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【真・女神転生 考察】悪魔のかたち

こんにちは。なるぼぼです。

最近すっかりATLUSゲーの中毒になっています。
今日も都市部出たついでにアバチュ1と真4買っちゃいました。
今後やっていこうと思います。(合わせて龍1と龍0買ってるのでそっち優先するかも…)

近況はこの辺にしておいて、今回は真・女神転生のお話です。
10月頭に始めて10/14でクリアしました。
体感30~40時間ぐらいでのクリアですね。ルートはLAWでした。
今回は、LAWルートを歩きながら思ったことをちょこっとだけお話していこうと思います。
テーマとしては「悪魔の役割」とでも言っておきましょうか。
そこまで込み入った話にもならないと思うので、気楽に読んでいってください。ネタバレ注意です。


1.使える悪魔

真1をプレイするにあたって、プレイヤーの持つ悪魔へのイメージは「敵であり仲間である存在」だと思います。
交渉でき、仲魔として戦える一方で、敵対し攻撃してくるのも悪魔です。
こうした「敵であり仲間である」悪魔は、本作を象徴する存在であり、プレイヤーに強い影響を与える存在になっています。

しかし、本作の悪魔は、「パーティーメンバー」として見てみると、プレイヤーに強い情が残らないように仕組まれているように見えてしまいます。
なぜなら、ほとんどの悪魔は「合成素材」でしかないからです。
プレイヤーの印象に残るケルベロス(パスカル)や、特定ルートで仲間になる悪魔はいるものの、大半は合成素材としての扱いを受け、プレイヤーの印象には残らないでしょう。

魔法ソースは限られている、
育成システムは組み込まれていない、戦闘で利用する以外の価値は一切ない。
ゆえに長く使う理由がなく、愛着がわく前に早々に「素材化」してしまう。
魔法は真3以降から遺伝できるように調整されましたが、敢えてこのシステムを導入しているとすると、この「仲魔」は完全にプレイヤーの「道具」です。
たとえそれがセラフ天使であろうと、魔王組であろうと。

結局は自分以外の殴るソース、タルカジャ枠、魔法ソースでしかありません(個人的には魔法ソースとして使うのも厳しいと思いましたが…)。
プレイ中に「あ、結局こいつらも利用するだけの存在なんだ」と思ってしまったあたり、自分の情もほとんど消えかけているのかもしれません。

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この「情」は、後々の作品ではカオスルートの扱いとして描かれています。
例えば、SJのヒメネスは悪魔=道具を真っ向から否定し、共存に希望を見出した存在です。
ただ結局ブ〇ダ的な女の悪魔に根本から否定されている(悪魔至上主義)うえに、ヒメネス自体も愛着が歪んで一体化してしまうため、実現には失敗しています。
エンディングは見事なまでにカオスを体現しています。

その点カオスヒーローは清々しいほどに悪魔を道具としか見ていません。
自身を悪魔合体させたのも力が欲しかっただけです。
彼は悪魔=道具であり、ガイア教でのし上がり自らの力で生きていくことを強く願うキャラクターです。
結局ガイア教に利用されているところが見事なまでに彼を皮肉っているのですが…。

2.使われる人間

あくまで悪魔を道具として交渉し(言い方を変えると騙し)、使役するヒーローとは違い、ロウヒーローとカオスヒーローはそれぞれメシア教、ガイア教に与することで悪魔に利用される側へと変わっていきます。
もっとも、ヒーローの悪魔召喚プログラムもスティーブンからの借り物の力であり、本人の意思で如何様にも扱うことができてしまいます。
結果、LAW、CHAOSのいずれかの陣営に与してしまえば、悪魔に利用されてしまうことと同義になってしまいます。

僕はプレイ後、LAWルートは特にいやらしいルートだと感じました。
だって天使ですよ?
神の千年王国うんぬんかんぬんが胡散臭いとはいえ、人ひとり(ロウヒーロー)を蘇生させる力を持っています。
見た目だけで判断すると白い翼と整った見た目で美しく見えるので、「俺たち立派に人を救うぜ!」といった感覚を覚えます。
実際は「神の王国作るからチミたちは貧民、我々天使に従えば全部解決するよ」という、キリストもビックリのピラミッド構造社会なのですが…。
真2でヒエラルキー構造が厳格化した点を見ても、メシア教の持つ選民思想が強く影響しているのかもしれません。

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さて、LAWの天使やCHAOSの悪魔のような上位の悪魔は、ロウヒーローもカオスヒーローも自分で選択したように見せかけて、支配下に置くことに成功しています。
特にカオスヒーローは、この自己選択の意思を強く持っています。
カオスヒーローは、自らが生き残ることを徹底していますが、結果的にはガイア教に尽くすようになっていきます。
ヤマの傘下に入りつつも下剋上を狙い、イケブクロ入り口では警鐘を鳴らすなどして優しさを見せてくれる彼も、結果的に荒廃した世界の狂気にどんどん飲み込まれて行き、悪魔と合体した力をガイア教に落としていってしまいます(リリスをそばに置いている点は象徴的ですね)。

