【雑感】2022年J2リーグ 第34節 対ツエーゲン金沢~長いトンネルの先に見えるものとは~

東京ヴェルディ 1-2 ツエーゲン金沢

 久しぶりの得点が生まれて期待はしたもののまたもミスからの自滅で3連敗。悪い場面の方が多かったがかすかに見えた希望の光もあり試合を振り返ってみたい。

スタメン

 前節・熊本に0-1で敗戦を喫し、2連敗、3戦無得点となったヴェルディ。この日は加藤蓮、石浦大雅と出場停止明けの馬場晴也がスタメン復帰。システムは1442で臨む。
 一方の金沢は前節・甲府と2-2の引き分け。7戦勝ち無しの状況である。藤村、豊田の2名を入れ替えてこちらも1442システムで臨む。

前半

 天皇杯を含めた7連戦の初戦を迎えたヴェルディ。コンディション面での離脱者や連戦を考慮してやり繰りなど序列不透明であるがこの日はSH起用が続いていた河村をトップにSHには石浦大雅を起用した。サイドから仕掛ける選手が不在の中、左利きのテクニシャンの大雅を逆足配置してどうなるか見物であった。

 スタート時、守備時は横並びになる2トップであるが攻撃時は染野が下がって河村と縦関係のようになる。ボール非保持の金沢は1442から2トップ豊田と林が縦関係で馬場晴也を消しながら2CBへプレス、ボールサイドのSHがSBへ、DHが森田晃樹へプレスかけて同数でのプレッシャーをかけていく。

 ヴェルディがボールポゼッションに苦しむかと思いきや金沢は積極果敢にプレスをかける訳でもなく。左右に揺さぶりズレが生まれると中央にポッカリと生まれたスペースで馬場晴也がフリーでボールを受けることが何度か見られた。主に左で作り馬場を経由して右へ展開していた。ボールを受けた石浦大雅。ドリブルで1人2人を剥がすタイプでは無いため仕掛けてもそうそうには交わし切れず、ここで時間を作り染野や深澤大輝とユニットになって崩そうとする狙いが見られた。

 実際に大雅が時間を作ることがあったが時間を作り過ぎたのか金沢の守備陣が整ってしまい崩し切れない状況であった。サイドで起点を作れていたのであればフィジカル活かしたフリーランが出来る稲見にインナーラップからPA内へ侵入してもらう手が面白かったかもしれない。ただ、この日、彼は不在でありこのシーンを見れることはなかった。左では杉本竜士が仕掛けて、クロスを上げる場面が見られたが中で上手く合わせるには至らず、クロス精度にも欠くことがあった。

 後方で時間を作り、金沢の選手たちを誘き寄せ、最前線の河村を背後のスペースへ走らせることも何度か見られた。持ち前の走力で奮闘するも中へ切れ込むことは少なくゴールから遠ざけるように金沢守備陣が上手くコース取りをしていた。上述のように大雅が起点になり敵陣でボールを回すことが出来ても時間をかけすぎたからか河村は相手CBを背負うようなことが続き、前を向けず、ブロックの外側でボールを回させられる状況になる。こぼれ球をミドルシュートで対応するも枠を捉え切れず、3戦無得点の悪い流れが続く攻撃の迫力に欠けてしまった。下がってボールに触る染野、前線でキープする河村と2トップがフィニッシャーでは無く組み立て役になってしまい、これでは相手に脅威を与えることは出来ないだろう。

 一方で金沢の攻撃、ヴェルディの守備を見て行くとこれまでよりも金沢はボールを繋ぐことが増えた印象であった。これまでは2トップ、サイドの選手の速い攻撃が主であったがそれに加えてのオプションになっているだろう。2CB+2DHが組み立てSBを交えてビルドアップをしていく。ヴェルディは2トップ、SHがプレスをかけて行くも中1週間とは思えないくらいに身体が重くキレもあまり感じられず強度が低かった。今季開幕ごろや城福体制初期のようなアグレッシブさに欠けプレスバックもあまり見られず、いまのチーム状況を物語るように元気が無かった。

 それもあり金沢は後方から繋いだり、フリーの選手は前線の豊田と林を目掛けてロングボールを入れる場面が見られチャンスを作る。谷口栄斗と加藤蓮の間をよく突かれて入れ替われたり背後を取られたりと危うい場面がありプレーに軽さがあった。

