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有機合成のためのフロー化学

【FC Books_NO.1】最終更新日:2020/5/19

はじめに
 これから、フロー化学(Flow Chemistry / FCと略す)に(広義に)関連する本を少しずつ紹介します。多分、連続フロー合成やマイクロスケール有機合成に関連するものが多くなりそうです。
 基本的に、筆者が購入するか図書館等で借りるかして、多少なりとも目を通した本に限ります。このため、本の種類はさほど増えませんが、悪しからずご了承下さい。その代わりと言っては何ですが、図書館検索結果については、定期的に更新する予定です。
 対象としている読者は、初めてフロー化学に取り組む「大学の理系学部生」の方々です。ただ、同様な立場の「産学官の研究者(開発者)」の方々に対しても、参考になれば幸いです。
 それでは、記念すべき最初の本を紹介します。今春、出版されたばかりの最新刊「有機合成のためのフロー化学」です。

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1. 書誌情報(Amazon.co.jpより)

タイトル: 有機合成のためのフロー化学
著者: F. Darvas (編集), G. Dorm´an (編集), V. Hessel (編集), 小林 修 (著), 小野澤 俊也 (著)
出版社: 東京化学同人 出版社サイト(目次あり)
言語: 日本語
ISBN-10: 4807909924
ISBN-13: 978-4807909926
発売日: 2020/4/6

2. 内容紹介(個人的な感想)

 対象としている読者の方々にとって、正にこの本が「FCへの扉を開くもの」となるでしょう。もちろん、これだけで充分だと言うことではありませんが、最高のスタートが切れることは間違いありません。
 2015年以降、FCが、特に実用化に向けた取り組みの点で、国内外で大きく進展(本格化)しました。原本の出版が2014年であることを考えると、その追加情報が欲しいところですが、その点にもこの本が応えてくれています。

本書は、(中略)特に有機合成に必要となる部分を抜粋して翻訳した。これに加え、最先端のフロー精密合成および企業での取組について、新たに2章を書き下ろしで加えた(7章、8章)。私の知る限り、有機合成のためのフロー法に焦点を当てて基礎から実用例までまとめた成書は世界的にみても例がない。 「まえがき」より抜粋

 さらに、9章には実験手順が具体的に記載されていますので、初めて連続フロー合成実験に取り組む際の拠り所になります。ちなみに、記載されている反応例は、次のとおりです。
 Wittig反応、Prilezhaevエポキシ化反応、ペプチド触媒立体選択的反応、銅触媒アジド-アルキン付加環化反応、ジアゾ移動を経るアジド合成、Ritter反応、トリフェニルホスフィンモノリスを用いるAppel反応、一重項酸素を用いたSchenckエン反応、以上8例
 ただ、取っつきやすい反面、(仕方ないことですが)原本に比べページ数も半分以下になっているため、実施例が半数以下になったことは少し残念です。ちなみに、日本版未掲載の反応例は次のとおりです。
 Swern-Moffatt oxidation、Synthesis of silver nanoparticles、1,2,3-triazole synthesis、Heterogeneous catalytic deuteration、Aldol reaction、Pyrrole synthesis by Paal-Knorr cyclocondensation、Diels-Alder Reactions、Nef Oxidation、Suzuki-Miyaura cross-coupling、Oxidative amidation of aromatic aldehydes、Boronic acid/ester synthesis via lithium halogen exchange、Vilsmeier-Haack formylation of electron-rich arenes、Chemoenzymatic flow synthesis of cyanohydrins、以上13例

3. 図書館所蔵検索

 《検索日:2020/5/19》
3-1. 大学図書館(CiNii Booksによる)
 ”該当する書誌は見つかりませんでした。”
3-2. 国会図書館(NDL ONLINEによる)
 ”一致するデータは見つかりませんでした。”
 ただし、国立国会図書館サーチには、書誌情報がありました。
3-3. 公立図書館(国立国会図書館サーチによる)
 所蔵(2) 東京都立中央図書館、大阪府立中央図書館

4. 参考までに

4-1. Flow Chemistry(I: Fundamentals, II: Applications)
 「有機合成のためのフロー化学」の原本(2冊)です。

4-2. March's Advanced Organic Chemistry
 最新の第8版から、FCの項目「7D. FLOW CHEMISTRY」が新たに加わりました。冊子版の336〜338ページを、ぜひご覧下さい。3ページ分のスペースしかありませんが、参考文献が数多く掲載されています。

今回はこれまで。

更新履歴
2020/5/19 出版社サイトのリンク追加、図書館検索結果更新

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