そんな彼の最期の言葉は、「おれは かみをもしのぐ ちからを えたはず…」です。
一見すると「彼も悪魔合体して力得てたし…。」と思いますが、重要はなのは「かみをもしのぐ」という点。

彼は神のみを敵対視してこのセリフを言っているんです

ということは、悪魔の方は味方と思っているかもしれない。
結果的には自分で生き延びるのではなく、誰かの下に付いてしまった。
彼が合体した悪魔に侵されていたのか、それとも世界の狂気に飲み込まれたのかは定かではありませんが、結果的に悪魔に利用されてしまったのがオチでした。

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ロウヒーローは一見すると自分の意思で動いているようにも見えますが、メシアになった後からは明らかに以前の様子がうかがえません。
恐ろしく千年王国に執着するようになり、それ以外のことはそこまで興味がないようになっています。

彼が復活した時に何が起こったのかはよくわかりません。
もしかしたらメシア教の手による洗脳を受けていたのかもしれません。
ただ、彼は蘇生後、以前のように恋人の成仏を願ったり、ヒーローの母親が死んだときのように誰かに手を差し伸べる様子は微塵も見られませんでした。
彼は、救世主という綺麗な身分になったことによって、人間として本来持っていた暖かな感情を消滅させ、悪魔だけをただ嫌う冷たい感情を植え付けられてしまったと思います。

結果として、彼はヴィシュヌを様呼びするなど、完全に神に使われる存在になってしまっています。
NEUTRALルートでは彼が神に使役される側であることに気づきますが、LAWでは気づく前にカオスヒーローに殺されます。気づくだけマシだったんですかね…。

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いずれにせよ、この各ヒーローの存在は悪魔だって人を使役できてしまうという、主人公の行動への裏返しだと思います。

「そっちが悪魔=道具と思うのなら、こっちだって人間=道具と思って扱ってやる」
悪魔はヒーローなどの悪魔使いに対して、こんな思想を持っていると言えるでしょう。
そもそも単純な力関係は悪魔の方が上なので、よっぽどのことがない限り悪魔は人間を卑下しているはずです。
そしてそれは、実際に悪魔交渉時の一貫した強気な態度に表れています
そんな態度が悪魔の根底にあるのなら、より狡猾な悪魔は爪を隠して人に善、思想を解き、自らの傀儡にすることを思いつくでしょう。
メシア協、ガイア教はそんな悪魔たちと奴隷と化した人間たちの巣窟でしかないのです。

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人間側から見てみるとどうでしょうか。
もし世紀末の世界で路頭に迷い、自らの道を無くした時に神や邪神、すがるべき思想が表れたら我々はどうするでしょうか。
多くの人は思想に飲み込まれ、それがどんなにおかしなものであっても、世界がおかしいのだから当然だと考えるようになるでしょう。
しかし、たとえ思想に縋っても、上にいる超次元的存在の手駒になるだけである、という根本的間違いに気づくことはないのです。

本作は、人間の無情さに触れる作品として、見事な世界観とストーリーラインが構築されていると思います。

3. 信ずべき悪魔

悪魔とは結局何だったのか。

ここで、少し話をずらして、ペルソナシリーズの悪魔を見てみましょう。
真・女神転生から派生したペルソナシリーズでは、悪魔をモチーフとしつつ「自分の一部である仮面」としてペルソナが描かれてきました。
単純に形だけ見ると、悪魔はペルソナの実体化のように見えます。
そうやってみると、悪魔は人間の心の一部であり、感情の揺らぎがあれば変化する存在である、とも言えそうです。

ただし、あくまでそれは後付けの話です。
本作では悪魔は実態としてそこに存在し、明確な理由で人を攻撃します。
それは人格として使役する概念上の存在(ペルソナ)ではなく、明確に現実を生きる生命体であるといえます。
そして、前述したとおり、悪魔も人(悪魔使い)も、お互いがお互いを利用しようとしています。
意思疎通が取れ、お互いに利用価値が存在する悪魔と人間は、同じステージにいると言えるでしょう。

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実際には、人間の方が非力であり無力であることはお伝えしてきたとおりです。
でも、プレイヤーはあくまで「ヒーロー本人」であり、悪魔召喚プログラムで敵対することのできる「力を持った人間=ヒーロー」の前では、両者は同じステージにいる存在なのです。