 そんな悪い予感は的中してしまう。金沢が自陣から左サイドへ大きく展開。カウンターから長峰がクロス、谷口栄斗がその処理をしきれずファーサイドの豊田までボールが渡りシュート。シュートそのものは決して強烈では無かったがマテウスの手をすり抜けてゴールイン。金沢が先制に成功する。

 またも良いところがないまま前半に1点ビハインドとなったヴェルディ。CBンドカと谷口栄斗がビルドアップでは無くて、1列2列と持ち運び変化をつけここ数試合では見られなかった後方からの攻撃をする工夫はあった。しかし、決定機を作り切れず0-1で折り返す。

後半

 お互いにメンバー交代なしで後半を迎える。DHの位置に入る森田晃樹、馬場晴也が高い位置まで入りボールに絡み反撃に出るもGK白井のセーブもあり得点を奪うまでには至らなかった。

 55分すぎにヴェルディは河村と杉本竜士に代えて佐藤凌我と西谷亮を投入。もう少し見たい気もしたが水曜日の天皇杯を考慮してか早い時間での交代になった。

 投入された佐藤凌我と西谷亮はゴールを挙げるべく、ベクトルを前にしてゴールへ迫る。すると、森田晃樹が左サイドへ流れてボールを受けて中へクパス。石浦大雅が落として西谷亮が強烈なシュート、白井に防がれるも佐藤凌我が押し込んでヴェルディが4戦ぶりの得点で同点に追いついた。交代出場の2人がいきなり得点に絡む。

 同点に追いつかれた金沢は力安と杉浦恭平を投入。久しぶりの得点で呪縛を解かれたかのようなヴェルディに逆転の期待がかかる矢先、次のゴールが生まれる。

 自陣でボールを繋ごうとするヴェルディ。深澤のパスがミスになり相手に渡ると杉浦恭平が持ち運び守備陣を引き付けて並走する林へパス。林は落ち着いて流し込み金沢が勝ち越しに成功する。

 失点の原因にもなった深澤大輝は懲罰交代ともとれるように石浦大雅ともにベンチへ下がり山口と加藤弘堅が入った。

 7月の大宮戦以来の出場となった山口。サイドから仕掛けられる選手が少ないなかでは期待がかかるSBだ。小柄ながらも負けん気と体幹の強さを活かして左サイドを単騎突破を試みる。いまのチームにおいてアクセントをつけられる貴重な存在であり、仕掛けをすることでサイド守備にも重きを置くことになった相手には中央のテクニシャンたちが活きてくることになる。

 山口の突破からチャンスを作ったものの同点を挙げることは最後まで出来ず、このまま1-2でタイムアップ。金沢は8戦ぶりの勝利を挙げた。一方のヴェルディは4戦ぶりの得点を記録したものの3連敗と事態は深刻である。

まとめ

 決めるところを決めて、守護神の活躍で執念の勝利を飾った金沢。勝つにふさわしい戦いぶりであっただろう。一方で久しぶりの得点で悪い流れを断ち切るかと思ったそう甘くは無く3連敗を喫したヴェルディ。河村と染野の2トップで臨んだものの攻撃面では起点になるが決定的なシュートを打つことは少なく、周囲の選手と役割が反対ではと感じてしまうばかりである。守備時も前線からのプレスやプレスバックが緩く、質の問題も否めない。これでは3トップに戻して森田や石浦を守備時には前に上げる方が強度が増すと思えてしまうばかりだ。夏の移籍で加入した染野はカテゴリーを下げたとは言え、活躍を魅せることが出来ておらず期待外れになっている現状だ。敵陣でのプレー時間を長くすることを求めているサッカーをする上では先ずは守備強度を上げることが必要だろう。
 サイドでの仕掛けに物足りなさを感じる中で久々に出場した山口のプレーには一筋の光が見えた。短い時間ではあったが、やはり一人でガツガツと上がっていく選手の存在は攻撃に変化をつけて迫力を増すことに間違いはない。水曜日の天皇杯準々決勝。白黒ハッキリ決める戦いにサポーターたちの鬱憤を晴らす試合を期待したい。