理想の異性 #シロクマ文芸部
「風車の弥七って誰?」
学生食堂で鶴野さんと同じテーブルになった時、そう訊ねてみた。鶴野さんとは、語学のクラスが一緒だった。週五時間だけのクラスだけど、顔合わせの食事会をやったり、名簿を作ったりで、クラスメイトの顔と名前はほぼ一致していた。
クラス名簿には、名前や電話番号以外にもいくつか記入欄があった。「理想の異性は?」という欄があったのを覚えているのは、鶴野さんのおかげだ。「風車の弥七」という文字が今も脳裏に焼き付いている。他の子が何と書いたかは全く記憶にないのに。