マガジンのカバー画像

テキスト版:昭和40年男の梶原一騎論

33
(株)クレタバブリッシングから刊行されている隔月誌『昭和40年男』にて、2013年から2018年まで連載した「昭和40年男の梶原一騎論」の全話の本文とコラムをテキストのみで再録。
運営しているクリエイター

#ちばてつや

最終回「あしたのジョー」(その3)(2018年8月号より本文のみ再録)

最終回「あしたのジョー」(その3)(2018年8月号より本文のみ再録)

 「燃えたよ...まっ白に...燃えつきた...まっ白な灰に...」
 1973年4月。世界チャンピオン、ホセ・メンドーサとのタイトルマッチにて己のすべてを燃焼し闘い抜いたジョーは、リング上で真っ白な灰となって燃え尽きた。約5年4ヶ月に及ぶ長期連載で本作に集中するために途中から連載を1本に絞り込んだちばも同様だ。登場人物に強く感情移入しすぎて体調を崩し、いく度か休載を重ねながらも最後まで描き終えた

もっとみる
第三十回「あしたのジョー」(その2)(2018年6月号より本文のみ再録)

第三十回「あしたのジョー」(その2)(2018年6月号より本文のみ再録)

 『あしたのジョー』は、セリフや設定の変更を一切認めない梶原の原作改変を許された唯一無二の作品である。たとえば、有名な真っ白に燃え尽きたラストシーンや、ジョーに淡い思いを寄せる乾物屋の娘・紀子とのデートシーンなどは、梶原の原作にはなく画を担当したちばてつやによる創作なのだ。
 この事実を広く一般に知らしめるキッカケとなったのが1995年に刊行された梶原評伝の名著『梶原一騎伝 夕やけを見ていた男』(

もっとみる
第二十九回「あしたのジョー」(その1)(2018年4月号より本文のみ再録)

第二十九回「あしたのジョー」(その1)(2018年4月号より本文のみ再録)

 今年は『あしたのジョー』連載開始50周年記念イヤー(※1)である。少年マンガ史に残る不朽の名作と賞賛され、多くの読者から今なお愛され続けている作品であることはご存知のとおり。1968年に『週刊少年マガジン』誌上で連載が始まって以来、舞台に実写映画、2度にわたるテレビアニメ放送・劇場版アニメ公開も話題となった。近年でも人気アイドル歌手の主演による実写映画や、パチンコやCMキャラクターへの起用をキッ

もっとみる
第一回「あしたのジョー」(2013年8月号より本文のみ再録)

第一回「あしたのジョー」(2013年8月号より本文のみ再録)

 僕らが物心ついた頃には、梶原一騎はすでに劇画界の大御所だった。ヒットメーカーとして少年誌だけでなく青年誌にも連載の場を広げ、数多くの作品がテレビアニメ化や映画化されていたのだ。マンガから、テレビから、そしてスクリーンから幾多のドラマを浴びるようにして育った僕らは(好むと好まざるとにかかわらず)梶原作品から何らかの影響を受けている。大人になった今でもその影響を自覚させられる場面があるという人も多い

もっとみる