VivoVecとRACRシステム&UB-VV111(Umoja Biopharma)
今回はアッヴィが連携を発表したUmoja Biopharma…そのVivoVecとRACRシステムという2つのプラットフォームと主要プログラムのUB-VV111を掘っていきます。
VivoVecプラットフォーム
VivoVecは、がん治療の新しい方法です。通常、CAR T細胞療法では、がんを攻撃する特別なT細胞を作るために、患者の細胞を体外で特別に処理します。しかし、この方法は時間がかかり、複雑です。
VivoVecでは、このプロセスを患者の体内で直接行います。具体的には、レンチウイルスベクター(一種の遺伝子を運ぶ道具)を使って、患者のT細胞に直接遺伝物質を入れます。これにより、体外での複雑な細胞処理を必要とせず、CAR T細胞を生成できます。
結果として、治療までの時間が短縮され、より多くの患者がこの治療を受けることが可能になると予想されます。
またこのレンチウイルスにはT細胞に選択的に到達する処理も施されています。
RACRシステム
もう一つの構成要素の一つが、RACR(Rapamycin-Activated Cytokine Receptor)システムです。
このシステムは、体内でCAR T細胞の生存と増殖を促進するために設計されています。RACRシステムの特徴は、ラパマイシンという薬剤を使用し、CAR T細胞の生存と拡大に必要な信号を与えます。
通常、前駆細胞から免疫細胞を作る際には、外部からの成長因子やサポート細胞(フィーダー細胞)が必要です。しかし、RACRシステムでは、これらの追加的な成分なしで免疫細胞を生成できます。
ターゲット細胞を遺伝的に変更してラパマイシンに結合する受容体を発現させることにより実現します。次に、ラパマイシンが受容体に結合し、これによって免疫細胞の分化と増殖が促進されます。
要は分化に必要な受容体を人工的に作って、それを叩くことで分化を促進しよう!という力技ですね!
ラパマイシンを使っている理由は移植時の免疫抑制剤として使うなら、、、ついでに別の仕事もしてもらおうって感じでしょうか?
UB-VV111の作用機序
Umoja BiopharmaのUB-VV111は、血液がんを対象とした開発中の治療法です。この治療法は、VivoVecとRACRを組み合わせて、特定の免疫細胞の表面に見られるCD19というタンパク質を直接標的としています。
VivoVec技術は、患者に注射されるレンチウイルス粒子を使用して、体内でCD19 CAR T細胞を生成します。これらのエンジニアリングされたT細胞は、CD19を発現する腫瘍細胞を探し出して破壊するように設計されています。
また、RACRシステムもUB-VV111にとって不可欠です。これは、エンジニアリングされた免疫細胞に生存と増殖のシグナルを提供し、その増殖と機能を強化します。このシステムは、安全性プロファイルが確立されているラパマイシンという薬剤を使用し、体内でVivoVecによって遺伝子導入されたCAR T細胞の生存と増殖をサポートします。
つまりCD19に対する特異性とラパマイシンに反応する受容体情報をウイルスの力で導入するわけです。
UB-VV111の試験
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