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国連科学委員会の、東電福島原発事故による放射線影響への報告

こんばんは。今日もお疲れ様です。

今日は原発に関するお話です。

東日本大震災から10年の今年、2021年3月9日、原子放射線の影響に関する
国連科学委員会(英文名:the United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation:以下、UNSCEAR)は、東京電力福島第一原子力発電所事故の放射線影響に関する報告書2020年版を公表しました。

これは、2013年に最初に報告された報告書の最新版だそうです。
(毎年年次で報告書が作成された訳ではなく、「2015年、2016年、2017年で
3冊の白書を刊行した」そうです。)

この報告によると、「放射線被ばくが直接の原因となる健康影響(例えば
発がん)が将来的に見られる可能性は低いと言及している」とのことで、
2013年時点、あるいはそれ以降で新たに加えられた知見をもってしても、
蓄積され、蓄積されつつあるデータを見る限りにおいて、2013年以来、
一貫してその結論には変更がない、ということです。

そして、日本人が最も気にすべき甲状腺がんについては、特に、以下の通りに結論づけています。

当委員会はまた、放射線被ばくの推定値から推測されうる甲状腺がんの
発生を評価し、子供たちや胎内被ばくした子供を含む、対象としたいずれの年齢層においても甲状腺がんの発生は見られそうにないと結論付けた。
公表されているエビデンスを鑑みると、被ばくした子供たちの間で甲状腺
がんの検出数が(予測と比較して)大きく増加している原因は放射線被ばくではないと当委員会は判断している。むしろ、非常に感度が高いもしくは
精度がいいスクリーニング技法がもたらした結果であり、以前は検出されなかった、集団における甲状腺異常の罹患率を明らかとしたに過ぎない。
さらに、一般公衆の間で放射線被ばくが関係している先天性異常、死産、
早産が過剰に発生したという確かなエビデンスはない。

そして、引き続き廃炉に向けて現場で作業している人達への言及もありました。

作業者に関して、白血病と全固形がん(甲状腺がんを含む)の発生の増加が見られることはありえそうにないと当委員会は結論付けた。

海洋への影響はどうでしょうか。

当委員会は、放出された放射性物質の陸域、淡水域、海洋域環境への移行・拡散に関する知見もまた評価した。2012年までに、福島第一原発沖の沿岸
域の海水でさえ、セシウム137の濃度は事故前のレベルを超えることは
ほとんどなかった。福島原発事故による放射線被ばくとの明らかな因果関係について、野生生物集団に対する地域限定的な影響はありえそうにないと
当委員会は、引き続きみなしているが、放射線レベルが増加した地域では、有害な影響がみられた植物や動物も観察されている。検査された食物の
ほとんどで、放射性物質の濃度は事故後の時間経過とともに急速に減衰
した。

UNSCEARの2020年報告書は、以下からダウンロードできます。

国連科学委員会による、真摯なデータの収集・蓄積・解釈と、合理的科学的知見に基づく上記の結論に、心からの経緯を表します。

同時に、日本学術会議を含む我が国の政府・研究機関が自前で同じ作業が
できないこと、作業すべきであると提言もなく、自前で作業ができる体制を作らなければならないという政策判断もないことに、堪らない恥ずかしさを感じる次第です。

そして、発行されてから1か月近くも経ってから、ようやくこの情報が
ネットに流れて来たことも、もどかしさを感じます。

今週、この英文報告書をじっくり読むつもりです。

では、また。


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