【雑感】2021年J2リーグ 第16節 対ブラウブリッツ秋田~王道パターンで苦手撃破~

東京ヴェルディ 3-1 ブラウブリッツ秋田

 とにかく初顔合わせに弱いヴェルディ。初対戦となった秋田にもいつも通りに先制点を献上してまた負けるのかという雰囲気が何となく漂ってきた。本職のボランチ起用された加藤のゲームメイク、左サイドで躍動した山口、抜群のキープ力を魅せる井出、PA内での圧倒的な決定力がある小池とそれぞれが持ち場で活躍をみせて逆転勝利を飾った試合を振り返りたい。

スタメン

 前節・磐田に0-2で完敗したヴェルディ。加藤を本職である中盤底に起用して若狭をCBへ、2試合ぶりに深澤大輝が右SBに入る。中盤にはFWの端戸を起用して14123システムで臨む。
 前週末には天皇杯1回戦を戦ったことでリーグ戦は前週の平日開催に山口と試合を行なった変則日程で迎えた秋田。守護神・GK田中が山口戦で退場処分を受けたことでの出場停止に伴い新井を起用。GK以外はリーグ戦と同じ10名でこちらは代名詞になっている14222システム。

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意識させられた飛び道具

 読売に縁のある永井、吉田両監督であるがそのサッカーは両極端なものでキックオフの陣形から現れていた。マイボールとなった秋田は、極端に圧縮した形で右サイドに寄りロングボールと出足鋭いスプリントで押し進めていく。まるで、かつての相馬ゼルビアのようなワンサイドアタックであった。

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 ロングボール、ロングスロー、CK・・・と飛び道具を武器にJ2初参戦ながら健闘している秋田がこの日もその力を発揮していく。開始早々から早速、左サイドからロングスローを入れる。その流れから今度は右サイドでスローインのチャンスを得る。ロングスローを警戒するヴェルディに対して、クイックスタートで短いボールを投げ、サイドを抉りクロスを入れるとボールが流れてPA内の左サイドから茂がシュートを放ち、マテウスが弾いたところを齋藤が押し込み、再度中村がプッシュして幸先よく秋田が先制する。

 その後も先制点を挙げた秋田の時間帯が続くというよりもヴェルディの選手たちが圧に負けていたというのが正しい表現だろうか。ボール非保持時に1442で守る初顔合わせの秋田のプレッシャーの速さ、球際の厳しさに負けてなかなかうまくボールを繋げない。最終ラインから縦パスを入れてもプレスに押し潰されるため選手たちが下がってボールを受けることが多く、それが秋田のプレスを助長することになり、ボール奪取すると、手数をかけずにシンプルに前へ前へ選手とボールが動きシュートを放っていく場面が続く。

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ピッチを広く使い、形勢逆転

 ヴェルディはボール保持時に左SB山口が高い位置を取るように配置していく。1442で守る秋田の右SH沖野は山口をケアするために最終ラインへ吸収され、1532のように布陣を変えさせられる。
 20分ごろからは山口の攻撃参加、仕掛けが顕著になっていくと秋田の5バック化が固定されていく。中盤の枚数が減ったことでヴェルディがこのゾーンを支配し始めていき、加藤-佐藤優平-端戸の中盤3枚が上手く旋回しながら空いたスペースに顔を出して高い位置でボールを回すことが出来るようになっていった。

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 試合後の選手コメントにもあったように秋田SBはクロスに対して中へ絞るタイミングが早い傾向にあった。その分析を活かし、前半立ち上がり2分ごろの初めのサイド攻撃時からクロスはファーサイドを狙っていた。
 その後、サイドチェンジや山口がサイド突破して上げるクロスもSBの外へ届くような大きなボールを蹴りこむ場面が何度も見られていた。
 24分の同点ゴールも山口のクロスはファーサイドの山下へ大きく蹴りこみ、山下が折り返して、あとは小池が押し込むだけとピッチを広く使った展開から追いついた。

