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テキスト版:昭和40年男の梶原一騎論

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(株)クレタバブリッシングから刊行されている隔月誌『昭和40年男』にて、2013年から2018年まで連載した「昭和40年男の梶原一騎論」の全話の本文とコラムをテキストのみで再録。
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2020年3月の記事一覧

第二十四回「愛と誠」(その4)(2017年6月号より本文のみ再録)

第二十四回「愛と誠」(その4)(2017年6月号より本文のみ再録)

 単行本売り上げ7百万部、劇場用映画3作、テレビ&ラジオドラマ化、イラスト集、写真集…。あの時代に『愛と誠』はなぜあれほどまでに読者を魅了し、大ヒットしたのだろうか?これについて、梶原本人は後に次のように述懐している。
 「当時、世の中はインスタント・ラブが横行し、連れ込みホテルにはディスコから直行する若者が増えていた。(中略)若者達の間に広がりつつあったインスタントな愛、安易な性意識に対して“男

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第二十三回「愛と誠」(その3)(2017年4月号より本文のみ再録)

第二十三回「愛と誠」(その3)(2017年4月号より本文のみ再録)

 「そもそもオレが芸能界と接触するようになったキッカケは、昭和四十八年、スポ根漫画にいき詰まり、『愛と誠』という作品を書いてからだ。(中略)映画界とは、原作者として深いつながりがあったが、まだビジターで、芸能界との中枢とはほど遠かった。それが『愛と誠』が松竹で映画化されたことによって、芸能界のヒノキ舞台へとオレは出て行くことになる」(こだま出版刊『わが懺悔録』より)
 『愛と誠』が劇画原作者・梶原

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第二十二回「愛と誠」(その2)(2017年2月号より本文のみ再録)

第二十二回「愛と誠」(その2)(2017年2月号より本文のみ再録)

 前号までに、梶原一騎作品史において『愛と誠』が重要な意味を持つエポックな作品であると述べてきた。その理由として本作の成功により、それまで果たせなかった“スポ根作家”のイメージからようやく脱却できたからであることはすでに書いたが、しかし理由はそれだけではない。“男女の愛”という壮大なテーマに挑み、“女性を描く”ことを見事に成し得たという点でもエポックだったのだ。
 それを裏付ける意味で、『愛と誠』

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第二十一回「愛と誠」(その1)(2016年12月号より本文のみ再録)

第二十一回「愛と誠」(その1)(2016年12月号より本文のみ再録)

 『愛と誠』は劇画原作者・梶原一騎にとって重要な意味を持つエポック的な作品である。本作の成功が“梶原一騎=スポ根作家”のイメージを払拭しただけではなく、さまざまなメディアミックスがなされ、これによって芸能界や映画界との交流が広がって、後に映画製作者や格闘技プロモーターなどの多彩な活動にもつながっていく。
 そうした意味で、梶原の劇画原作者としての半生を一本の横軸で表した時に、栄光の頂点(ピーク)に

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第二十回「新巨人の星」(その4)(2016年10月号より本文のみ再録)

第二十回「新巨人の星」(その4)(2016年10月号より本文のみ再録)

 『巨人の星』がそうであったように、『新巨人の星』もまた、読売巨人軍という実在の球団が背負う“常勝”という宿命に強く影響された作品であった。
 前者は巨人V9のうちの6年という黄金期に連載(1966~71年)されたことが相乗効果となって一大ブームを巻き起こしたのは誰もが認めるところだろう。だが、『新巨人の星』では、そのことがネガティブな影響を及ぼす。
 「青年、成人向けの豪華巨編劇画」、「人生一大

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