【雑感】2020年J2リーグ 第10節 対FC琉球~我を見失ってしまった~

東京ヴェルディ 0-1 FC琉球

 ポルトガルへ旅立つ主将・藤本寛也の最終戦はとっても後味が悪い幕切れを招いてしまった。それ以外の部分でも試合中盤からどうもさっぱりとせずに・・・どうしてこうなってしまったのか、試合を振り返りながら考えてみたい。

スタメン

 前節・首位の長崎と引き分けて5戦負けなしとしたヴェルディ。奈良輪、佐藤優平、端戸、そして寛也がスタメン復帰、山本理仁が開幕戦以来の起用で中盤底のリベロに入り、システムは14141となる。
 一方の琉球は前節・岡山に鮮やかな逆転で今季初勝利を飾った。怪我人、新型コロナ感染の影響で練習中止、遠征メンバーの制限と厳しい状況で迎える。沼田、上里、山口の3名を入れ替え14231システムで臨む。李栄直、富所、阿部にとってはかつて所属していた古巣との一戦になる。

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得点機会は作るものの

 攻撃志向が強い両者、試合開始からアグレッシブなプレーでオープン気味な展開が目立った。先ずは、ヴェルディの攻撃から振り返っていく。
 ボール保持時の形は、左SB奈良輪が高い位置を取り最終ラインが3バック化する。ビルドアップから前節長崎で見られたようなサイドからの崩しがこの日もあった。左は人海戦術で数的優位を作り、右は寛也と晃樹のコンビネーションからサイド攻撃をする。特に晃樹はスペースへ走り込み折り返しのクロスを入れる場面があった。10分、中央から晃樹がボールを持ち、寛也との連携から裏のスペースへ抜けてPA内の端戸へパス。中へ入れて優平がスルーしてオーバーラップしていた左SB奈良輪がダイレクトで合わせるも枠を捉えられず決定機をものに出来ない。

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 それ以外にも端戸のポストプレーから左ワイドの井上潮音が抜け出してシュートチャンスを迎える場面や潮音がボール奪取してショートカウンターから端戸がシュートを放つ場面と再現性ある攻撃を見せるも得点は奪えない。

ロングボール攻撃を厭わない琉球

 対する琉球は、ボール保持時にDH上里が2CBの位置へ下りる3バック化もしくは李栄直と前後を入れ替わる形を取る。上里に加えて、左SB沼田の2枚がパス供給源になる。ヴェルディの前線からの守備も緩く、ロングボールを入れることが多かった。ターゲットマンは最前線の阿部で、こぼれ球を2列目の選手が繋ぎシュートへ転じる。また、ポジトラ(カウンター)時もヴェルディのSBが攻め上がったスペースへ前線の選手たちが走り手数をかけずにシュートまで持っていく。

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 開始早々の1分、阿部の落としから風間がシュートを放つもマテウスがキャッチ。ヴェルディの序盤の攻撃を凌ぐと、25分には右サイドからカットインした風間が左足でシュート。35分はショートカウンターから風間がドリブルで持ち上がり、左へ開いた阿部へ繋ぐ。阿部はカットインしながらカーブを描けたようなシュートを放つも枠を捉えられない。

理仁の良さが消えた試合展開

 リベロと呼んでいる1DHでスタメン起用された理仁。左足から放たれる正確なフィードは大きな武器で何度かその場面が見られた。
 28分、右で晃樹と寛也が崩すも崩し切れず、フォローに入った理仁へパス。そこから、正確なボールをPAへ入れてファーで待つ奈良輪が折り返すもカルバハルにキャッチされる。前半終了間際には左サイドからグラウンダーのクロスを入れて晃樹が落として寛也がコントロールシュートを放つもDFにあたる。

 ただ、目立ったのはそれくらいであった。
  ロングボールでピッチを広く琉球に合わせるかのように最終ライン高橋祥平や平から縦パスを入れるヴェルディ。どちらも中盤省略するような展開になり、オープンな展開によって、ボールに触ってナンボの選手である理仁はボールを触る機会もほとんどなく前半で退く。
 リベロとして主軸となっている藤田譲瑠チマのようにボール奪取、カバーリングの動きに長けている訳ではなくボールテクニックを得意とするだけにオープンな展開では良さが発揮出来なかった。

