2020年シーズン 東京ヴェルディの個人的な見所
大久保嘉人の加入、高橋祥平の復帰というニュースがあった移籍市場も終わり、新体制が始動。1月末からの沖縄キャンプでは、練習試合で8戦未勝利(1分7敗)!!!という豪快な成績をたたき出して、他クラブのサポーターにも衝撃を与える仕上がり具合にとっても不安を覚えながらもキャンプを打ち上げた。それでも手ごたえを感じる選手たち、フィジカル中心にトレーニングが多くて休みが少なかったことで明らかにプレー精度が鈍かったという相手クラブからの心配の声などあるが、蓋を開けてみてどっちに転ぶのかだろうか。
ではでは、前置きは長くなったが、昨年に続き今年もヴェルディに対しての個人的な見所を挙げていこう。
監督・フロント
19年は開幕にあたりホワイト新監督を迎えたことになったが、20年は昨年途中から就任した永井監督が続投する形になる。新加入の選手たちは、(ビジネストークからなのか)このサッカーに魅力を感じてオファーを快諾したという声もある。さらに師匠と仰ぐ吉武氏がヘッドコーチに就任してさらにそのサッカーに深みを増すことが予想される。
昨年からの継続したサッカー、オフシーズンの十分すぎる期間を使っての戦術の落とし込みが出来るはずだから周囲からの期待は上がる。その一方でハードル、ノルマも高くなるだろう。開幕早々から結果を残すことはマストになると考えれる。
フロント陣には昨年限りで退任した強化部長には前千葉監督の江尻氏、長年空席だったスカウトには前千葉ヘッドコーチの堀氏、GMにはアカツキ執行役員でヴェルディ社外取締役だった梅本氏がそれぞれ就任。そして、レジェンド・ラモス瑠偉氏がチームダイレクターに就任した。濃いメンツと言っていいのかネタ感満載と言っていいのか紙一重なフロント陣であるが、クラブとして生まれ変わろうとする意気込みは感じられる。
何よりも楽しみなのは、『サッカー新しい教科書』シリーズでお馴染みの坪井健太郎氏が強化部テクニカルストラテジストに就任したことである。スペインでアンダーカテゴリーの指導者としての実績に加えて、執筆活動、メディア出演をしている。そのサッカー観で、クラブとして進めているヴェルディメゾットを言語化する仕事が期待される。
攻撃
『相手を見ながらサッカーをする』という基本的な考えは昨年から継続するだろう。
①ボールを握って人数をかけて相手守備陣を崩すこと
②スペースや人数によっては手数をかけずにフィニッシュまで持ち込むことの2パターンの使い分けが主となるだろう。
永井サッカーは、『ワイドストライカー』『フロントボランチ』・・・と独特な言い回しで各立ち位置や役割を表現しているが、最大の特徴とも言えるのが『フリーマン』の存在である。
周囲の選手たちのサポートをするために数的優位、位置的優位を作り攻撃を牽引する役割である。ゲームを組み立てることも得点に絡むことも要求され、昨年の主軸だったレアンドロと森田に加えて、新加入の大久保が務めることが予想される。
攻撃に人数をかけて長い時間ボールを握るため、必然的に相手はブロックを敷いて構えてくる。アクセントをつけたりしてこの守備ブロックを崩せないと、ただただブロックの外側をボール回すだけになってしまう。このサッカーの肝はPA内へいかにの多くの人数をかけて進入出来るかがポイントと考える。
フリーマンが『ゲームを組み立てること<<<フィニッシャー』になれるかが攻撃の見所である。
そのためには中盤の選手たちからの前方向への効果的なラストパスを供給できるかにかかっている。
守備
攻撃に重きを置くサッカーを志向するため、ボール非保持時の時間はそこまで多くない傾向にある。しかし、失点の多さが目立ったしまった昨シーズン。
①ボール非保持時のファーストディフェンダーが曖昧なこと
②ネガトラ時のリスク管理
の課題が明確であった。この2点が今季はどう対策されているかが見所になる。
1433気味のスタートシステムからボール非保持時はワイドストライカーの片方が下りてSH化することで1442へ可変することが多かった昨年。2トップがボールホルダーへのプレッシングやパスコースの制限が甘く(約束事が曖昧?)、簡単に第1ラインを超えられてゾーン2への進入させてしまう。相手ボールになった時に簡単にフィニッシュまで持っていかれる場面が目立った。ボール非保持時のシステムやボールホルダーへのプレッシングのかけ方がどうなるのか注目していきたい。
圧倒的なボール支配を目指すサッカーをしていることで全体的にかなり陣地を押し上げる。ハーフコート状態の展開もよく見られて極端に言えば、当時のGK上福元も敵陣へ入ることも見られた。
フィニッシュまで持ち込み相手ゴールキックから再開出来れば、一旦試合が止まることで落ち着く時間を作れる。しかし、中途半端なボールロストによって帰陣を強いられることもしばしばあった。すると、DFや中盤の選手たちの走らされる距離が長くなり、スプリントの回数も多くなることで息切れしてしまい被カウンターからのピンチが多かった。例えば、CBや中盤の選手の押し上げるラインを5m下げてネガトラ時のスタート位置への対策などを練る必要性を感じる。
キーマン
昨年、念願のプロ初得点を含め3得点をマークした井上潮音を挙げたい。1ボランチとしてもボール奪取が冴えわたりようやくプロの世界でその存在感を示しつつある。デビュー当時から優れたテクニックを見せて巧い選手であることには間違いなかったが結果を残すことで怖さを与える選手へ成長していく必要がある。上述のとおり、中盤選手の攻撃力(得点やラストパス)がカギを握ると考える。しかし、ここ数年のヴェルディには飛びぬけた選手がおらず、昇格を果たした他クラブに比べると攻撃力では見劣りしてしまっている状況である。名実ともにヴェルディの顔となるべく若きプリンスには結果に拘ったプレーでチームを牽引して欲しい願いを込める。
まとめ
創立51年目を迎えて、エンブレム変更などブランディングを進めているヴェルディ。フロントも刷新することでクラブとしては次の50年へ着々と変化をつけていることが窺い知れる。GMに就任した梅本氏は『ヴェルディらしさ』を明確に理論化、言語化する重要性についてあるインタビューで述べている。いままではヴェルディらしさの概念がズレることによって、監督選びのズレも生じるとも指摘している。今回、坪井氏を招聘した理由もこれが関係しているだろう。長期的な視点でのチーム作りへの期待は大きい。
ピッチ外での努力が形となっていくなかで、あとはピッチで結果を出すことが全てだろう。低空飛行が続いた昨年、永井監督就任以降の成績は芳しいものではなく一歩間違えると残留争いに巻き込まれるような成績であった。課題が明確なだけに、シーズンに向けてどう取り組んできたのか注目してその先に見えてくる昇格目指して今シーズンも楽しみたいと思う。