大久保嘉人が語る『プレーの判断が3テンポ遅い』とは何か考えてみる

 Jリーグが中断してから早2か月以上が経過。サッカーどころか経済活動までも停滞してしまい、先行きの見えない日々が続いている。
 私はと言うと、DAZNでJ2開幕戦をフルタイム全試合視聴したり、配信されている過去試合を視聴したり、WOWOWでラリーガやEUROの試合を視聴したりしながら大人しく過ごしている。『STAY HOME』にだんだんと慣れてきてサッカーの無い日常が普通になってきた。

 この状況で、様々なエンタメがあれこれと無料配信を始めてお家で過ごし時間を楽しませてくれている。同じようにヴェルディもいろいろな動画を配信している。公式レポーターしてお馴染みの高木聖佳さんが新加入した大久保嘉人へサポーターから募集した質問へ答えるインタビュー動画のなかで気になるコメントがあり、ちょっと考えてみたい。

Q.今のヴェルディに足りないものは?
A.プレーの判断が3テンポ遅い
 ・磐田在籍時のJ1昇格PO決定戦でガツンと行ったところ
  ヴェルディはビビッており開始5分で勝てると確信した
 ・J1の選手たちよりもプレーの判断が遅い
 (技術が劣っているというものではない)
 ・志すサッカーは面白いからこの点を極めていきたい

 この『3テンポ』というものを私が愛読している『footballista』から引用すると、こういう解釈がある。

プレー判断とは ①『認知』⇒②『選択』⇒③『実行』 の3つの局面に分かれる。

厳密には事細かな局面とその事項はあるが、ここでは超ザックリとその例を記載してみる。

①『認知』 その選手が自身の置かれている状況を把握すること。
例:周囲にいる選手(味方、敵)やプレッシングの強度、
  ボールホルダーとの距離や身体の向きなど。
②『選択』 その状況を理解した上で、対応できるプレー候補を挙げる
例:ボールホルダーへ近づいてボールを貰う。
    そのままの位置でボールを受けて周囲に居る味方へパスを出す。
  ボールホルダーから遠ざかり相手選手を振り払いボールを受けて
  ドリブルする。
③『実行』 上記のプレー候補のなかから選択したプレーを実行すること。(=プレーの結果)

 大久保自身はセレッソやマジョルカ、神戸、フロンターレなどを渡り歩き、テクニックやフィジカルは勿論のこと、この『プレーの判断』も研ぎ澄まされてきてここまでのキャリアを積み重ねてきたのだろう。
 例えば、ストライカーとして大活躍をしていたフロンターレ時代には中村憲剛という名パサーが居た。優れたテクニックに加えて、ピッチを俯瞰的に見れる視野の広さや抜群の戦術眼を持つこのパサーとは同じ高いレベルでテンポを合わせられることによってゴールを量産することが出来たのだ。

 一方で、ヴェルディへ移籍した初戦となった徳島戦では、なかなかプレーのイメージが共有できずにたまらず、ボールを貰いに下がってきて組み立ててという場面が目立った。現地で見ている限りでは、現時点で共有できているレベルにあったのはレアンドロ、高橋祥平くらいであった。チーム全体としてもボールを貰ってから次のプレーを考えているかのように、停滞することが多く、対戦相手の徳島の選手たちとは明らかにプレースピードが劣っていた。(結果も0-3の完敗)
 日頃のインタビューでも語っているが、才能ある若い選手たちへの期待の表れを思わせるように、試合後も18歳の山本理仁や藤田譲瑠チマには強い口調でいろいろと話ししているように見えた。

 感覚的なものからの発言なのか、何かしら定義があってなのか真相は分からないが、上記のようなものが合わさり生まれた3テンポの溝。DAZNマネーもあり増々広がるJ1との格差。ヴェルディサポーターは先述の磐田戦や天皇杯の試合で痛感しているだろう。良い選手たちがステップアップし易い環境になってきており、この溝を埋めていくのはだんだんと難しくなっている。日々の訓練や選手個人の覚醒でプレーの判断を向上させていき、3テンポを2テンポ、1テンポと少しずつ詰めていきチームの総合力を上げることが昇格にも繋がっていくだろう。

 大久保のインタビューでのコメントに対しての自分なりの見解を残しておきたくて久々に書いてみた。早く再開される日を待ち望み、これからも過ごしていく。また何かあれば、気まぐれ更新をするかも。