバレのキックフェイント」を駆使して交わしていった。これを試合前に読んでしまったから、実際の試合中にボールが行く度にそんな目で見てしまい思わず笑ってしまった。平は落ち着いた守備に加えて、利き足の左足を有効に使ったビルドアップや縦パスでスムーズな展開を演出した。馬場や谷口のように何でもかんでも持ち運ぶのではなくて後ろに重きを置きながら相手を見ながら上手くプレーが出来ていた。

 また、中盤底に入った加藤弘堅は持ち味の中距離パス、ダイレクト・ワンタッチパスを織り交ぜて上手くゲームメイクを行ない、守備時も選手間に立ちボール奪取する場面があり久しぶりのスタメンにもかかわらず好パフォーマンスを披露する。

 先制点は加藤弘堅の鮮やかなパスカットからだった。大宮がビルドアップで三門が下がり小島へのパスを通そうとしたところで背後から出足鋭くボール奪取すると、前方の石浦大雅へ繋ぐ。大雅は思いっきりよく左足を振りぬくと相手DFにあたってコースが変わりそのままゴールイン。大雅はプロ3年目で嬉しい初ゴール。選手たちが駆け寄り、思わず涙を流す。テクニシャン系統の選手であるが日に日に身体的な強さも付いてきて、積極的なプレーがどんどん増えて行けばますます数字を残せそうな気がする。

 大宮は2トップ河田と奥抜がンドカと平に苦労することが見られ、河田は平との競り合いを避けて左SB深澤大輝の方へ流れることが増えていく。失点後に2トップ左右を入れ替える。右SB茂木が高い位置を取り、ここに深澤大輝を喰いつかせ、背後のスペースを柴山と奥抜が使い始めサイド攻略をする機会が増えていく。河田がクロスへのフィニッシャーを担うも崩し切ることは出来ず、前半はヴェルディが1点リードで折り返す。ヴェルディは先制点を挙げたこととCB中心の守備はよかったもののスローインやセットプレーのリスタートでのミスで相手へボールを渡す回数が多く、対する大宮の失点場面含めてパスミスが目立ち、お互いにいまの状態を示すかのような安いミスが時間経過とともに増えてきた前半であった。

後半

 1点リードしたヴェルディは先制点後、前線からのプレス強度が落ち、最終ラインが低くなっていくことでサイドを崩されることが増えて行く。2トップ左右を戻した大宮はSBSHCFの連携を見せて行く。特にヴェルディ右SB宮本のところは狙われる回数が増えていく。大宮はビルドアップ時にSB小野が小池の裏に位置取りして、宮本に長い距離を走らせて喰いついたところで矢島、奥抜が流れて崩しに行く。反対サイドでも同様にSB深澤大輝の裏を狙う。

 一方のヴェルディはワイドの小池と竜士が大外に張りすぎていることとIH梶川と大雅がボールに触れる機会少なく、トップの端戸が孤立してしまい、前線の選手たちの距離感が開きすぎたことでシュートまで持って行くことすら出来ず、大宮の反撃をモロに受けることになる。

 すると、58分だった。大宮がGKを使ったパス交換から右へ展開すると深澤大輝の裏へのパスに抜け出した河田が反対サイドの奥抜に横パス。奥抜は上手く切り返してシュートを決めて同点に追いつく。

 シュートすらまともに打ててなく失点を喫したヴェルディ。馬場晴也、山本理仁、新井を投入していつもの陣営に戻す。平、加藤弘堅を下げて防戦一方のなかで同点に追いつかれてから失点の多い陣営にする采配は理解が出来なかった。

 大宮は奥抜が河田と縦関係になりトップ下のように振舞うことも出てきた。そのあとに古巣対戦となった泉澤が左サイドに入り、勝ち越しを目指す。3列目の小島や三門から縦パスを入れて追い抜く動きを見せることでヴェルディ守備陣は捕まえ切れず、サイド攻撃に加えて中央突破が出てきてもはや時間の問題かと言わんばかりの雰囲気がしてきた。

 大宮はサイドの崩しと後列からの飛び出しを上手く絡めることでハーフスペースを制圧して深い位置まで侵入する場面が増えて行くと小島のシュートはクロスバー直撃、泉澤のシュートは長沢のファインセーブと決定機を迎えた。

 対するヴェルディは左サイドに入った新井がドリブル突破からクロスを上げることでようやく敵陣で形が出来てきたが引き続きシュートまでは打てずに大宮ペースに。最終盤に獲得したFKからの流れで新井のクロスに小池がヘディングシュートを放つもわずかに枠を外れタイムアップ。先制点後に守りに入ってしまったことでそれまでも突かれていた部分を徹底的に突かれてしまい同点に追いつかれた。そのあとは長沢の好守もあり、辛うじて勝点1を手に入れた。

まとめ

 実力者をスタメン起用したことで守備には多少の安定感が出て複数失点は免れた。しかし、SB裏スペースを突かれる構造的な弱点はそのまま放置されておりシーズンも半ばを迎えて不安が募るばかりだ。追い抜いていく選手を捕まえ切れていないことも多く、守備の基準が曖昧になっている証拠でありしっかりと取り決めをしていくことも必要だろう。
 攻撃面では先制点こそ挙げられたが、秋田戦や金沢戦に比べると両ワイドがサイドに高い位置で外に張り過ぎてしまい中央が孤立してしまい、迫力に欠いた印象である。もっとIHの2人がボールに触ってワイドの選手に裏抜けをさせる場面が欲しかった。
 連戦であるからメンバーを変更しているような感じを受けてしまい、序列が入れ替わったようには思わなかった。下位に沈む大宮は少しずつ勝点を積み重ねてきているなかで監督交代を行ない、サッカーの質も見直ししようとする意図が伝わってくる一方でこの10試合でわずか1勝と最悪な状況のヴェルディは一体どうするのだろうか。