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戦艦大和 : ぼくのかんがえたさいきょうのせんかん

 昨日こんな記事を書いたんですけどまあそんなこんなで戦艦大和についても書いておくべきなんじゃないかみたいな気持ちが高まりつつあってざっくり戦艦大和について書こうかなと思った次第です。

  戦艦大和については前も記事を書いたんですが正直言ってこれは内容が足りないというかもうすこし書き足してもいいなというところもあったのでもうちょっとしっかり書こうかなと思った次第。
 ただねー、戦艦大和ってマジで強すぎて面白くないみたいな戦艦なのでこう、評価に困るというか記事にしてもなあみたいなところもあってアレです、まあ書くんですけど。

 まあこんな感じなんで勢いで書いていかないとどうにもならんのですよね、勢いで書きます。

概要

建造目的

 そもそも戦艦大和の建造目的だが、これはもう明らかで最強の戦艦が欲しいというただそれだけのこと。日本海軍は戦艦長門を建造し当時世界最大の主砲41cm砲を装備する世界最強の戦艦を保有した。海軍軍縮条約の締結もあり各国は海軍軍拡を停止したが、しばらくして各国は条約の基準に従って新型戦艦の建造を開始した。そしてこの新型戦艦群の完成を持って長門は旧式化した。
 さらに1937年には海軍軍縮条約が期限切れとなり軍拡が自由となることから各国が条約に縛られず好き勝手軍艦を作れるようになることで日本海軍の優位性は損なわれようとしていた。実際米海軍は条約型戦艦として設計していたノースカロライナ級戦艦の主砲を16インチ(40.6cm)に換装し再設計しており、日本海軍にとっては早急に新戦艦を建造する必要性が生まれたのである。

 米海軍は太平洋と大西洋を相手にしなければならず、軍艦のサイズはパナマ運河によって制限があった。パナマ運河を通行できない軍艦はホーン岬経由で移動しなければならず運用上のデメリットが多い、よって米海軍はそれほど巨大な戦艦を作ることはしないだろうというのが日本海軍の見立てであった(実際にはパナマ運河を拡張して戦艦モンタナを建造する計画が行われていた)。
 さらに日米の国力差を考えると日本は軍艦一隻の性能を高め質で優位となる戦略であったことを考えれば、日本海軍は米海軍には作れないサイズの大型戦艦を建造することを以て米海軍に対し優位を取るという判断に至ったのである。

 アメリカ海軍は当時21ノットと低速の戦艦群しか保有しておらず、日本海軍はそれに対し25ノットの戦艦群と30ノットの金剛級で速度的優位を取っていた。しかしアメリカの新戦艦であるノースカロライナ級は26ノット級であるという情報は日本にも届いており、これらの新戦艦が完成した場合日本海軍の速度の優位性を失わせることにもなり得る。
 当初は大和を高速戦艦として設計するということも考慮されていたが、実際には戦艦大和は主力艦であり長門型や扶桑/伊勢といった旧来の戦艦群とも共同運用するべき軍艦であること、そして何より国防の要たる軍艦が機関トラブルなどで行動できないリスクを考慮しかなり余裕を持った設計となっている。
 大和の建造に関して米海軍は「45,000トン、16インチ (40.6cm) 砲9門、速力30ノット」といった見立てをしていてこれはこれで日本海軍の高速艦艇好きなところも盛り込んだなかなか面白い予想となっている。

 とにかくも戦艦大和は「条約の規制がなくなって好き勝手戦艦を作れる時代になったので好き勝手戦艦作ります」という結果の産物であって、それは何も革新的なものではなく「これまでの日本海軍」の方針の延長線上にあり、日本海軍が日本海軍であるならばどの世界線でも戦艦大和に至っていたであろうということは確実に言える。
 そして条約の規制がなくなり好き勝手戦艦を作ったのは日本だけではなく世界各国がやったことでもあり、アメリカはパナマ運河の拡張まで含めた戦艦の建造計画を立てている。イギリスはライオン級戦艦を建造しているし、フランスもリシュリュー、ガスコーニュ、そしてアルザスに至る新戦艦建造計画を立てていた。日本海軍の戦艦大和建造計画は至って普通の決断であった。

