百合小説harusame

趣味にて地味に創作活動中。自粛中なので、せっかくの機会だからとnote始めました。 主…

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趣味にて地味に創作活動中。自粛中なので、せっかくの機会だからとnote始めました。 主に女性同士の恋模様をテーマとして描いた小説らしきものを書いています。語彙力低め。

最近の記事

最終電車は煙草の香り 貴女と私の秘め事

終電だけは逃さないようにと、在宅ワークの間に溜まった仕事を何とか終わらせ、早足で会社を出た。 今日は上司に酷く怒られてしまった。自分が悪いのは渋々にも理解しているが、自分の情けなさに長い溜め息が出る。 「はぁ……」 11月の冷たい夜風が、マスクに隠した曇った表情を凍えさせる。時折漏れる白い溜め息が、冬の夜空に浮かんで霞んで消えて行った。 指先まで冷えきった両手をコートのポケットに入れて、鼻を小さくすする。 今日はやけに、夜の街のざわめきが耳に響く。 ふと大通りの辺

    • 人と比べるのもうやめよ~こころのはなし~

      あの人と私、比較をして生きてきた。時には大事かもしれないが、しんどかった。心が辛かった。 容姿、キャリア、家庭環境、恋人、なんでも比較していたら 自分が周りに対して驚くほど攻撃的になった。 『ありがとう』と『ごめんなさい』が素直に言えずに、折角のチャンスを無駄にしたり 余計人を斜めに見たり。 『この人は私より~だから、大丈夫だ。』とか、更に私自身が比較して、人を攻撃していたら、 比較している時は気づかないけれど、ふと気づいたら本音で向き合える人が誰もいなかった。 心

      • 親がうるさいので彼女が出来たと言ってみたら その2 貴女と私の秘め事

        母が待つマンションの部屋の扉の前で、私は瀨戸と横に並んで立っていた。 「先輩、いいですか?」 私は、彼女のその重みのある言葉と視線に、深呼吸をして頷いた。 インターホンを押すと、母の弾むような軽やかな声が聞こえてきた。 「あ、お帰りー!」 母が、満面の笑みで玄関のドアを開ける。 「ただいま…」 私は口角をひきつりながら、微笑んだ。 「そちらの方は?」 母が、後輩の瀨戸を見ながら私に尋ねる。 私は、困惑した表情で瞳を泳がせながら、微笑む彼女に目を合わせた。

        • 親がうるさいので彼女が出来たと言ってみたら その1 貴女と私の秘め事

          「経費削減」「エコ」が口癖の上司が、今日はやけに機嫌が良い。仕事中の部下の肩を叩いては、笑顔でその場限りの励ましの言葉を、並び立てている。 仕事の休憩時間になった。 私は自前のコーヒーカップを持ち、砂糖とフレッシュがストックしてある、デスクの引き出しを開けた。 「……マジか…」 何も残っていない引き出しに、静かに一人ショックを受ける。 社員共用のエスプレッソマシンにカップをセットし、コーヒーを注ぐ。カップに注がれるコーヒーをただ見ていると、スティックタイプの砂糖とミ

        最終電車は煙草の香り 貴女と私の秘め事

          怪あやかし 貴女と交わした約束

          「あの社には、決して近づいてはならない。その血を口にした者は、災いが再び甦るぞ。」 まだ幼い私に、年老いた村人達は、口を揃えてこう言っていた。 皆、先祖から代々言い伝えられてきた迷信、または逸話だと誰もが信じていた。 あの日、地獄が訪れるまではーー。 ** 百年前、闇の深まった満月の夜、ある村の集落に"そいつ"は静かにやって来た。 異様な気配に気付いた男の村人達が、一軒の住屋に駆けつける。 すると、むせ返すような血の臭いと、獣のような呻き声が住屋の中から聴こえてき

          怪あやかし 貴女と交わした約束

          昼下がりの並木道 貴女と私の秘めごと

          先日クリーニングから仕上がったばかりのスーツを、クローゼットから取り出す。着慣れないスーツのジャケットに袖を通し、髪をセットして、身なりを整える。    緊張のせいなのか、今朝からよく、深いため息をついている。なぜなら今日は、ネットで知り合った女性と初めて会う、一大イベントなのだ。その後、上手く行けば一緒にランチへ行く予定になっている。 鏡に映る、スーツ姿の自分を何度も確認する。 今までネットを通じて、誰かと会ったりした経験がないせいか、いまいち服装が解らず悩みに悩んだ末

          昼下がりの並木道 貴女と私の秘めごと

          セーヌ川の川岸で 貴女と私の秘めごと

          隣には、名刺の肩書きしか覚えていない男が気持ち良さそうに眠っている。朝の光が差し込むシルクのカーテンを開け、まだ人気の少ない街並みを見下ろす。 高級なランジェリーを身につけ、黒のシャープラインのスーツに身を包む。幾つもの断面が、揺れるように煌めく小粒のネックレスが鎖骨に輝きをもたらしてくれる。 鏡に向かい、鮮やかな赤色のルージュを唇に彩り、艶やかな光沢のあるヒールが足元をより美しく飾る。 そんな優雅な日々を一変させる出来事が起こったのは、澄んだように晴れたある日の朝のこと

          セーヌ川の川岸で 貴女と私の秘めごと

          光と影のカケラ 女の子たちの秘めごと その2

          ** 校舎裏にあるテニスコートから、部員達の掛け声が微かに聞こえてくる。大会が近くなるにつれ、光は毎日遅くまで部活での練習に励んでいた。 今日もいつものように、夕焼けに染まる空の下で私は彼女を待っている。   時折、夕暮れの冷たい風がザァ…っと音を鳴らして校門前に咲く桜の木を揺らす。 同時に桜の花びらが舞い散り、風に吹かれて私の足元をさらさらと流れていった。 近頃、私は光との関係に不安を抱くようになっていた。 教室内で楽しく話していても、どこか上の空のような表情を見

          光と影のカケラ 女の子たちの秘めごと その2

          光と影のカケラ 女の子たちの秘めごと その1

          光は影があるからこそ、輝いていられる。 影を失えば、"私"はそこに存在する意味を無くしてしまうんだよ。 貴女は、そう言って私のことを優しく抱き締めてくれた。 暖かく優しい春風に吹かれて、桜の花びらがひらひらと舞い散る季節。 あの日、高校2年生の私は貴女に恋をしていました。   ** 校門の白い壁に背をもたれかけ、私は好きな人をずっと待っていた。 辺りは薄暗くなり始めていた。 部活を終えた生徒達が友達と賑やかに帰って行く。 夕焼けに染まった空を渡って行くカラスの鳴

          光と影のカケラ 女の子たちの秘めごと その1