【雑感】2023年J2リーグ 第30節 対ブラウブリッツ秋田~俺が居るんだ!~

東京ヴェルディ 1-0 ブラウブリッツ秋田

 極端な戦い方をする秋田ペースに押されるも徐々にヴェルディが主導権を掴む。昇格争いに何とかしがみ付きたいがヴェルディが執念で奪ったルーキー佐川の値千金のプロ初得点での劇的勝利を飾った試合を振り返りたい。


スタメン

 前節・清水に0-1で敗戦し、4位転落したヴェルディ。この日は古巣対戦となる千田がスタメン復帰。負傷した深澤に代わって奈良輪が久しぶりのスタメン起用となる。
 一方の秋田、こちらも前節は大宮に後半ATに失点を許し0-1で敗戦。前節から右SH1枚を入れ替えてお馴染みの1442で臨む。

前半

 もはや説明不要とも言えるくらいJ2のなかでも超個性的な戦い方をする秋田、少ない資金力でありながらも連続して残留を果たし、今季もここまで中位につけるのはお見事である。ヴェルディ同様にホームで勝ち無しが続いており、秋田は5月以来の白星を目指す。

 予想通りに立ち上がりからロングボールを入れてそこからのサイド攻撃やスローイン、CKをセットプレーをする秋田。齋藤にボールを集めてスペースに周囲の選手が走りチャンスクリエイトするヴェルディ。秋田に合わせてしまうようにロングボールから頭上をボールが行き交う展開に。スローイン時は時間をたっぷり使ってロングスローを行なうと「らしさ」全開の秋田ペースで試合が進む。2DH藤山と諸岡を中心にセカンドボール回収で上回る秋田が縦へドンドン入れて行くもヴェルディの2CB千田と平が跳ね返し何とか凌ぐ。

 マイボールになってもロングボールで空いているスペースを狙ってそこから仕掛けるもシュートまで持って行けないヴェルディは宮原もしくは奈良輪のSB1枚を残して後ろ3枚でのビルドアップと変化をつけて状況打開を試みるもシュートゼロの展開が続く。1442のブロックを敷いてアンカー森田晃樹を消していることでヴェルディの攻撃にはリズム、テンポが生まれない。

 飲水タイム明けの26分、中原がドリブル突破して相手選手を交わしていくことでようやくゴール方向を向いてのチャンスが出来ると、そのあとにも齋藤からの縦パスを染野が落としとPAへ近づきはじめる。ただ、秋田もボールを握るとセットプレーを時間をたっぷりかけて活かすとシュート、ここはベテランの奈良輪が身体を張ったシュートブロックを魅せる。研ぎ澄まされた感覚でその一瞬にすべてを懸ける奈良輪の流石のプレーである。

 30℃を超える暑さでのアウェイゲームではあるが効果的な攻撃を繰り広げる回数は少なく、シュートさえままならず前半を終えたヴェルディ。

後半

 ハーフタイム、お互いにメンバー交代はなく後半を迎える。先にチャンスを作ったのは秋田だ。前半から変わらず深い位置まで抉るとCKやスローインを獲得し、得点機会を伺う。前半の出来からしたメンバー交代をして刺激を入れたいヴェルディであるが、残念ながらゲームチェンジャーとなるのが北島くらいしか居なく、代えることでパワーダウンの逆効果が生まれてしまうこともあってか交代無く臨む。シーズン終盤に来て、頭を悩ませる課題に直面してしまった。

 52分、自陣深い位置からのビルドアップ。秋田の前線からのプレスを剥がして右サイドから作ると左スペースを駆け上がる奈良輪へロングフィード。奈良輪のクロスに染野が頭で合わす。ギアを上げて一気に攻め込んでやっとフィニッシュまで辿りついた。

 55分、秋田は齋藤に代えて丹羽を投入、FW同士を入れ替える。再び右サイドからの攻撃を魅せるヴェルディ、宮原が中原へ当てると森田晃樹へ戻し、ダイレクトでボールを入れるも中で加藤蓮が上手く合わせられずシュートは弱くなった。選手が追い抜く動きも出てきて、秋田のブロックを乱し始め、間、間でボールを動かすことでリズムが出てきたヴェルディ。流れを引き戻したい秋田はたまらず青木、三上、中村を投入し3枚替えを行ない前線4枚が早いタイミングですべて入れ替わる。

 フレッシュな4枚が再びプレスのスイッチを入れ、ボール奪取するとショートカウンターからシュートまで持って行く秋田であるが精度を欠き、マテウスの仕事にはならなかった。こちらも得点力不足に泣く状況を象徴するような場面であった。

 後半の飲水タイム明け、ヴェルディは中原と加藤蓮に代えて綱島悠斗と山田を投入。綱島悠斗がDHへ入り、晃樹がトップ下、齋藤が右へ回る。山田は左SHに入る。稲見と悠斗のフィジカルゴリゴリのダブルボランチとなる。ボールを持ったら高い位置へ入っていく悠斗は、前節とは異なり攻撃意識高く試合に入り、75分には左サイドからドリブルでPA内へ侵入してシュート。残り試合に並々ならぬ決意を感じるものである。

 80分過ぎ、ヴェルディは奈良輪と齋藤に代えて山越と北島を投入。右SBに山越が入って宮原が左へ回る。左SH山田が右へ回って北島が左SHへ。宮原が左SB起用は加入後、初だろう。前節後半からSB起用してその良さが消えたされてパッとしなかっSB稲見を止めた采配は評価したい。

 87分、疲れが見える染野に代えて佐川を投入し交代枠をすべて使い切ったヴェルディ。残り時間にすべてを懸ける。秋田も高田に代えてベテラン加賀を投入し5枚使い切る。

 人数をかけて攻撃を仕掛けるためボール奪取するとカウンターとオープンな展開へ。92分、マテウスからのゴールキックを相手CBと競り合った山田がこぼれ球を自ら素早く広い抜け出すとGK圍と1対1のビッグチャンス。しかし、圍の好守に防がれてヒーローになれない。FWであればこういうところを決めて欲しいものだが、ちょっとスランプに陥っているのだろうか。

 その直後スローインからの流れで獲得した左サイドからのFK。まるで岡山戦を思い出すようなシチュエーション。キッカー北島が蹴り込んだ鋭いボールはファーへ。圍が触れることが出来ず佐川がヘディングで流し込みゴールネットが揺れた。後半ATにとうとう均衡が破れた。ここまで無得点のルーキー佐川が大きな大きな仕事をしてのけた。北島のキックの質の高さもお見事である。

 これが決勝点となり、苦しい試合をものにしたヴェルディが3試合ぶりの白星で上位3チームを追走する。

まとめ

 岡山の夜を思い出す劇的なドラマを再び見ることが出来た。絶対に勝ちたいという執念、最終盤にチーム全体としての高い集中力で掴んだゴールだった。左利きの大型CFとして期待されつつもプロの壁に苦しんだ佐川にとっては嬉しいプロ初得点であり、とても価値あるものとなった。これを自信に残り試合も活躍を期待したい。
 コンパクトな陣形を保って、セカンドボール回収からの攻撃、セットプレーと攻守において終始徹底したプレーを行なう秋田に幾度となく空中戦を強いられた千田と平であったが相手を圧倒し、完封に貢献。頼もしい限りだ。
 対策はしてきたはずだが秋田の良いところを出してしまい、後手に回ったヴェルディであったが前節・清水戦の反省と課題も活かして盛り返し土壇場ではあるが勝点3を得て、自動昇格戦線に踏みとどまった。