最強戦艦計画

 戦艦大和の建艦計画について考えるにはまず戦艦というものを理解しなければならない。そもそも戦艦というのはその国の海軍における最強の軍艦であるということであり、そして以前から言っている通りその最強において最も重要視されるのは火力である。敵を撃破する能力があるということが最強の条件である。
 実際に日本海軍は金剛の建造を以て軍艦の主砲を36cmに引き上げた。そしてそれ以後扶桑型伊勢型で36cm主砲搭載の主力艦を大量建造し当時世界最強の戦艦戦力を整備した。さらにそのあと長門型の建造で主砲を41cmに引き上げこれも世界最強の戦艦の一角として君臨した。日本海軍は戦艦の性能で最も重視すべきものは火力であり、とにかく主砲の口径を拡大することこそが火力増大に必要な条件であるということをよく理解していた。
 つまり日本が新時代の新戦艦建造において主砲の口径を46cmとしたのは必然であって、日本海軍が日本海軍であるならば主砲のサイズを拡大するという判断に至るのである。
 たとえばイタリア海軍は自国の国力不足で大口径砲の開発ができず、結果的にリットリオ級は38cmで我慢するという結論に至った。しかし日本にはそれだけの国力があり、46cmという未曾有の大口径砲の量産が可能だったのである。

 機関も先ほど書いたようにかなり余裕のある設計になっており、公称15万馬力とされているが実際には16万8000馬力を発揮できる程度の性能はある。大和はほかの25ノット級の戦艦と行動を共にする主力艦であることを考え、また30ノットを発揮するほどの機関を搭載した場合戦艦がさらに巨大になることを考慮すれば27ノットという速力になったのはかなり現実的な判断と言える。今後大和型を量産し戦艦戦力を置き換えることを考えると25ノット級の主力部隊が27ノット級に置き換わることを考えるとアメリカ海軍にとってもこの問題は見過ごせない。
 航続距離に関してもかなり余裕を持たせた設計であったことから航続距離は異常に長く11,000浬を超える航続距離を発揮し、太平洋での運用においてむしろ長すぎるレベルの性能であった。

 防御性能においても大和と対戦した場合それに耐えうる防御という条件で設計されているため果てしなく強固であり、過剰と言えるレベルの防御を施されている。実際三番艦信濃は装甲を薄くされるなど防御面が過剰なのは海軍も把握していた。
 一方装甲材に関しても工数を削減しつつ分厚い装甲を確保するためにVH鋼が採用されており生産性においてもある程度の問題を解決している。

比較

 じゃあ実際に戦艦大和の性能はどうなのか、考えていこうと思いますけれどもね、まあなんかあんまりおもしろくない感じにはなってしまうんですよね。

攻撃力

 主砲の46cm砲なんですが、まあ当然のように最強です。アメリカ軍がSHSとかを使っているのは他国と同レベルのサイズの砲を如何にして性能的に優位を作るかという苦肉の策の結果としてのSHSなわけです。でも日本海軍みたいに砲の口径を拡大してしまえばすべてが解決する。でっかい砲からでっかい砲弾を撃てばすべての問題が解決するわけです。SHSは無理に重い砲弾を撃ちだしているので散布界に問題を抱えたりしているし、結局口径が正義なんです。

 米軍の16インチ(40.6cm)45口径砲Mk.6、サウスダコタ級やノースカロライナ級に採用された主砲と比較していきます。
 Mk.6は18kmで垂直装甲448mm、水平装甲109mmと素晴らしい貫通性能を発揮。しかし46cm砲は20kmで同494mm、109mmと差は歴然。
 さらにMk.6は32kmで266mm、268mmと水平装甲に対して抜群の貫通性のを発揮。しかし46cmは360mm、189mmとこちらも圧倒的。条約型戦艦の水平装甲が150mm程度であることを考えればどちらもオーバーキルレベルの性能を発揮しているもののMk.6はSHSゆえに射程距離が33kmと短いのに対し大和の46cmは射程距離が42kmとまだまだ射程が長く、さらに遠距離になればさらに大和の貫通力は異常な数値を記録することでしょう。

