【雑感】2024年J1リーグ 第37節 対川崎フロンターレ~悔しさの余白~

東京ヴェルディ 4-5 川崎フロンターレ


スタメン

 首位神戸相手に後半ATの同点弾で引き分けに持ち込んだヴェルディ。前節からは3週間空いての試合となる。山田剛綺に代えて山見を右シャドーに入れて13421システムで臨む。
 一方の川崎Fは11/22(金)に浦和と後半45分間だけの中断試合を行ない、26(火)にACLをタイでこなして翌日に帰国してわずかな準備期間で臨む。

前半

 躍進した今季のホーム最終戦を迎えたヴェルディ。奇しくも相手は2008年ホーム最終戦でJ2降格を味わった川崎F。因縁の相手に勝ってリベンジを果たしてシーズンを締めくくりたいところ。

 立ち上がり、お互いにロングボール主体で入る。ヴェルディは前節までは木村と山田剛綺の2人がターゲットであったがこの日は山見が出ていることもあり木村を走らせるように右サイドの深い位置を狙う。対する川崎Fは左のマルシーニョのスピードを活かすようにハイラインになったヴェルディ最終ラインの背後を狙う。

 形が実ったのは川崎Fだった。ヴェルディはボール非保持時に1523で構えて山見木村見木の3枚でプレス。これに対して川崎Fは2CB高井と佐々木に加えて左SB三浦が残ったりDH山本が下りて後ろを3枚にして左でボールを持ち対面する山見を誘き寄せる場面が目についた。山見は佐々木、三浦、山本を見ることになりここで数的不利になりパス供給源を作られる。G大阪戦や湘南戦と同じような形を作られる。

 それならばと対策として最終ラインのWB宮原が縦スライドで対応して矯正的に2対2を作ろうとする。そうなると今度は前線のマルシーニョが綱島悠斗と1対1になる。この瞬間にロングボールを入れて、かけっこが始まる。圧倒的なスピードのマルシーニョに悠斗は置き去りにされて川崎Fの術中にハマる。噛み合わせからして宮原をマークさせるようにしていた方がよかったのではと思ってしまった。川崎Fとしてはヴェルディに5-4でブロック敷かれて蓋をされるよりもあえて低い位置でヴェルディのプレスを誘発し5-2にさせてWB翁長と宮原に守らせるスペースを広くしていた方がCB悠斗と谷口栄斗を横に広げることができこれが功を奏した。

 川崎F守備時は最終ラインをハーフラインくらいまで高くして全体を圧縮し前線からのハイプレスをすることでヴェルディに圧をかけて中盤の司令塔DH森田晃樹と齋藤へのパスコースを遮断。ボール奪取すると家長や橘田らの卓越したテクニックで丁寧にボールを扱いカウンターが無理だと判断するとスローダウンさせてゆっくりとボールを握ることでヴェルディの陣形を整えさせると再びマルシーニョを使う。ヴェルディは圧を受けながらロングボールを蹴り木村を使いファウルからFKを獲得。サインプレーをみせるも効果的なものにはならなかった。

 先制点はやはり川崎Fのロングボールからだった。悠斗がヘディングでマテウスへバックパスを狙うも中途半端になると山田新とマルシーニョが抜け出してPA内で帰陣した悠斗に山田新が倒されてPK獲得。これを自ら決めて川崎Fが先制。皮肉にも16年前と同じく前半のPKであった。前回はジュニーニョが失敗したが今度は成功となった。

 先制点を挙げた川崎Fがペースを握ると今度は右サイドからの連携を見せる。攻撃参加したSBファンウェルメスケルケンのクロスにファーサイドで山田新が強烈なヘディングシュートを叩き込みあっさりと川崎Fが2点目を挙げる。ここは悠斗がジャンプしていなかった安い失点である。

 1点目の失点以降、ボールを繋げないヴェルディはDH晃樹or齋藤がCB脇に下りることで後ろの枚数を増やしてボールタッチを増やしてリズムを作り始めた。ホーム最終戦であまりにも不甲斐ない立ち上がりから失点を重ねるヴェルディは34分にミス連発する悠斗に代えて染野を投入。得点を奪いに1442へシステム変更する。この交代が的中する。

 1442になってからは2CB+1DHの3枚にしたこととリードした川崎Fが1442でリトリートしたことでヴェルディがボールを触れる時間が増えてきた。後ろからつなぎ中盤を経由することができ始めると、最終ラインと駆け引きながら背後を取った染野が抜け出して左サイドから侵入してクロスを上げる。そのこぼれ球に反応した見木がチョンの動きをよく見ながら流し込み前半のうちに1点を返した。

