【雑感】2019年J2リーグ第38節 対横浜FC~似た者同士の戦いの決め手とは~

横浜FC 2-1 東京ヴェルディ

 秋晴れの下、無情に響き渡るタイムアップを告げる笛。そのあとのナイトゲームも結果で昇格PO圏内への進出が完全になくなり、今季のJ1昇格の可能性がなくなった。両者ともに相手の弱点を突いた攻撃をみせるものの局面での個人能力の差がそのまま結果に表れてしまったような一戦を振り返ってみたい。

スタメン

 2連勝で迎えるヴェルディは前節甲府戦と同様の1442スタメンで臨む。控えには佐藤優平、河野広貴が怪我から復帰した。小池、ベンチ入りした柴崎と永田の3選手にとっては古巣との対戦となった。横浜FCはスピードあるサイド攻撃を武器にJ1自動昇格を狙える高位置につけている。この日は伊野波が出場停止のため田代が一列下がりCB、DHには佐藤謙介と中村俊輔、トップには皆川が起用されて14231システムを採用。

画像1

同じような守備構造を突いたビルドアップ

 両クラブともに相手を見ながら遅攻や速攻とリズムを変えながらサイドを中心に攻撃を仕掛ける特徴を持つ。試合序盤からその形が見られた裏には、相手の守備構造が原因になっていたと考える。
 ボール非保持時1442システムを採用する両者。2トップは相手最終ラインへのプレッシング、中盤以後の選手はリトリートすることが多い。ビルドアップ時のヴェルディと横浜FCをそれぞれ攻守で整理したい。

ヴェルディ攻撃
・主に奈良輪、近藤、若狭がビルドアップ形成
・澤井直人は若干高い位置を取る右肩上がりになる
・ワイドのパライバと小池が幅を取る
・フリーマン森田晃樹や中盤の選手たちがゲームを組み立てる
横浜FC守備
・皆川、レアンドロドミンゲスが相手最終ラインをみる
この時にSH 松尾、中山は最前線まで出ること少なく横スライドもしくはプレスバックをする
横浜FC2トップのプレッシャーが弱く、ヴェルディは最終ラインでボールを持つことが出来る。奈良輪が持ち運ぶや近藤からパライバと小池へ大きく展開する場面が目立つ。中山と松尾は正面から来る相手と背後を見なければいけずフロントボランチのクレビーニョや井上潮音とパライバ、小池の連携でサイドを崩されることもしばしばあった。

画像2

ヴェルディ守備
・パライバと晃樹が相手最終ラインをみる
・ワイド小池はSHへ下りる。対面するサイド選手をマーク
横浜FC攻撃
・主に田代、ヨンアピン+佐藤もしくは中村がビルドアップ形成(DHは縦関係になる)3-1の形をとる
・SB北爪と武田は高い位置を取り、SH松尾、中山と連携する
・CF皆川がポストプレーを担う
基本的にヴェルディの2トップがファーストディフェンダーになり4対2だから難なく突破する。SH化する小池は北爪のマークが主であるが、対面する田代がドフリーになることからここにもプレッシャーかけないといけなくなり2人をみることになる。小池のタスクを把握して芋づる式でサイドで3対2の数的優位を作り中山と北爪がパスワークと持ち前のスピードで活かして仕掛けていきチャンス作る。左サイドのヨンアピン、武田、松尾でも同じことが起きている。小池が最終ラインまで深追いしている場面が序盤はあったけれど、次第に田代と北爪のどちらをマークしたら良いのか迷っているように見えた。

画像3

ストライカーの動きの違いが生んだ得点

 最終ラインからボールを繋ぎサイド攻撃でゴールを目指す両者であったが、PA内まで進入する横浜FCと進入が難しくブロックの外からのシュートを放つヴェルディという構図があった。ヴェルディはサイドからの攻撃を見せるもののボールを収まる位置が低く、小池やパライバ、晃樹がカットインしてシュートするもゴールへ近づいたのは横浜FCであった。CF皆川が身体を活かしたポストプレーで深みを取ることが出来て、攻撃の位置を押し上げる役割があり全体的に選手がPA付近へ近づきヴェルディ選手は押し下げられることになった。
 25分、これまでの積み重ねが形になり先制点が生まれる。ボールを持った横浜FCが最終ラインの佐藤が難なく右サイドの北爪へ展開。反応が遅れた小池は間に合わず、ボールを受けた北爪は皆川へパス。皆川のポストから落としたところ、ヴェルディ選手たちは押し下げられてがら空きになった中盤に走り込んだ中村俊輔が伝家の宝刀左足を豪快に振りぬき、ミドルシュートがネットを突き刺して横浜FCが先制点を挙げる。

積極性があだとなった失点

 1点ビハインドで前半を折り返したヴェルディは怪我を抱える潮音に代えて佐藤優平を投入。リベロに入れて、梶川を1列前のフロントボランチにする。優平はテンポよくボールを回し、時には最終ラインに加わりビルドアップにも参加して流れを変えようと試みる。対する横浜FCは守備を固めて、スピードを活かしたカウンターから追加点を伺っている。メンバーは変わっても攻撃、守備のやり方を貫くヴェルディ。ただ、後半からフロントボランチに入った梶川がこの日はじめてと言っても過言ではない積極的なプレッシングで横浜FC最終ラインまでボールを追いかけた。全体的に前に出る動きを見せたが、ここでうまく剥がされてピッチ中央でフリーとしてしまったレアンドロドミンゲスまで簡単にボールをつながれる。ターンしてドリブルで持ち運び、右サイドを駆け上がった北爪とパス交換からゴール前へ迫り、スルーパスを直人が足を伸ばしてクリアするも皆川がゴールライン際で拾い、折り返しを松尾が詰めて53分に横浜FCが追加点を挙げる。

画像4

攻撃を活性化させるフリーマンの動き

 2点ビハインドのヴェルデイはリヨンジをフリーマンの位置に入れて晃樹、クレビーニョが一列ずつ下がり攻撃の活性化を図る。ヨンジはスペースを見つけてはボールをもらい、簡単にさばいてすぐさま前線へ上がるというシンプルなプレーでボール触ることで攻撃のリズムを作る。

画像5

投入からわずか1分たらず、61分に1点を返す。中盤まで下がったヨンジがボールを受けてそこからサイドへ展開して奈良輪がふわりと上げた山なりのクロスをパライバがつぶれてファーで待ち構えるヨンジが詰める。

 そのあともヨンジは積極的にボールに関与してピッチを動き回り、攻撃を牽引する。サイドアタッカーに下りたクレビーニョがパライバとの連携で縦へ入る動きを見せてPAに進入する場面もあった。しかし、横浜FCは齋藤功佑、松井、イバと実力者を次々に入れて前線からの守備とボール保持を整備する。中山、松尾のスピード、そしてイバのボールキープで試合をクローズさせて1点差を逃げ切りヴェルディは手痛い敗戦を喫して昇格の可能性が完全に消えてしまった。

まとめ

 同じように守り、同じように攻める展開を見せたが、フィニッシャー(トップ)の特徴の差が最後の部分で出た。まるでいまの成績が反映されたかのようだった。昇格、降格のどちらもなくJ2残留で残り4試合は消化試合となる。メンバー変更も考えられるが、だれが出ても同じサッカーをするという永井イズムを積み上げるため次節福岡戦の戦いぶりに期待したい。