 つまり戦艦大和の破壊力は世界最強の性能であり、そしてその世界最強の火力を持った戦艦は世界最強であるということです。

防御

 大和の舷側装甲は傾斜した410mmの装甲で、甲板の装甲は230mmの分厚い装甲が貼られている。仮想敵である16インチSHSを装備したサウスダコタと交戦した場合舷側装甲は13km以内で貫通、水平装甲は30km以遠で貫通という数値で、戦艦大和は13km~30km圏内であればサウスダコタの砲弾が貫通しない無双状態に持ち込むことが可能。
 一方のサウスダコタは舷側が傾斜した310mm、甲板装甲は複合装甲で150mm以上の性能を発揮すると考えた場合大和は30km以内でサウスダコタの舷側装甲を貫通し、28km以遠で甲板装甲を貫通する。つまりサウスダコタにとって大和に対する安全距離は存在せず全距離で大和の砲弾はサウスダコタのヴァイタルパートを貫通し確実にダメージを与えるのである。

 強いです。サウスダコタは戦艦大和に対し致命的なダメージを与えることは非常に困難。強すぎる。

機動力

 27ノットが遅いとか言われてるけどテストで過負荷で運転したら29ノット出たって言うはなしもあるしね。正直機動力は過剰と言ってもいいレベル。船が太くて短いおかげでめっちゃ舵が効く。舵の利きはじめが悪いけど曲がりだすとめっちゃ曲がるらしい。航続距離も過剰。

 速力による戦術機動力という点では27ノットもあれば優秀な方だし、航続距離もあって機関の信頼性も抜群だから戦略機動力も抜群、何の問題もない。

ぼくのかんがえたさいきょうのせんかん

 いやもう本当にこの一言に尽きる。大和はすべての性能が戦艦として完成していて、大和が指摘されている欠点みたいなものも大概はイチャモンというか、まあ強いて言うならそこが欠点だろうな見たいな話。基本的に弱点らしい弱点はないと言ってもいい。

 そして大和の運用は日米艦隊決戦における切り札であったわけだが、これも結局のところ日本海軍は米海軍の戦力事情をある程度把握していてアメリカ海軍が新型戦艦を大量に建造しているらしいことは把握していた。つまり戦艦戦力で正面から撃ち合っても勝てないということは理解していた。
 だからこそ戦艦大和とかいう最強の戦艦、堅い戦艦を作ることでそれを主力部隊とし米海軍主力と交戦。大和が盾となり攻撃を受け続けることによって金剛を中心とした水雷戦隊の遊撃隊が突撃するのを支援し、空母などと言った補助戦力の優位によって海戦を勝利に導こうとしていた。
 すでに日本海軍は戦艦だけでは勝てないということを理解し、そのうえで海戦に勝利するために必要な戦力として大和を計算していた。そもそも艦隊決戦など起きなかったし、艦隊決戦に勝てばアメリカに勝てるみたいな計算が間違っているというのはそれはそうなんだが、日本が想定していた戦争での大和が果たすべき役割というのは所詮その程度の戦力でしかない。そして大和が30ノットの高速艦であったとしても求められる役目は変わらないし、大和は国の威信をかけて作られた巨大な囮であったともいえる。そしてその役目に即して考えれば全く非の打ち所のない完璧な囮だし、日本海軍にとっての戦艦というのはそういう存在でしかない。
 そもそも日本海軍は戦艦部隊だけでは軍縮条約などもあり不利というところから水雷、魚雷に注力し航空戦力への整備をかなり進めていたが、結果として戦艦戦力はそれら水雷・航空戦力を活かすための巨大な囮、ただただ敵の攻撃を受け続けてくれる的としての存在になっていたことは明らか。

 「大和はアウトレンジ戦術で米戦艦を射程距離外から一方的に攻撃することを考えていた」というのも間違いで、大和型は2隻しかなくその戦力でアウトレンジしたところで射程距離も長すぎて当てるのは難しすぎる。本来は旧型の戦艦群とも協力して敵艦隊と殴り合うための戦力でしかなく、その運用に特別な何かがあったわけではない。あんなに資材と時間をかけて作った秘密兵器なんだからなにか特別なものがあってもいいはずだと普通は勘ぐってしまう。しかし大和はあくまで従来型戦艦の延長線上でしかなく、距離20~30kmぐらいの距離で敵戦艦と殴り合う存在でしかない。その距離において大和を倒せる戦艦はまず存在しないと言っていい。

 戦艦大和なんてものは所詮その程度の軍艦でしかなかったということだし、そしてその性能は各国の戦艦と比して圧倒的優位であり、すべてにおいて最強。戦艦大和とは本来そういう悲しい戦艦であったのだ、と私は言いたい。

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