後半

 1点ビハインドのヴェルディは後半も前半同様にロングボール主体で入る。ターゲットが木村に加えて染野と2枚。染野はジャンプのタイミングが上手く空中戦勝利も多く敵陣にボールを落としてくれて陣地を押し進めることができた。すると左からのCK。山見がインスイングのボールを入れると千田がヘディングシュート。山田新がブロックするも谷口栄斗がすかさずプッシュして同点に追いつく。

 同点に追いついたことでエネルギーが出てきたヴェルディ。選手たちの足も動きプレッシングにも勢いが出てくると敵陣でボール奪取、ボール保持する機会が増える。3列目の森田晃樹、齋藤、SB翁長が追い越す動きをして人数をかけた攻撃を何度か見せる。厚みのある攻撃を試みるもシュートまでに至らず勝ち越し点を奪えない。

 流れを取り戻すべく川崎Fは選手交代。佐々木、山本に代えてジェジエウと河原を投入。直後のプレー。左サイドからのスローインの流れからこぼれ球をファンウェルメスケルケンが抑えの効いた綺麗なシュートを放ち川崎Fが再び突き放した。

 ヴェルディは翁長と齋藤に代えて松橋優安と松村を投入。山見が右SHから左SHへ回り見木がDHへ下りる。同じ1442システム同士になりオープンな展開。がっぷり四つでぶつかると分があるのは個の力で勝る川崎Fだった。見木のパスがかっさわれるとそのままも持ち運ばれてシュート。そのこぼれ球をマルシーニョがボレーシュート。宮原はクリアしきれずそのままゴールイン。差は再び2点に広がった。ピッチ中央で見木に遠野が足を蹴ったのはファウルに見えたがノーファウル判定だった。

 またも2点ビハインドとなったヴェルディであるが今季を象徴するような不屈の精神を魅せる。左サイドで獲得したFK。山見が入れたボールにチョンは飛び出すものの触れられずファーサイドで再び谷口栄斗が合わして得点を挙げて差は1点に。

 ヴェルディは木村、山見に代えて山田剛綺と食野を投入。ボール保持時は栄斗・千田・宮原の3枚が残り、優安に高い位置を取らせて松村と両翼。中盤に見木・食野・晃樹のトライアングルと変則システムにする。交代出場の剛綺はPA内で立て続けにシュートを2本放つも決めきることができない。それでもホーム最終戦の2万6,000人を超える観衆を力に攻めるヴェルディ。80分すぎ右サイドからCKを獲得。途中出場の食野がアウトスイングのボールを入れると混戦のなかから川崎Fのクリアが味方にあがり浮き上がったボールはこの2得点の栄斗の前へ。FWさながらのボレーシュートを叩きこみ再び同点に追いつく。なんと、谷口栄斗はCBながらセットプレーからハットトリックを達成。

 土壇場で同点に追いついたヴェルディ。逆転へ最後の力を振り絞りゴールを奪いに行くも交代出場のジェジエウが立ちはだかり流れの中からは決定機を作れない。対する川崎Fも交代出場選手も絡みチャンスを作り互角の展開。後半AT、ロングボールの競り合いからボールが転がってきた山田新が巧みな身のこなしでキープすると思い切りよくシュート。これが突き刺さり決勝点。予想外の撃ち合いに終止符を打った。山田新もハットトリックを達成した。

まとめ

 オープンな試合にしてしまい壮絶な撃ち合いになるとは予想もしなかった。3週間ぶりの試合に試合勘が鈍っていたのか、マルシーニョを上手く使われたのか分からないが試合の入りは悪く川崎Fの巧さが際立った。染野を投入して攻撃的になりそこから得点を挙げる采配はお見事であったが攻撃力ある相手にここ最近対応しなかった4バックでスペースを守るのはできなかった。以前にも何度か言及しているようにこのチームの戦いはいかにロースコアで我慢比べできるかが似合うサッカーであるだろう。次節はいよいよ最終節・京都戦。躍進を遂げたシーズンの締めくくりにふさわしい試合を期待したい。

 ホーム最終戦ということでもう少しだけ。2008年降格を味わった相手に勝つことで浄化できると思っていたが、今回のそれは敵わなかった。この1年はこれまでの悔しさを噛み締めてもう二度と降格してたまるかと言わんばかりに声を張り上げるサポーター、それに呼応するように全力を出し切る選手たちがピッチで示し勝点を積み上げて行く姿には感銘を受けるものであった。ひたむきに懸命に戦い鹿島や横浜FMと往年のライバルにも勝ってひと桁順位でフィニッシュできたことは上出来のシーズンであっただろう。
 この試合でも、2点ビハインドになっても、いまのチームなら追い付くのではと心の片隅でそういう気持ちは有りそれをやってのける粘りや懸命さは今季を象徴するものであった。それだけに最後に失点を許して敗戦した悔しさはかなり堪えるものであった。この感情がクラブやサポーターの来季の原動力になる、そう強く確信できたきっかけとなったと1年後に思い出したい。