見出し画像

駄作MS番外編 「MS-06JK 応急改造型ザクキャノン」

祖国の護り戦闘団

 宇宙世紀0079年10月、ジオン地上軍欧州戦線は既に膠着状態が続いていた。戦線は既にジオンの攻勢限界点を超えており、これ以上の戦線拡大は困難とオデッサ防衛司令のマ・クベ大佐は判断し、地上部隊の再編と防衛線の再構築を図った。これにより新たな部隊の単位であるカンプグルッペこと「戦闘団」が多く編成されオデッサ防衛の中心を担うこととされた。この戦闘団は既存のモビルスーツ部隊を組み合わせつつ、師団よりも規模が小さく柔軟な運用が可能な部隊として創設されたものであった。
 そしてイタリア北部の防衛戦力として創設された部隊が"Kampfgruppe Die Wacht am Reich"、「祖国の護り戦闘団」であった。元々北イタリアにいた第467MS聯隊(連隊)を解散させ、467聯隊所属のMS大隊を二つの戦闘団に分割することとなり、それが祖国の護り戦闘団であった。基幹部隊を第653MS大隊(Mobileranzug Abteilung 653)、第654MS大隊(Mobileranzug Abteilung 654)の二つの大隊とし、大型重砲を装備する第687砲兵中隊を加えた。これに加えて歩兵部隊と戦車部隊が配置される予定で、これによって北イタリア防衛線が完成する予定だった。戦闘団の指揮官は653大隊の指揮官であったヨハン・クラーマー少佐が担当することとなった。
 祖国の護り戦闘団が装備していたモビルスーツはザクⅡJ型を中心にザクのみであった。しかしその増援部隊の到着は日に日に遅れ、戦闘団全戦力がなかなか揃わなかった。

戦闘団戦歴・前編

 宇宙世紀0079年10月にオデッサ作戦の前哨戦として地球連邦陸軍は欧州戦線各地において攻勢をかけていたためオデッサ防衛司令部も部隊の再編と戦闘の指示で追われており、北イタリア戦線に回せるだけの予備戦力をなかなか確保できずにいた。10月12日にはイタリア南部が陥落、連邦軍のモビルスーツを利用した電撃戦でイタリア中部も陥落、10月20日にはイタリア北部において防衛戦が開始、祖国の護り戦闘団は不十分な戦力で戦わざるを得なくなった。特に東部の防衛を担当していた第653MS大隊が所有するザクは24機と大隊として最小限度の戦力しか残っていなかった。それに対して連邦軍戦力はイタリア北部に広く展開し、653大隊は16機のジム中隊との交戦となった。クラーマー少佐は防衛戦闘を指揮しつつ戦闘団全部隊の指揮もしなければならず多忙を極めたが、その中で待ち伏せを主体にした防衛戦は目覚ましいものがあり、ジム5機を撃破、ジム3機を行動不能にさせた。戦力の半数を失った連邦軍ジム中隊は撤退、防衛線の維持に成功した。一方で653大隊はザク14機を喪失し、残り戦力はザク10機と大隊として壊滅状態に至り、さらに北へと撤退、第687砲兵中隊は撤退の際に全機材を放棄、全滅扱いとなった。クラーマー少佐はアルプスの名峰モンテ・グラッパで防衛陣地の構築を計画した。北部はアルプスが壁となり連邦軍の侵攻は困難であり、基本的に南部からの侵攻のみを警戒すれば良く、高低差を生かした待ち伏せ戦術が生かせることから、少佐は以前より防衛線を展開するにおいてはかなり有利な場所として目星をつけていた。

 11月5日にオデッサ防衛司令部から祖国の守り戦闘団のドムへの装備改編と再編成を指示され一時撤退を目指すものの防衛司令部との通信が難しくなり、装備改編に関しては後回しとなった。11月7日には連邦軍によるオデッサ攻略戦が開始されオデッサは壊滅、防衛司令マ・クベ大佐と残存戦力は宇宙へと撤退した。第653大隊は宇宙へと撤退する友軍の姿を視認しており、クラーマー少佐は「見捨てられたと思った」と語っている。オデッサ防衛司令部との通信途絶を受け戦力の補充と装備改編はほぼ不可能であろうことが確実となった。もはや中隊規模しか戦力がないことを考えればこれ以上の戦線維持は不可能であると判断し、第654大隊との合流を目指した。合流することによって戦線が縮小し北イタリア防衛線は崩壊するが、もはや防衛すべきオデッサがない以上生き残るために合流せざるを得なかったのである。

 654大隊との通信状況は悪く、戦力がどれだけ残っているかも明らかではなかったが11月13日に654大隊がモンテ・グラッパ防衛陣地に到着、合流した。654大隊の稼働するザクも13機しかおらず、合流したところでザクの戦力は23機しかなかった。イタリア戦線残存戦力の寄せ集めと言ってもいい戦力で、本来モビルスーツの定数は48機にもかかわらず半分以下の戦力しかおらず、「名ばかり戦闘団」とクラーマー少佐は呼んでいた。さらに11月18日に残存戦力として第424戦車大隊(マゼラアタック4両)、第531戦車大隊(同5両)を編入した。彼らも大隊としての戦力はもはや喪失した壊滅部隊であり、かつ地球に見捨てられた部隊であった。書類上の手続きとしては別部隊だが、424戦車大隊と531戦車大隊はこの後戦闘団の戦力として共に行動することとなる。

