【雑感】2023年J2リーグ 第18節 対いわきFC~守護神の真骨頂~

東京ヴェルディ 0-0 いわきFC

 苦しいチーム状況でありながらもいまの順位からすると勝たなければいけない試合だった。ビルドアップに変化をつけて敵陣までの侵入は出来たもののフィニッシュ部分の精度に欠きスコアレスドロー。試合を振り返りながら攻撃の形をみていきたい。

スタメン

 前節・山口に2-0勝利し、アウェイ2連戦2勝で味スタへ戻ってきたヴェルディ。綱島悠斗が出場停止でSB起用が主の深澤大輝がCBに入る。左SBは加藤蓮が務める。バスケスバイロンは古巣との一戦となる。
 一方のいわきは前節・磐田と1-1の引き分け。GK高木和が契約上出場不可のため鹿野が入る。それ以外の10名は同じメンバーで挑む。

前半

 いわきがJ2初昇格を果たし、公式戦で初対戦となった両者。いわきは屈強なフィジカルを活かし攻守において力強いプレーを武器に創設から瞬く間にカテゴリーを駆け上がってきた。
 ピッチに立つ選手たちのガタイの良さは際立ち、遠くから見ても明らかなものであった。立ち上がり、2トップの近藤と有田を目掛けてロングボールを躊躇なく蹴り込みヴェルディの様子を伺ってくる。山越とプロでは初めてCBを務める深澤大輝は初めて対決する選手にも冷静に対応し、落ち着いて跳ね返す。落下地点への入り方、助走の取り方も安定し終始空中戦は競り勝つ安定感を2名ともに披露した。立ち上がり10分程度はいわきがアバウトなボールを入れて陣地を稼ごうとし、それをヴェルディが跳ね返す構図になる。

 ようやく落ち着き始め、ヴェルディがボールを握るといわきは1442で守る。ヴェルディは状況に応じて右SB宮原が残り可変して3バックになりその前に森田晃樹と稲見が居て、右サイドにバイロン、左に加藤蓮が幅を取る。いわきは有田がDHにマークにつき、近藤がCBへプレッシャーをかけるも全体的に背後を意識してかプレスを積極的にかけてはこなく4-4のブロックはリトリート気味であった。中央を〆ていることでサイドに誘導する狙いのいわき、サイド攻撃を志向するヴェルディとお互いにやりたいようなサッカーにもなっており、右のバイロンがボールに触れることが多かった。ただ、リトリートしてスペースを埋め気味であることと対面した河村が身体を寄せながら守ることでなかなか突破を許さない。ここで時間を作ることで他の選手たちがPA内に戻り8名くらいで守る極端な時もあり、クロスに対しても人数をかけて守る徹底ぶりであった。

 うまく行かないとならば、左サイドで起点を作ることで全体をボールサイドへ寄せてそこから右のスペースで待つバイロンへ大きく展開して仕留めにかかるが、サイドチェンジのパスの精度に欠くことも多くミスから攻撃が終わることが見られた。
 それならばと両SBを押し上げて2CBの横に森田晃樹or稲見が下りて3バック形成しビルドアップに変化をつける。横に広がる4バックや時に宮原が残る3バックから配置を代えて両SBを上げたこととボールキープできる選手が左下に下りたことで左からの攻撃に厚みが生まれる。大外の加藤蓮、ハーフスペースの北島が絡み、深い位置を取る場面が出てきて今度は左からの攻めが生まれる。しかし、最後のところではいわきがしっかりと守り決定機にまでは行かず。

 40分すぎ、ハーフスペースでボールを受けた北島が反転してドリブルで仕掛けてミドルシュート。ボールを左右に動かし深い位置を取るところまでは出来ていたヴェルディはようやく、この日の初シュートになった。いわきは引いてOKと言わんばかりの戦い方であり、ヴェルディは狙い過ぎた、相手にお付き合いしすぎた前半になりスコアレスで折り返すことになった。