 同点になったヴェルディが主導権を握る。特に左SB山口は沖野とのマッチアップに何度も勝利して、サイドを制圧していく。持ち前の力強いドリブルで縦への突破から左足でクロスを入れることが何回も見られ、ワンパターンだけにならないようにカットインして右足でシュートを放ち、縦も斜めも動くことで意識づけをしていった。
  得点は奪えなかったものの、圧倒的にボールを握り、リズムを取り戻して1-1で前半を折り返した。

ようやく発揮された中盤での優位性

 後半開始からヴェルディは端戸に替えて井出を投入する。ゴールに近い位置で懐の深いキープ力を活かしたチャンスメイクとアシスト、ゴールが期待されて勝ち越し点を奪うべく切り札として起用される。前半は中盤左にいることが多かった優平が右へ回り、井出が左に入る。

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 後半立ち上がりから、早速、ヴェルディが敵陣の深い位置まで侵入する。途中出場した井出は「これでもか」と言わんばかりに右足一本での鬼キープで高い位置で時間を作りチャンスを迎えると流れの中からもカットインして自らシュートを放つ。

 引き続き、高い位置からプレスをかけていく秋田であったが、この時期としては異例の暑さもあり、徐々に精彩を欠いていく。ボール保持時もミスが目立つようになりショートカウンターからヴェルディがチャンスを迎えることも増えていった。

 ビルドアップ時も最終ラインが広がることで意図的に密集形成をして攻撃を仕掛ける秋田に隙を与えず、中盤3名が前半に続き上手く旋回することで相手守備の基準を与えず、フリーになる選手を作ることで秋田のプレスを交わしてビルドアップの出口になりボールを運ぶことが出来ていく。昨年、北九州の躍動を支えた加藤も持ち味を存分に発揮してゲームメイクをしていく。加藤-優平-井出とボールを扱うことに関してJ2では屈指のタレントが自由にボールを触ることで、ほぼヴェルディがボールを握る展開になる。

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 この展開にたまらず秋田はFW2枚を入れ替えて、フレッシュな選手が前線からチェイスしていくことでリズムを生み出そうとする。しかし、中盤の選手たちが連動していくのが難しく間延びすることが増えてヴェルディの選手がスペースでボールを受けて攻撃へ転じることが多かった。

 68分、右サイドで高い位置を取り、一度はボールを失うものの大輝が奪取すると、山下へ。山下がPA内を侵入すると井出がパスをそのままファーへ流し込むようにして冷静にゴールを決めてヴェルディがついに勝ち越す。見事に期待に応える活躍ぶりだ。

 72分には縦への速い展開からGK新井にクリアされるもののそのこぼれ球をすぐに回収して左サイドを駆け上がった山口がダイレクトでクロスを上げて小池がまたしてもファーサイドで合わして上手くヘディグシュートを叩き込み、すぐさま3点目を挙げた。

 秋田がセットプレーやその流れからチャンスを迎えたが、何とか凌ぎ、先制点を許したものの3得点で鮮やかな逆転勝利を飾り5月を締めくくった。

まとめ

 ただですら、初物に白星献上する弱さがあるところで苦手とするプレッシングサッカーの秋田にあっさりと失点を許しシュートすらままならない立ち上がりをみて一体どうなるものかと不安しかなかった。前節・磐田戦でスタメンを外れた深澤大輝の頑張り、後半中盤で早々にベンチへ下げた小池と加藤の活躍もあり徐々にペースを握り同点、勝ち越しという展開へ。
  ここまでCB起用が続いていた加藤が移籍後初めて本職であるDHでスタメン起用された。攻守においてセカンドボールの回収を行ない守備に安定感をもたらして、攻撃でも高い位置でパスを組み立てるなどやっぱりボランチの選手だと感じさせる高いパフォーマンスを披露した。
 立ち上がりこそ秋田のプレスに苦しんだが徐々にアジャストしていき秋田の弱点を突くようなサイド攻撃、プレス回避が上手く嵌り、内容もそれなりに伴った試合結果となった。この日は井出、梶川、森田と自慢の中盤タレントを途中出場させたが交代枠5枚の恩恵を存分に発揮していく方法は今後の戦い方の一つにもなるのではないだろうか。アウェイが続く6月の戦いがどうなるのか注目していきたい。