読書感想文を書いてたんだけど公開するのを忘れてたから今します


1.「嫌われる勇気」岸見一郎、古賀史健

考え方が前衛的すぎてちょっと私には合わなかったです。理解しようと努力はしましたが、全てを掴みきれてはいないですし、私は心理学の専門家ではないので、参考程度にお読みください……。内容としてはアドラー心理学を対話形式で紹介する本なのですが、心理学というよりは宗教の域を出ないように感じます。なぜかというと、まずこの本ではトラウマは存在しないとされます。また、腹が立ったから怒鳴るのではなく怒鳴ることで他人を屈服させかったから怒りの感情を作り出した、というように、常に行動が先立つとされます。さらに具体例を挙げると、「私が精神病になったのは幼少期に虐待されたのが原因だ」ではなく、「精神病になった理由を幼児期の虐待のせいにした」のです。この時点でいかに受け入れがたいかご理解いただけると思います。あなたが不幸なのは過去のせいじゃなくて、あなたが弱いから過去のせいにしてるんだ、と言われるような感じです。確かに合理的ではありますが、それって意識を変えただけで、科学的とは言えないですよね。科学は常に原因→結果のプロセスを辿ります。だから「心理学」とはちょっと違うよね、と私は思いました。この本いわく、過去に何があっても変われるという弱者に優しい考え方だそうですが、厳しい、冷たい!と感じるのが普通だと思います。公式サイトの言葉を借りると、まさに「劇薬」です。(「嫌われる勇気」オフィシャルサイト:http://book.diamond.ne.jp/kirawareruyuki/)

ぶっちゃけ、過去または現在に心の病気になったことがある方にはおすすめしません。少なくとも私はこれまでの人生を否定されたような気分になったので、繊細な方には向いてないと思います。たぶん全部自分のせいだと追い詰められて逆効果になる。意識高い系がより高みを目指すための考え方、程度に解釈すると良いかも。でもいくつかハッとさせられる文があったのでご紹介しておきます。

アドラー心理学では「すべての悩みは、対人関係の悩みである」と考えます。~しかし、宇宙にただひとりで生きることなど、絶対にできない。ここまで考えれば、~すなわち、「自由とは、他者から嫌われることである」

確かに、私は自由に生きたいがために他者から嫌われてきました。(遊びの誘い遠慮するとかね)嫌われるのも「自由のため」だと思えば恐怖心が減りますね。

他者はどれだけ自分に注目し、自分のことをどのように評価しているのか? つまり、どれだけ自分の欲求を満たしてくれるのか?……こうした承認欲求にとらわれている人は、他者を見ているようでいて、実際には自分のことしか見ていません。~「わたし」にしか関心がない。すなわち、自己中心的なのです。~あなたは他者によく思われたいからこそ、他者の視線を気にしている。それは他者への関心ではなく、自己への執着に他なりません。

ハイ……仰る通りですすいません、気をつけます……。自分への執着が激しい自覚はあります……でなけりゃこんなところで情報発信せんとチラ裏に書いてますよ


2.「すみれの花の砂糖漬け」江國香織

江國さんの書かれる文章って自分とすごく相性が合うと勝手に思っているんですよね。大人の女性と少女が同居しているような感性が自分と呼応するというか。根底はどうしても世間になじめない「はみだし者」であるところとか。「そうそう!そうなんだよ!」って指をさしたくなる感じ。この詩集の中だと「退屈」「眺める子供」においてそれが顕著に表れています。「よそゆき」も好きです。内向的な子供の、人生に対する憂鬱がよく出ていると思うのです(全体的にそうですが)。

また、こちらが恥ずかしくなるような情熱的な愛の詩も多数収録されています。江國さんのそういう文章を好きな人って、たぶん山田詠美さんも好きなんじゃないでしょうか。愛される喜びと憂鬱を女性の視点から瑞々しく描いているという点で似通っていると思います。


3.「星の王子さま」サン=テグジュペリ作・内藤濯(ないとうあろう)訳

一番スタンダードな訳者さんと言われているものを選びました。この物語は大きく分けて、サハラ砂漠に不時着した飛行士である主人公と王子様のふれあい、王子様とバラの花との交流、7つの星を旅する王子様、水を求めて砂漠を歩く飛行士と王子様、王子様との別れ、の5つの場面で構成されています。中でも、7つそれぞれの星を巡る王子様とその地の大人との応酬は、些末なことに煩わされる現代の私たちへの皮肉がたっぷりです。以下、解説からの抜粋です。(※「作者」は飛行機の操縦が大好きでした)

作者は高空から”人間の土地”を見下ろしているうちに、取るに足らない物事にこだわって、真実なことのよさを知らずにいる~人間の愚かさを、心から情けなく思ったのでしょう。つまりこの高度の童話には、抜き差しならぬ生活経験の裏づけがあるわけで、普通一般の童話にありがちな空想が生んだ作と考えるには、人間にとってあまりに大切な事柄が、それぞれの場面に織り込まれているのです。

これを読んではぁ~なるほどなと思いました。落ち込んだときとか、ふと空を見上げて「アア自分の悩みなどちっぽけだな」と自分の殻から抜け出せたときのアレです。要するに、我々は目の前のことに囚われて視野が狭くなっているんですよね。特に大人になるほど。内藤さんの解説は他にも気づかされることが多いので必見です。なんか私解説を読むのが本文と同じかそれ以上に好きなんですよね笑 頭が悪いから頭の良い人に言語化してもらえるのが嬉しいとか、別の視点からの発見が得られるとかが理由だと思うんですけど……

しかし作者さんはロマンチストというか、ピュアな人だなあと思いました。この感性を理解はできても共感できないあたり、私はつまらない大人なのだろうと思います(;^^)大人は数字が好きって当たり前やろ論文の説得力を挙げるには具体的なデータを引っ張ってこいって教わったんじゃ!(まさに目先のことに夢中になっている)実際、「かつての童心に生きている人でなければ、歯が立ちようのないたぐい」と述べられています……それはともかく、特別心を打つことはなかったけど、読んでよかったなーと思います。しばらく時間を置いてからまた読んでみたいですね。

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