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新聞では伝えきれない教育現場の状況

 中学校は学年単位、小学校は低・中・高学年ごとで仕事をする。もし、教師が休んだり出張だったりしても、非常勤講師は補欠には行かずに学年で空き時間の教師が行く。あるいは、もし担任が欠席すれば、朝の会、帰りの会、給食指導、清掃指導も学年で対処する。そして、非常勤講師や授業を持つ管理職教員が休んだ場合も学年で対処する。
 私は管理職経験はないから正確には知らないけれど、学年6クラスなら担任は6人、学年主任1人、副担任は1〜2名が配置される。そして、学年ごとに非常勤講師が2〜4名程度。それ以外に学年をまたぐ形で通級学級担当者、相談員、カウンセラー、支援員、ALTなどが学年に配置されている。とにかく、学年に配属された正規の教員や常勤教師の空き時間は潰れることが多い。
 非常勤講師は授業だけの契約だが学習プリント、プレゼン作成などの授業準備やテスト作成や成績処理の時間は勤務時間外で行う。彼らは授業を終えてから,あるいは空き時間に授業準備をする。非常勤講師は空き時間を潰されることはないから救われるが、正規や常勤講師は生徒が下校するまでその時間が確保できない。朝部があり、授業後の部活は日没時間によって違うけれども,夏などは夕方6時過ぎまで拘束される。生徒のことを考えれば部活を拒否などできない。朝部も大会で優秀な成績を目指せば止める訳にはいかない。部活のない日は職員会議や学年会、学校行事の計画・準備・運営、研究授業と研究協議会と必ず何かがある。とにかく、落ち着いて職員室で仕事ができる時間は少ない。
 病気や精神的に行き詰まって休む者もいれば、要領よく手を抜く奴やズル休みをしたりする輩もいる。しかし、
「責めたりする気にはならない。」
労働基準法は週40時間を超えてはいけないことになっている。夕方6時を過ぎてしばらくすると管理職が叫ぶようになった。
「残業時間が過労死ラインを越えるから早く帰りましょう。」
家に帰って仕事ができる環境ならいいが、家事もあれば家族の団欒もあるから、最後は寝る時間を削るしかない。教師は聖人君子のような意思の強い者ばかりではない。仕方なしに翌日も出勤し、授業準備のできてない授業を実施する。土曜日と日曜日が来ても部活始動で1日がとられる。最近は連休のどちらかは部活動をしないようになっているらしいが、1日だけの休日も休養や家族サービスに当てることなく貯まった仕事を片付けることになる。これも残業である。
 登校指導・読書タイム・朝の会・授業・給食指導・清掃指導・帰りの会、部活動・会議・授業研究・出張・問題行動に対する生徒指導・モンスター級の親の対応、それらに加えて学校行事がある。とにかく学校のある日は休めない。休めば学年の教師に皺寄せが行く。夏休みや冬休みはあるが、午前中運動場や体育館で汗を流して午後から仕事が捗る(はかどる)はずはない。大会ともなれば引率して1日がなくなる。部活に従事していなくとも大会役員で駆り出される。教員の有給休暇は繰り越しもあるから40日ほどある。部活や備品整理や出張や研修や会議で潰されて長期休業だけでは有給が消化でない。この有給は法律的には仕事をしない時間であるけれども、この時間を利用して自己研修に努める者が多い。
 平日は超過勤務を強いられ、休日と長期休業は部活動に奉仕し、有給休暇をこなすことさえままならない。それでも毎日が充実していると思うから頑張ることができる。
 事前に予想できる産休・育休の代わりは見つけやすいが、年度途中でうつ状態を患って辞める教師の代わりを探すのは難しい。定年している者は常勤の過酷さを知っているから非常勤でなければ引き受けない。若くて教師採用試験に受かっていない者は既に常勤の講師で採用されている。免許所有者の主婦も常勤を頼まれ、渋々常勤を引き受ける場合もあるが、多くは授業だけを条件に引き受ける。職員室は膨れ上がり第2職員室に非常勤や支援員が配置される。けれども管理職を除いた常勤教師だけなら職員室の机は余る。

 新聞に見る「過酷さ」の実態は分かりにくい。以下は私の考える打開策である。
・ クラス人数を30人以下にする。
・ 部活を学校から社会体育に移行する。
・ 行事を少なくする。
・ 教員の採用数を増やす。
・ 教員の給料を上げる。
・ (定年を70歳にする)
一つだけでは意味がない。5つの項目は全て実施して初めて学校が正常に機能する。最後の70歳定年は私の個人的な感想である。だって90歳は当たり前、100歳まで生きる可能性がある時代だから70歳までなら仕事はできる。また、再任用は常勤でなければ学年の戦力にならない。戦力として働ける自信は十分ある。
 60で定年退職し、再任用と非常勤講師とICT支援員として教育現場を見てきた者としての現状報告と提言である。

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