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読書感想文

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海外文学や現代文学の感想文。
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#光文社古典新訳文庫

2022年9月 読書記録

プルースト『失われた時を求めて』 第一篇「スワン家のほうへ」(光文社古典新訳文庫)  森鷗外同様、プルーストも今年没後百年を迎えた作家です。学生時代に読み流しただけなので、再読したいと思いつつも、文庫本で十数冊というボリュームのある作品ですから、ためらいもあり…。  そんな時、村上春樹さんの『1Q84』に、プルーストを一日二十ページずつ、丁寧に読むと書いてあるのを見て、「これなら、できるかな?」と思い、真似することに決めました。今、第一篇を読み終えたところですが、この読み方

2022年8月 読書記録 

 8月も、梅雨時のような湿度の高い日が続きましたね。それに加えて、あれこれ気ぜわしい時期なので、サクッと読める短編集や短めの作品を選びました。  人と同じく、本もまた次々に縁でつながっていくものなのだと感じます。森鷗外→江戸期の文学→中村真一郎、村上春樹→ドストエフスキー、カポーティ、フィッツジェラルドというように読書の幅が広がり、半年前には想像もしなかった読書記録になりました。 ドストエフスキー『白夜/おかしな人間の夢』  ドストエフスキーの短編集です。村上春樹さんの短

「ドライブ・マイ・カー」と「ワーニャ伯父さん」/チェーホフと太宰治 【読書感想文】

アントン・チェーホフ  アントン・チェーホフは19世紀末に活躍した作家で、短編と戯曲が有名です。笑いとかなしみを描くのがうまい作家ですが、比較すれば、短編小説は笑い、戯曲はかなしみの比重が大きい気がします。  代表作が手軽に文庫で読めること、歴史的・宗教的背景を知らなくても理解しやすいことなど、海外文学に馴染みがない方にもおすすめの作家だと思います。 「ドライブ・マイ・カー」と「ワーニャ伯父さん」  先日読んだ村上春樹さんの短編小説「ドライブ・マイ・カー」には、チェーホ