戦闘団戦歴・後編

 クラーマー少佐は大破したマゼラアタックや予備部品を活用して戦力を整備した。まず砲塔を喪失したマゼラベースに余っていたマゼラトップ砲を装備し、突撃砲「ヤークトマゼラアタック」を6両製造、全滅し書類上のみの存在となっていた第687砲兵中隊に配備する形とした。

画像1

祖国の護り戦闘団編成

 さらに余っていたマゼラトップ砲をザクに装備させ、ザクの火力増大を実施した。マゼラトップ砲をザクに持たせるという方法は以前から存在したが、肩にマゼラトップ砲を搭載して遠距離射撃能力を高め、ザクの性能底上げを目標にした。そして完成した機体がMS-06JK、「応急改造型ザクキャノン」だったのである。

画像2

応急改造型ザクキャノン

 この応急改造型ザクキャノン最大のポイントはやはり右肩に装備したマゼラトップ砲である。175mm低反動砲は砲弾の初速が遅くモビルスーツに対しての威力の低さを抱えていたものの、HEAT弾を使うことでその問題を多少なりと解決することができた。加えて脚部ミサイルポッドを腰部アーマーに装備した。足に装備したミサイルは森林地帯で運用する際にはかえって邪魔であり、腰に装備した方が使いやすいという判断であった。
 遠距離戦闘においてスパイクアーマーを使う場面はかなり限られており、スパイクアーマーを外して破損したザクのシールドを流用、両肩にシールドを装備した。また破損した戦車の装甲を利用してシールド、胸部装甲、両肩に30mmの増加装甲を追加した。30mm程度の装甲では気休め程度にしかならないが、それでもないよりはマシだったのである。
 この機体は公式の機体ではないため型番は与えられていないが、現場では「JK型ザク」と呼ばれていたようである。Erstehilferenovierungkanonen Zaku(応急改造型ザクキャノン)とクラーマー少佐は命名したが、あまりにも名前が長すぎるためザクキャノン・イージー、簡易型ザクキャノンと呼ぶ兵士が多かったようである。応急改造型ザクキャノンの頭文字はEでEを表すフォネティックコードはEasy、そしてEasyには簡易型という意味もあるということでザクキャノン・イージーは非常にぴったりな名前だったのである。Eという頭文字から「エーミール」という愛称でも親しまれていた。ザクキャノン・イージーは6機が改造されMS小隊に1機ずつ配られた。

 第653MS大隊のミハエル・ケルシャー曹長は戦闘団指揮官・大隊長ヨハン・クラーマー附下副官として653MS大隊本部中隊第一小隊の二番機として活躍していた。11月12日までにジム4機を撃破していたケルシャー曹長は有望な戦力として期待され、彼の乗機はザクキャノン・イージーとして改造され、モンテ・グラッパ防衛線においては主に遠距離狙撃で活躍した。クラーマー少佐含めた小隊主力はキャノン砲の弾着観測を行い、ケルシャー曹長の射撃を支援していた。

 イタリア北部戦線東部はもはや忘れられた戦線といえ、連邦軍の攻撃は散発的だった。しかし12月8日には連邦軍ジム4機で編成された偵察部隊をクラーマー少佐と連携し2機のザクで撃破・全滅せしめ、ケルシャー曹長も通算撃破数を6としてエースパイロットの仲間入りとなった。主に森林地帯における待ち伏せと遠距離射撃を軸にした局地戦は連邦軍を長く苦しめ、ケルシャー曹長の最終MS撃破数は12と決して多くはないが数少ない戦力の中で善戦し、祖国の護り戦闘団において第3位の撃破記録となった。

画像3

MS-06JK ケルシャー機

あとがき

 と、いうことでザクキャノンイージーを作りました。

画像4

画像5

画像6

 Erstehilferenovierungkanonen Zakuとかいう名前好きなんですが、自分でも覚えられないのでザクキャノンイージーと呼ぶのがちょうどいい気がします。

画像7

 こちらのデジラマ作品に関してはもちろっく氏に作っていただきました。最高にカッコいい感じにしてもらえたので本当にありがたいです。森林地帯、待ち伏せ戦闘でこいつが出てくる絶望感、いい雰囲気が出てると思います。

 ザクキャノンというモビルスーツは以前から存在しますし、ザクハーフキャノンなんていうモビルスーツも出てきてますが、ザクキャノンは試作機で生産数が非常に少ない機体であり、キャノン搭載ザクが要求されていたとしてもザクキャノンのバックパックを利用してザクハーフキャノンを作るなんてのは正直違和感がある感じがします。所詮試作機なわけですからね。
 やっぱりキャノン搭載ザクを作るとなれば一番手っ取り早いのはマゼラトップ砲の移植でしょう、ということでバックパックに無理やりマゼラトップ砲を積みました(一応可動)。ついでにミサイルポッドを腰に無理やり移植してみたり、増加装甲を貼ってみたりしました。後両肩シールドザクはロマンというか、遠距離支援型ザクらしさを目指した結果ですが、「スパイクアーマーないとかザクじゃないでしょ」と友人には言われました。まあ、余ったスパイクアーマーもちゃんと有効活用する予定です。

 初めてちゃんとした手順を踏んでガンプラを改造した気がします。今までは無理やり接着剤で貼り付けるみたいな改造しかしてませんでしたが、今回のはキャノンもちゃんと動くし、ミサイルポッドもちゃんとヒートホーク用の穴に嵌めてますしね。色々難しいところや失敗もありましたが最終的には形になったので良かったかなと思います。

 俺的には、これこそが本物のザクキャノン、と思ってます。やっぱりうちの子がナンバーワンですからね。

サポートしてくださると非常にありがたいです。