後半

 お互いにメンバー交代無しで迎える。リトリート気味だったいわきであったが、後半になり2トップ+4MFが敵陣へ入ってプレッシングをかけてギアを一段上げる。2トップは2CBへ4MFはSBとDHと対面する選手たちをみる。ヴェルディはGKマテウスも使いながらパスを回すことでこのプレッシャーは回避していき、いわき守備陣が全体的に押し上げたことで生まれたスペースを使えるようになる。バイロン、河村、山田と機動力ある選手たちがスプリント、ドリブルをして一気にいわきゴール前まで迫ることが増えて行き得点を狙いに行く。森田晃樹も3列目からの飛び出しでPA内に顔を出す機会が増える。
 北島、河村に代えてマリオエンゲルス、阪野を投入したヴェルディは主導権を握った時間帯に勝負に出る。ただ、いわきCB家泉と遠藤の中央も固くシュートを上手く打たせては貰えない。この2名は空中戦が強くかつ年齢も若く、市場価値は上がっていくだろうし、今後も注目の存在である。
 ヴェルディはサイドで優位性を作り仕掛けて行くもクロスの精度を欠き味方に合わない場面が続く。最大の決定機は前節・山口戦のように宮原との連携から抜け出した森田晃樹が右サイドからグラウンダーのクロスを入れると攻撃参加した左SB加藤蓮が合わせる。フリーであったがボールが足元に入り過ぎたのかふかしてしまいチャンスをモノに出来なかった。完全な一点モノであった。

 敵陣へ押し込み前がかりになるもののセカンドボールの回収、カウンターのピンチの芽を摘む活躍を魅せたのが稲見である。相手選手を吹き飛ばすくらい力強いフィジカルを武器にプロ初得点を決めた栃木戦以降、ぐんぐんと成長を続けこの日も中盤底でボールハンターと化していた。

 攻め込まれるいわきであるが、敵陣では人数をかけたプレス、ショートカウンターからミドルシュート、CKからのヘディングシュートと攻撃のリズムを失ったわけでは無く虎視眈々と一点を狙っている。すると、敵陣深い位置からのスローインでボール奪取するとPA内で加藤蓮に倒されてPKを獲得。願っても無いチャンスでキッカーはエース有田。対峙するのは守護神マテウス。マテウスは有田との間合いを完全に制し、左へ横跳びして見事にPKセーブ。ここまで見せ場の少なかった守護神がここぞと高い集中力で大ピンチを防ぐ。流石の一言であった。

 ヴェルディは佐川、疲労の色が見え始めた深澤大輝と加藤蓮に代えて千田と奈良輪を投入。バイロンとエンゲルスが走力活かした仕掛けから幾度とクロスを供給するも味方には合わず。縦に仕掛けるばかりで相手に読まれていたようにも見えて、カットインする動きがあっても良かっただろう。

 終盤にCKなどから山越を目掛けて何度もクロスボールが入りヘディングシュートを試みるも枠を捉えることは出来ず、結局スコアレスでタイムアップ。ヴェルディにとってはホームでまたも勝利を奪えず勿体ない試合となった。

まとめ

 絶体絶命の大ピンチをマテウスのビッグプレーで凌ぎ何とか勝点を獲得。急造最終ラインも踏ん張りを見せてこの日も完封シャットアウト。ただ、昇格を目指すと公言しているからには勝たなければいけない試合であり、ホームで4試合勝ち無し、得点もPKによる1点のみの状況は深刻だ。いくつかの崩しは見られたもののこの日の攻撃も淡泊になり決め手を欠いてしまった。外弁慶ぶりというのかアウェイでの堂々とした戦いに対してホームでは主導権を握りボールを支配できるからかプレーの緩急が少なく、テンポが上がってこない印象がある。
 ホームでは全勝するくらいに勝点を稼いでいくことが今後の昇格戦線に生き残るには必要になってくるだろう。次節もホームでの一戦、奮起に期待したい。