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対話の作法を身につけて歴史を学ぶスパイダー討論

本田典之「対話の作法を身につけて歴史を学ぶスパイダー討論ー第一次世界大戦の学習から」『歴史地理教育』948、pp.42〜47、2022年。

目次
はじめに
1 スパイダー討論の概要
2 実践報告
(1)事前学習ーテーマを伝える
(2)授業当日①ー対話を見守る
(3)授業当日②ー振り返りには口を出す
3 生徒の反応から考えるスパイダー討論の意義
4 スパイダー討論の課題と、それでも実施する価値

概要
 スパイダー討論が「主体的・対話的で深い学び」を実現するにあたって非常に有効であることを実感している、と本田は最初に述べている。スパイダー討論の最大の特徴は、誰が誰に対してどれだけ発言したかがわかるように、対話の軌跡をシートに記録するという点にある。生徒の対話の記録が蜘蛛の巣のような形に記録されることから、スパイダー討論と呼ばれている。この手法は単なる対話の授業にとどまらず、「対話の可視化」と「評価基準の明示」によって生徒に意味のある振り返りを促し、対話についてメタ認知的に学ぶといった側面もと本田は紹介する。
 本田はスパイダー討論を各単元のおわりに必ず実施している。本稿では、第一次世界大戦の単元での実践を例に取り上げている。本田は生徒に「世の中には、よい戦争と悪い戦争があるのだろうか?」というテーマを提示するが、このテーマを提示する際にもなるべく生徒が興味を引くように心がけていると述べる。今回の場合は、与謝野晶子の詩を紹介することからはじめた。
 続いて当日の授業の様子を紹介しているが、本田は生徒が対話をしている部分ではまったく口を挟まない。事実誤認のような発言がでたときには、補足や訂正ができるようメモを残しておく。これに対して、対話の振り返りの部分では本田は積極的に生徒の話し合いに口を出している。ルーブリックを参照しながら全員で話し合うように促すことが、授業者のここでの役割であると述べている。
 生徒の書いた振り返りコメントを紹介すると、生徒にとって好評価であったことがわかる。しかし本田は、授業者が生徒の対話の内容を把握しきれずに、その補足や訂正を十分に行えない点について大きな課題であるとする。また話し合いが苦手な生徒への対応も、同様にスパイダー討論の課題であると述べている。これを解消するためには、長い時間をかけて安心して話し合いをできる集団を育んでいくしかなく、そのためには生徒ひとりひとりが対話の作法を身につけるしかない、と本田は述べる。このような作法を自然に習得させ、充実した対話を生み出すことによって深い学びを実現する力が、スパイダー討論にはあると実感している、と本田は本稿をまとめている。

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