一方で、悪魔召喚プログラムという運命に導かれなかった人々(NPC)は、結果的に悪魔に支配される道や神を信じる道を選択していきます。
彼らは力なきものとして、力を自然的に持つ神や悪魔(どっちも同じですが)に自らの信仰を捧げることになります。

力を持たない普通の人々から見れば天使や悪魔は文字通り、信仰の対象となる、救い(あるいは破壊)をもたらしてくれる存在です。
ただし、主人公はそれすらも道具として捉えられる。
そうなると、悪魔が人間と同じステージ上にいるのではなく、主人公が神や悪魔と同じステージまで上がってきた存在である、と言えるのではないでしょうか。
神や悪魔を正しく見ることができる者こそ、真の意味で力を得ることができる。
彼は適切に悪魔を用いることができるのだから。

だからこそ、エキドナやハミエル、ゴトウやトールマンは主人公に協力を求めたのかもしれません。
ロウヒーローとカオスヒーローは友人として一緒に来て欲しい、という選択をよこしますが(カオスヒーローはちょっと違うけど)、神や悪魔は本当にシンプルな協力願いをしてきます。
神や悪魔にしか彼の強さはわからなかったのでしょう。
人間にはわからない彼の強さ。
それこそがNEUTRALの可能性を持つ力だったのではないでしょうか。

4.選択する自分自身

ここで少し僕のプレイ体験をお話します。

僕はゴトウとトールマンを討つ際、ゴトウの話を流し聞きしてしまい「聞き直さなきゃ」と思って再入場しました。
そこで「協力してくれるか?」と聞かれ、「話聞きたかったけどまた聞かせてくれるやろ」みたいな安易な気持ちで「いいえ」を選択し、意を介さずして超人ゴトウと相まみえました。

その後、トールマンのもとへ行った時には、「ゴトウみたいなことするとめんどくさいし、トールって歴代ペルソナだとジオ効かねぇし言うこと聞いておくか」ぐらいのノリでトールに協力する選択肢を選びました

結果、LAWルートから抜け出せなくなりました。

自分は安易な気持ちでLAWルートを選択してしまったのです。

おそらく、相当なフラグ管理をしない限り、ゴトウかトールマンのどちらかを生かしたままICBMが落ちると生き残った方のルートが確定します。
逆を言えば、NEUTRALで崩壊前を生き延びることができて初めて、崩壊後のルート選択に介入することができます。

どちらかを生かすことは、それだけ大きなカルマを背負うことになります。そして、それはいかなる方法であったとしてもプレイヤーの選択でしかありません。
僕のように何も考えずどちらかを生かしてしまったが最後、全ての結末が決定します。

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これを知って僕は、「このゲームは業が深い」と思いました。
自身の何気ない選択が結果として大きな顛末をもたらす。
最初の誰に与するか、もちろんどちらに与さないかも選べるうえで崩壊の予兆前にとてつもない選択肢を用意する。
それは崩壊後の世界を知らない初見のプレイヤーにはあまりにも酷な選択肢のように思えます。
このゲームには悪魔が潜んでいる。そんな風に思ってしまいました。

ただし、僕はその選択肢に最終的には自分で決断を下しています。
どうあがいてもNEUTRALやCHAOSには戻れない、そう思ったとき僕はLAWに味方することを決断しました。
何気ない動機であったとはいえ、結果的にLAWという陣営に与することを選んだのです。

もちろんやり直すこともできます。
しかし、それはできなかった。
シンプルに難易度が高いこと、レベリングに時間がかかりすぎるから戻し作業なんて到底やりたくないと思っていたこと、そういっためんどくさい所も理由だったかもしれません。
でも、自分のやり方で進めて行くうちに戻れなくなってきて、中盤のタイミングで「もう後戻りはできない、屈することでしかこのゲームはクリアできないんだ」と思ったんです。
そこで、自分の気持ちが「LAWになっちゃった」ではなく、「覚悟を決めてこのルートと向き合うしかないんだ」と変化したことに気づきました。

たとえ巻き込まれ、流されたとしても自分の決断となる。
仮に本人が自分の意思ではなかった、と言ってもゲームはそれを許容しない。
自分の選択(正しかろうが間違っていようが)と向き合うことが、このゲームが真に「業の深い」作品だと考える所以だと僕は思います。
最初からゴトウもトールマンも倒し、NEUTRALルートを選んだ方はまた違った捉え方をするかもしれません。
それも真1の面白さだと思います。

5.まとめ

いかがでしたでしょうか。
あんまりまとまってないような気もしますが、例の如く殴り書きなのでご容赦ください。

とにかく真1はオリジナリティにあふれ、尖りまくりながらもこの世界観に人を飲み込んでいった、素晴らしいゲームだと思います。
カルマの面白さを理解したい方、ポストアポカリプスの神髄に触れてみたい方には是非ともおススメできる作品です。

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