オープンな展開を受け入れたヴェルディ

 ヴェルディは後半から藤田譲瑠チマが投入されそのままの位置に入る。その狙いは上述の通り。また、井上潮音に代わり、山下が左ワイドへ。晃樹と優平もポジションチェンジする場面が増えて後半は左サイドからの攻撃が中心になる。

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 54分左サイドから晃樹がドリブルで中央へ、寛也のシュートのこぼれ球を再び晃樹が詰めるもシュートは枠外へ。そのあと、晃樹に代わり井出が投入されそのまま左フロントボランチに入る。65分、山下のクロスをPA内で端戸が落として井出がボレーシュートを打つも上手く合わず決定機を活かせない。
  左サイドからの攻撃一辺倒となった原因としては寛也が前半のように大外へ張れずの右サイドからの攻撃は皆無になったことが考えられる。そこで、福村を投入して右SB若狭を高い位置取らせる右肩上がりのシステムを選手と配置の変更で作りバランスを整えようとする。しかし、この日は落ち着いたビルドアップから中盤を経由して前線へボールを運ぶという場面が少なくゲームのリズムを変えることが出来なかった。

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千両役者・阿部拓馬

 後半、より前がかりになったヴェルディの最終ライン~中盤には広大なスペースが生まれた。琉球の1トップ阿部拓馬はそこを見逃さず、リベロ・ジョエルの周囲でボールを受けるようになる。右SB田中の攻撃参加も積極性を増し、中央でボールキープした阿部はサイドへ展開してそこからクロスを入れる事が増える。

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 小柄ではあるが、力強さを兼ね備える阿部はゲームメイクするだけではなく単独でドリブルして仕掛ける。61分、自陣で山口からのパスに右に流れてボールを受けた阿部は奈良輪と並走しながらもドリブルで持ち運び右サイドの角度のないところからシュートを放ち、CKを獲得する。そのあとも存在感を増す阿部、フィニッシュまで持っていく琉球は池田に代えて長身の上原を入れてクロスのターゲットとする。82分、右サイドで風間からのクロスに上原と祥平が交錯。その際に祥平が上原を蹴りつけてしまい、これでヴェルディがPKを献上。このPKを阿部が落ち着いて決めて琉球が先制。
 ヴェルディも反撃に出るが、最後までリズムに乗り切れない攻撃でゴールを割れず、0-1で敗戦となった。

まとめ

 日頃の試合と比べて違和感を感じたこの試合。いつもならばもっとゆっくり、小刻みなパス交換をする場面もありもっと緩急をつけているだろうが、プレースピードが一本調子に思えた。ボール支配率(50%)とパス本数(549本)のデータが証明しているように、やはり低調であった。相手の琉球が前線からのプレッシング、効率の良い攻撃、サイドアタッカーの献身的な動きとスプリントしている場面が多く良いチームであることは間違いないが、その相手の動きに真っ向から合わせてしまったように考える。試合を落ち着かせることコントロールの工夫が見たかった。理仁が悪いわけではなく良さがほとんど出せなかったと認識している。
 だが、所々では良いプレーも見られ、結果論になるが、前節同様のサイドの崩しで得点を奪っていれば、また違う展開になったかもしれない。右フロントボランチの晃樹のパフォーマンスが日に日に良くなってきているように思えるだけに後半から左サイドへ置いて大人しくなったのが残念であった。寛也が居なくなることで次節からの選手配置や崩し方の変化有無などがどうなるのか注目していきたい。
 守備陣もマテウス、若狭、平が確りと仕事をこなしていただけに、祥平のワンプレーですべてが台無しになってしまったことは猛省すべき点である。連戦だけにひとつ歯車が狂うだけで一気にダメになることもあるため次節では結果が求められる重要な一戦になる。