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実録ICT支援員「旧式の授業」

 戦禍のキエフにとどまり現状を伝えるべくSNSで発信している市民のいる報道を見て、自分には伝えるものがあるのか考える。
・学校が荒れた原因
・校則のあるべき姿
・オンライン授業の方法
・タブレットの有効活用
・GIGAスクールの現場
・教育現場の現状
これぐらいか?
・定年後の心の変容
・町内会やまちづくり協議会の活動
・年金生活
・老人の人生論
これらも発信する価値は多少はあると思いたい。

 コロナ陽性者と濃厚接触者のために全クラスで授業配信ができるようにしたいとICT支援員に要請があった。これが結構難しい。私がではなく授業者が難しい。
 一番シンプルな方法はGアカウントで教師がMeetかZoomでミーティングURLを作る。次に担当する生徒にURLをメールする。生徒は届いたメールのURLをタップすればMeetやZoomで教師とつながる。もし、学校が閉鎖になればメールで授業時間とURLを送ればいい。もし、コロナ感染者だけがオンライン授業を受ける場合は、その生徒だけがURLをタップして自宅から授業に参加する。ただし、他のクラスの授業も見えてしまうから、できれば教師が担当するクラスごとにURLを作って生徒に送る。
「待てよ」
クラス別にメールを送るためにはクラス毎に生徒のアカウントにクラスのラベルが必要になる。クラスのラベル付きのアドレス帳は支援員が作ればいいが、教師全員にアドレス帳を登録してもらう必要がある。これも大変な作業である。また、オンライン授業を主催するのは担当教師だから担当教師自身がホストとしてURLを作ってクラス別にメールする必要がある。
 これら作業を授業を持っている先生全員にやってもらうのは大変だから、クラス別に授業配信用アカウントを作って電子黒板をホストして担当教師とクラスの生徒をその授業のメンバーに登録する。これなら先生の負担が少ない。なかなかいいアイデアだが、実は発案は私ではなく若い先生である。
 教育委員会もICT支援員の派遣会社もオンライン授業のノウハウを持っていないから教えてくれない。先生たちと協力して方法は考えるしかなかった。

 授業者がタブレットでMeetのURLをタップするとタブレットに電子黒板の映像と欠席者の映像3つが現れる。授業者は画面共有してプレゼン資料などを映しながら説明する。電子黒板は教師の共有画面を大きく映す。教室の生徒は教師の生の声と電子黒板に映ったプレゼン資料を見ながら授業を受ける。欠席者は先生の画面をダブルタップすれば共有画面だけが大写しになって教師の声も聞こえる。ところが「これでは不十分」だと言われた。私には何が不十分なのか理解できない。偉い先生は教師の姿が映っていない授業は「授業ではない」とお考えのようだった。教室の中央から教師と黒板と電子黒板が映るように卒業した3年生のすでに初期化してあるタブレットを用意しろと命じられた。MeetとClassroomのアプリをインストールして電子黒板用アカウントでログインして授業に参加させた。修了式後にアカウントをログアウトさせて初期化する作業が増えた。それも11台である。最後は中間管理職の指示に従った。ICT支援員は教師ではなく学校が指示する仕事をする職業だと思ったからである。

 無事に今年度も終わろうとしている。コロナによる欠席者も授業配信を受け取ることができた。結果として教室中央に置いて教師と黒板を写したタブレットは大いに役に立った。画面共有の方法を知らない教師を助けた。先生たちにとって毎時間プレゼン資料を用意する手間がなくて助かったらしい。私の考えは現状を理解していなかったが、私の仕事は役に立った。
 電子黒板が教室にやってきた時、黒板とチョークだけで授業をした教師に向かって小学生が言った。
「旧式の授業じゃん」
この話をしてくれた先生を思い出した。
 最近ネット記事で、プレゼンを使った説明は効果がないとの意見を聞く。資料で説明するのではなく、数枚の映像と身振り手ぶりと表情。そして肉声だけの方が印象に残るという。
「そんな気もする。」
要するに旧式の授業が一番なのかもしれない。チョークを使おうが電子黒板やタブレットを使おうが、目的は生徒の学習意欲を育てることができればいい。

旧式の授業

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