【雑感】2024年J1リーグ 第10節 対アビスパ福岡~良しとするか~

東京ヴェルディ 0-0 アビスパ福岡


スタメン

 前節・川崎Fと0-0で今季初のクリーンシート達成したヴェルディ。スタメンは変わらず11名。山田楓喜はU23日本代表招集のため不在。袴田が移籍後初のベンチ入りを果たす。
 一方の福岡は前節・磐田と2-2の引き分け。奈良、紺野と古巣対戦の北島の3名がスタメン復帰。ベンチには過去2年在籍していた佐藤凌我が入る。

前半

 立ち上がり、木村と染野の2トップにロングボールあててスペースへ走らせたりハイボールを競らして陣地を押し進めるヴェルディ。今季の定着しつつある試合の入りである。3CBを中心に堅守を誇る福岡にとって誤算だったのは木村、染野とのハイボールの競り合いやくさびのパスに対して勝てないケースが多くボールを収められてしまったのは誤算だっただろう。ヴェルディとしては早い時間帯での先制点を目指すべく押し込んだなら積極果敢にシュートを放っていきたかった。お互いにボール保持が苦手であり先制して相手にボール持たせておいてカウンターから得点機会を狙いたかったのが本音だと思う。

 ボール保持をすることになったのはヴェルディ。染野が下りて稲見と2IHになって森田晃樹をアンカーで14141となる。中盤3枚で斜めのパスコース確保してボールを前進させたい意図がある。この可変もオプションになっているがこの日の対戦相手福岡の3CBに対して木村1枚をぶつけるのは酷だった。2CB2DH相手にならこの可変で位置的優位から崩すのも機能していたが最終ラインとの絶対的枚数の不足は明確であり、福岡のブロック外でボールを回すことを強いられる。

 ボール非保持の福岡はコンパクトに1523で構える。暑さもありプレッシングのスイッチは弱く最前線のザヘディの守備タスクは低かった。スイッチ役は古巣対戦で左シャドーの北島だった。千田や深澤大輝と左サイドの選手たちが林や翁長のいる右を向いた時に横パスを消すように立ち位置で牽制をする。
 12分、右サイドへのパスコースを消す動きをする北島の守備から福岡がシュートへ持ち込む。林→翁長のパスを追いかけると左WB岩崎も縦スライドで翁長を挟む。2名からプレッシャーかけられた翁長のパスミスを誘発し、そのこぼれ球を拾ったザヘディが持ち込んでシュート。北島と岩崎の連動した守備が効いていた。

 16分、右サイドから翁長のスローインを木村が競りこぼれ球を染野が思いっきりシュート。距離感良い2トップでフィニッシュまで持って行く。
 21分には人数をかけて押し込むとPA内に入った右SB翁長の速いクロスを左SB大輝が折り返して最後は木村がダイビングヘッド。決まったかと思ったがGK村上が手に触れてクロスバー直撃で得点はならなかった。両SBがPA内に侵入して分厚い攻撃が出来た場面である。ボールを握り押し込む状況時はこういう攻撃を増やしていきたい。

 ヴェルディはボール保持するもところどころでトラップミスやパスミスをして福岡にチャンスを与えてしまう。森田からボール奪取した北島が素早くザヘディに入れると林と千田の間を割るように縦へ走りゴールへ迫る。12分の場面同様に自らのミスでピンチを招く展開にはGKマテウスが怒るのもわかる。途中加入ながら6得点と圧倒的な活躍をするザヘディに対して決定機はここくらいまでで林と千田がマークとカバーを上手く受け渡しシャットアウト。集中した守備を見せてくれた。

 ボール保持していることを受けてヴェルディは30分すぎにポジションチェンジをする。右SB翁長が右SHへ、右SH齋藤が左SHへ、左SH見木がDHに回り、DH稲見を右SBとする。試合を見ててこの交代は3バックでミラーゲームにでもするのかとはじめは思ったがそうではなく4バックのまま。右SHへ回った翁長の良さが出ている訳でも無くて意図がよくわからなかった。試合後の監督会見ではボールを握れていた状況を受けて中盤でさらにボール保持するために見木を中へ入れたと云う。ボールを握れていたと感じたようだがブロックの外で回されていたようにも見えてあまり効果的な変更ではなかった。

 暑さもありプレーテンポがお互いに上がらないまま前半0-0で折り返す。

後半

 ハーフタイム明け、福岡は古巣対戦で気合入りまくりイエローカードを受けた北島に代えて同じく古巣対戦となる大怪我から復帰した佐藤凌我を投入しそのまま左シャドーに入れる。北島よりもボールも貰い方やPA内での動き出し、得点力に優れており実質は2トップのようになる。

