創作大賞一口感想
創作大賞2024年にエントリーなさった皆さま、お疲れ様でした。
去年の創作大賞が縁で、多くのnoterさんと出会えたので、今年も楽しみにしていたのですが、特に7月に入ってからは、私自身も創作にかかりきりだったこともあり、新しいnoterさんに出会うどころか、フォローしている方の小説でも、読めない分がありました。
そんなわけで、とても不完全燃焼な気持ちなのですが、その気持ちを吹っ切るために、「完読できた小説」に限り、一口感想を書いてみます(以下、私がフォローした順になります。エントリー作品が複数ある方は、一番印象に残った作品を選びました)。
渡邉有さんの『日輪』は、想い合って結ばれた筈なのに、いつしかすれ違っていた夫婦の葛藤を描いた作品です。どんなに愛し合っていても、ふとしたボタンの掛け違いで、心が遠くなることって、あると思うんですね。恋人同士なら、それで終わりになるかもしれないけれど、夫婦の場合は、それでもなんとなく続いてしまうことが多い。中には、そのまま一生心を通わせることができないケースもあると思うのですが、『日輪』の夫婦には、ある転機が訪れます。辛く、悲しい転機ではあるのですが、これを機に、二人が再び結ばれるのか、それとも、心が離れたままなのか。毎回、ハラハラしながら読ませていただいた小説です。
吉穂みらいさんの『眠る女』は、タイトルにあるように、眠りに取り憑かれた女性とその周辺の人々を描いた小説です。
眠りと女の関係といえば、村上春樹さんの短編小説『眠り』を思い出します。『品川猿』と並んで好きな短編ですが、この短編には、眠ることができない女性が登場します。
吉穂さんの描く女性は、眠りに取り憑かれ、冬眠状態になる。かたや、村上さんの女性には、眠りが訪れない。
どちらの小説でも、眠りは、彼女たちが置かれた状況のメタファーになっています。メタファーで置き換えることでしか語れない、彼女たちの心のありようとは何なのか。
吉穂さんは幅広い作風をお持ちの方ですが、『眠る女』は特に、人によって受けとめ方がかなり異なる小説ではないかと感じます。ヒロインの眠りを見つめるうちに、なぜか自分自身の心を見つめることにもなりそうな、美しく、ミステリアスな小説でした。
青豆ノノさんは、去年の創作大賞で出会った方です。以来、青豆さんが生み出した不思議な世界、怖い世界、楽しくハッピーな世界などに心を惹かれ、親しんできました。
そんな青豆さんが書かれた『ソウアイの星』は、正統派の青春小説です。音楽と青春。いいですよね。私も、十代の頃は少ない小遣いの大部分を好きなミュージシャンに費やしていたので、青豆さんの小説を夢中で読みました。音楽ファンなら、誰もが一度は夢見る世界が書かれた小説なのではないでしょうか。青豆さんの才能と、推しへの愛がほとばしる爽快な小説でした。
dekoさんの『北風のリュート』は、様々な側面を持つ小説です。
社会派ファンタジーでもあり、少女の成長小説でもあり、魅力的な登場人物たちが織りなす冒険小説のようでもあり。
特記したいのは、「社会派」としての側面です。私も社会派小説を書いてみたいなと思うのですが、リサーチの段階で疲れ果てたり、何とか書くところまでこぎつけても、社会的な問題だけが変に浮き上がってしまったり。社会という大きな背景を書くのは、本当に難しいと感じます。ところが、dekoさんは、それを何でもないことのように、さらっと書いてしまう。さらっと書いたように見える部分にも、どれだけの時間と努力が注がれたことか。分量だけではなく、作者の心意気や、それまで縁のなかった人々がある事件をきっかけに、集まり響き合う内容も含めて、「すごい大作を読んだ!!」と人に教えたくなる小説でした。
ここまで淡々とフォローした順に書いてきたのですが、次に書こうと思った方が、作品を紹介する等のnoteでの創作関連の交流を望んでいらっしゃるのかわからない……。そういう孤高のオーラを感じさせる方ってたまにいらっしゃいますよね。とりあえず、とばします(後で思い直して付け加えるかも)。
福島太郎さんは、文学フリマ東京で名刺をいただいた方です。会津ワインについての小説を書いていらっしゃるとお聞きして、勝手に親近感を持ちました。何しろ、会津は私の心の故郷なので(長くなるので理由は省略します)。
『黒田製作所物語』は、会津に行く時に車を借りる町、また、旧友がショッピングセンターで店長をしていたこともある、郡山市を舞台とした小説です。
noteで読む小説には、青豆さんの『ソウアイの星』のように、自分にも馴染みのある世界が書かれているために夢中で読んでしまうものもありますが、福島さんの小説は、反対に(郡山という舞台以外は)全く知らない世界を書いた小説なので、一つ一つのエピソードに、「へー、こんなことがあるのか」と驚いたり、面白がったりしながら、読むことができました。作者の郷土愛とヒューマニズムを感じる、愛情あふれた小説でした。
静森あこさんは「なんのはなしですか」の縁でフォローを始めた方です。締切間近になってエントリーをなさったのですが、それが逆に功を奏したのか?勢いのある小説に仕上がっています。というか、私が読んだ時にはまだ未完の部分もあったのですが、断章のような箇所にも、不思議な魅力が感じられ、完成作を読みたいのか、このままの形で、静森さんの作品と自分の想像力がリンクすれば、それでもう十分なのか、自分でもよくわかりません。とにかく、不思議な味わいのホラー小説です。
以上で、フォローしている方の小説の感想文は終わりですが、もうお一方だけ。
蒔倉みのむしさんは、フォローはしていないのですが、たまに記事を読んでいいねをつけたり、時にはコメントしたりしたこともあります(フォロー外の方には滅多にコメントしないのですが)。
『なんのはなしですか。』という小説も、最初の頃は読んでいたのですが、自分の創作(ちなみに、冬の文学フリマ用の小説を書いていました)が忙しくなるにつれ、フォロー外の作品を追えなくなり、フェイドアウトしてしまいました。
が、先ほど、私の心の声が「蒔倉さんの小説をチェックしなさい」と言うのです。それに従って読んでみたところ、私が登場するシーンがありました。noteやコニシ木の子さんをテーマにしたメタフィクションなのは知っていましたが、私のような地味な者まで登場させて下さるとは。上記の方々の中でも、吉穂さんと青豆さんも登場なさっています。
吉穂さんや青豆さんの小説を読む一方で、お二人が登場人物になった小説を読む(コニシさんは言わずもがな)。すごいですね。メタフィクションに興味があるけど、読んだことはないという方は、蒔倉さんの小説を読んでみて下さい。次元の壁が崩れる感覚を味わえると思います。
*スマホしかない環境で書いたので、下手な表現があったらごめんなさい。また、読了した方は全員書いたつもりですが、見落としがあったら、ごめんなさい。他意はないです。スマホの文字が小さくて見落としただけです(ダイソーの老眼持ってくればよかった)