桜

Happy Birthday

 学生の頃は、厳密には小学生から中学生の頃は春休み期間に誕生日があることがあまり好きではなかった。新学期が始まった時には既にお誕生日が過ぎていて学級でのお祝いも事後扱いだった。
 今は、このさくらの季節に生んでもらったことを両親に感謝しても感謝しきれない。

 世の中に絶えて桜のなかりせば春の心はのどけからまし

 高校一年の担任は古典を教えてくださった。
 彼は「君らは僕の授業の内容は大人になれば忘れるんだよ。でも、この歌だけは覚えていてくれ。」
 そうおっしゃって黒板にカタカタと在原業平の歌を書かれた。その時は決して必死にこころに書き留めた訳ではない。でも、今も先生の言葉を思い起こせる程印象には残っていたのだ。
 さくらの季節になるとこの歌がくちびるからこぼれる。きっと高校生の頃から無意識の中にさくらが生きていて反応したに違いない。

 今年もさくらがほころびはじめる頃に誕生日を迎えられた。今年は退職したこともあって、何年振りかの静かな贅沢な時間を過ごせる。

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