 前半とは一転して福岡がボール保持してプレーする時間帯が増える。3CBが開きボールを握り、前線は高い位置で張り、全体を広げることで守るヴェルディにプレッシングさせるのかリトリートさせるか判断を迷わせる。松岡が縦横無尽に動きサポートやスペース空けて前半は影をひそめることが多かった紺野が下がってボール受けて時間を作りマイボールを長くしている。また、WB岩崎と湯澤が低い位置で構えることで稲見と大輝の縦スライドの距離が長くなりフリーでクロス上げられる機会増えサイド攻撃から得点機会を伺う。
 58分、右サイドから紺野が切り込むと中へクロス。凌我が飛び込み点で合わせようとするもシュート打てず左へ流れる。超決定機だった。

 劣勢になったヴェルディは60分、齋藤に代えてチアゴアウベスを投入。福岡は松岡に代えて平塚投入。平塚は左DHに入る。チアゴが右アウトでクロス入れてニアで木村が競り、浮いたボールを染野がバイシクルにシュートを狙うも惜しくも枠外へ。

 63分途中出場の平塚から岩崎への鮮やかな縦パスが通る。ヴェルディはボールホルダーへのプレッシャーやパサーを潰すことを忘れてしまったのかひたすら殴られ続ける展開になる。後半、スペースを与えられた岩崎のスプリント力が光った。90分間ひたすらアップダウンし続けた。

 サイドからのクロスを浴びるヴェルディは千田中心に押し返す。前節に続きスタメンの千田は競り合いやハイボールを遠くへ跳ね返すヘディングの強さと身体能力の高さをピッチ上で存分に発揮している。この2試合で相当株を上げたことだろう。

 71分、ヴェルディは翁長に代えて山見を投入しそのまま右SHに入る。2トップ継続を選んだ。木村は3節C大阪戦以来のフル出場である。染野と木村が2名同時に出場している時は屈強なCBとも互角に対峙できているがどちらかが退くと志向するサッカーをがらりと変えなければいけず、リードしている時の前線でボールキープなども難しくなりこの役割が出来る選手があと1名欲しいところである。
 75分、福岡は疲れが見えてきたザヘディと紺野に代えてウェリントンと金森を投入。80分、ヴェルディは大輝に代えて袴田投入しそのまま左SB。今季リーグ戦初出場。お互いにメンバー交代しながら1点を目指す。レフティの袴田が入ったことでボール回しはスムーズになり、サイズも多少はあることで押されてた部分を盛り返したようには見えた。

 ヴェルディは攻撃参加するWB湯澤と岩崎に対してチアゴと山見がみることで最終ラインを6バックになる。逃げ切り図るように重心は低すぎるが、山見とチアゴの出力、爆発力の高さや強さからすると目の前が空いていればどこの位置からでも発射できた。チアゴと山見の両翼の個人技でチャンスメイクし反撃を試みる。彼らのプレースタイルだと現状は後半途中出場でのゲームチェンジャーが似合うだろうか。

 両者ゴールネットを揺らせず後半ATへ。福岡が立て続けにCK獲得も決めきれず、逆にこぼれ球を拾った山見が大きく前へ蹴り出しスプリントして自らボールに追いつくと中央を並走するチアゴへパス。チアゴは胸トラップからシュートに持ち込むも村上が防ぎタイムアップ。2戦連続のクリーンシートとなるも千載一遇のチャンスを決めきれずまたも勝ち切れなかった。

まとめ

 悔やまれる幕切れだった。0-0で迎えた最終盤、決めれば勝ちという局面だった。ボールを握った前半から変わり後半は20分すぎまで押し込まれるも粘り強い守備を見せてルヴァン杯通して3試合連続完封を果たし最終ラインには守備のリズム、球際の強さや負けん気と勢いは戻ってきているように感じる。
 福岡の堅守がお見事であることも前提ではあったが攻撃陣は2試合連続の無得点とブレーキ。ここまでの試合は数少ないチャンスをものにして得点を挙げられていたが全体的にはチャンス、シュート数があまりにも少ない。人数をかけた分厚い攻撃、選手の立ち位置を意識した崩しも必要であるがもっとダイレクトプレーを増やして欲しい。トラップが1回入ってからのシュート、シュートを打てずに止めるなどすると相手も追いついてしまいボールを取られることも目立っている。これはカテゴリー上がったことによる相手の質の影響もあるが積極性を取り戻して貰いたい。そろそろ稲見砲が見たいな。
 GW連戦の次節は中4日で迎えるアウェイ鳥栖戦。序盤戦から中盤戦へさしかかるなか、勝って勢いつけたいところだ。